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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
191/503

その魔王軍、再び邂逅する

以前にも戦った魔王軍がいるということは……?

「お久しぶり。どうしてあなたがここにいるの?」

「それはこっちのセリフだロ!? こっちは魔王軍ダ! いて当然ダ!」

「あっ、そっか。魔王軍って、ドラゴンさんだけじゃないんだった」

「なんなんダ、この小娘ハ……。ユーメイト様なら何か知ってるのだろうガ、迂闊に聞くこともできんシ……」


 私としては思わぬ再会だったけど、向こうからしてみれば私がいる方が予想外だったらしい。

 それもそっか。この坑道は今、魔王軍が占領してる状態。魔王軍である鎧の魔物さんがいたっておかしくない。この人も以前にユーメイトさんと一緒にいたんだった。


「ミ、ミラリアさん? 何やら普通に魔物と話してますが、まさかお知合いですの?」

「うん、知り合い。えっと……友達の友達?」

「おイ。その友達というのはユーメイト様のことカ? 勝手に貴様とユーメイト様を友達で括るナ。後、私はユーメイト様の部下ダ。友達ではなイ」


 思わぬ再会で思わず話も弾んじゃう。私とユーメイトさんの関係ってちょっと複雑だけど、個人的には『友達』で問題ないと思う。

 だって一応は主とメイドの関係だった時期もあるんだし、今は上下の垣根もなくなった。だからお友達。

 それを聞いた鎧の魔物さんは兜で顔こそ見えないけど、肩を落としてゲンナリしつつ反論してくる。


 ――ツギル兄ちゃんや他の人にもよくされる態度だけど、魔物にまでされるとはこれ如何に。


「ハァ……まあいイ。それより、貴様がこっちの道へ来たのは、裏道の先にいるあのお方を避けたのカ? だとしたら賢明な判断だガ……多分違うだろうナ」

「うん、違う。ちょっとトラブルに巻き込まれた。道も逸れちゃったし、どこに行けばいいのかできれば教えてほしい」

【……こいつ、普通に魔王軍と会話しすぎだろ。俺はもう慣れてきたけどさ】

「魔剣のお兄様も大変みたいですの……。どうして敵に道を尋ねるですの……。訳が分からないですの……」


 とはいえ、Sランクパーティーのせいで全然違うルートに来た最中と考えれば幸いだ。鎧の魔物さんならルートのことも知ってるかもしれない。

 敵に道を尋ねるのは確かにおかしいとは思う。でも、こっちは絶賛迷子中。

 何より、鎧の魔物さんや周囲の魔物さんにはこっちへ襲い掛かる気配がない。ならば、お話でどうにかできるはずだ。


「本当にどこまでも奇妙な小娘ダ……。どのみち、我々では貴様の相手はできン。実力的にも敵わんシ、あのお方の命令もあル」

「あのお方? さっきから言ってるけど、何の話?」

「……仕方あるまイ。こっちへついてこイ。手出しを禁じられてる以上、あのお方にも指示を仰ぐ他あるまイ」


 期待通り、鎧の魔物さん達とは戦わず、何やら道案内をしてくれる。やっぱり、話し合いって大事。

 戦いをモットーとする魔王軍が戦わない選択をするならば、私だってそれに従う。別に戦って武勲を上げたいわけじゃない。

 相手が魔物でも魔王軍でも、無益な殺傷はしたくない。剣を振るうのは必要な時に留め、できる限り被害を広めない。


 ――スペリアス様の教えもあるけど、これまでの旅で傷つく人たちを見てると、より一層そう願う。


「こ、こんな何気なく魔王軍に道案内してもらえるなんて、わたくしが抱いてた魔王軍討伐の決意も鈍りますの……。ミラリアさんって、本当に何者ですの……?」

【……そこについては俺からは何も言えん。兄であっても、ミラリアのことは語りきれんところがある。……ただ、こいつは傷つくのも傷つけるのも嫌がってるらしい。昔からというよりは、これまで旅してきた中でそう感じたくなってきたのかもな。どんなに強大な力を持っていても、振るい方を考えたいんだろう】

「そ、それ自体は立派だとは思うのですが……やはりどこかズレているような……?」

【いずれにせよ、俺は魔剣である以上は行動をミラリアにゆだねるしかない。今だって何も考えなしじゃないし、ここはシャニロッテちゃんもおとなしくついていくのが一番だ】

「……そもそもこの空気、そうするしかないですの」


 鎧の魔物さんを筆頭に、魔王軍からこちらに仕掛けてくる気配はまるでない。ツギル兄ちゃんとシャニロッテさんの間で何やら話もしてるけど、今は手出し無用で満場一致。

 テクテク魔王軍の後ろをついて行ってるから、いきなり背後からズバンとされる心配もない。こっちから手出ししなければ何も起こらないのは火を見るより明らかだ。


「見たところ、貴様らは罠にでもハメられてこっちのルートへ来たようだナ。人間同士が愚かなものダ」

「そこについては否定できない。正直、今は鎧の魔物さんの方が信頼できる。友達の友達だし」

「だからそれは違うト――もういイ。いずれにせよ、ここから先へはあのお方の守る場所を通らないといかン。数を揃えた人間が正面から攻めてきたのは面倒だシ、迂回した別動隊がいたのも目障りダ。とはいえ、あのお方の前ではどれも意味を成さなイ」

「あのお方……?」


 鎧の魔物さんもちょっと愚痴りながら話をしつつ、私達を案内してくれる。それにしても、さっきから口にしてる『あのお方』って誰のことだろう?

 ボカされてるけど、なんとなく予想がついてしまう。この魔物さんがこういう言い方をする相手って、私の中では一人しか知らない。


「ねえねえ、ツギル兄ちゃん。もしかして、この先にいるのって……?」

【おそらく、またあの人だろうな】


 ツギル兄ちゃんにも尋ねれば、やっぱり同じ人が思い浮かんでたみたい。だとすれば、丁度いいのか悪いのか。

 あの人はとんでもなく強いけど、一応は私基準でお友達。敵同士とはいえ、話し合いでどうにかなるかもしれない。


 ――できることならそうしたい。私もあの人との再戦は避けたい。




「……おや? ゼロラージャ様から報告は受けてましたが、本当にここまで来られましたか」

【これも巡り合わせか。また会ったな、魔剣の少女よ】

「ユーメイトさん、魔槍さん。お久しぶり。……って、これはどういう状況?」




 その予想通り、案内された先で待っていたのは魔王軍の冥途将ユーメイトさん。相変わらずのメイド服と眼鏡、ドラゴンみたいな角と尻尾も健在だ。

 手に持った魔槍さんもこっちに気付いて語り掛け、こんな場面でも久しぶりの再会に想いを馳せてしまう。


 ――ただ、眼前の光景はそうも言ってられない感じ。




「な、なんだこのメイドは……!?」

「つ、強すぎる……!?」

「私達Sランクパーティーでも歯が立たないなんて……!?」

「これが魔王軍幹部の実力……!?」




 ユーメイトさんの前方では、さっき離れ離れになったSランクパーティーの四人が膝をついていた。

魔王軍最高幹部である眼鏡メイド、ユーメイト再び。

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