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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
189/503

そのパーティー、裏を見せる

Sランクパーティーの狙いは魔王軍だけではなかった。

「ど、毒キノコですって!? た、確かに食べ物への執着が強いミラリアさんの言葉なら、信じるに値するかもしれませんが……!?」

「……成程。腕が立つだけでオツムは弱そうだったが、そういうわけでもないみたいだね。これぐらいの罠を見破るぐらいの目は持ってるってことか」


 私は一度見たり食べたりしたもののことはしっかり覚えてる。薬の中には間違いなくスアリさんに教えてもらった毒キノコが入ってる。

 その指摘にシャニロッテさんは驚くも、リーダーさんは飄々と認める始末。


 ――試すとかそんなんじゃない。この人、完全に私達を陥れるつもりだった。目を見れば分かる。


「おいおい、リーダー。ちょいと行動に出るのが早すぎたんじゃないか?」

「別に魔王軍を倒した後でもよかったんじゃないの?」

「まあ、ちびっ子二人に手柄を取られたくないって気持ちもあったんじゃない?」

「ど、どういうことですの……? な、何が何だか理解できませんの……!?」


 シャニロッテさんも流石に怯え、私の背後へ回ってビクビクしてる。そんな様子を見ても、Sランクパーティーの人達は飄々と思い思いのことを語るばかり。

 これは何か罠にハメられたとしか考えられない。まだ目的は見えないけど、警戒せずにはいられない。


 ――魔剣を構えて腰を落とし、必要とあれば抜刀できるように自然と体が反応する。


「……どうしてこんなことしたの? あなた達だって、魔王軍を倒すのが目的のはず。協力するんじゃなかったの?」

「確かに魔王軍は倒すさ。だが、その戦果は僕らが手にしたい。討伐メンバーの中でも君達二人は頭一つ抜けてるから、下手に活躍されると困る。……Sランクパーティーの名折れにもなるからね」

「そんなに戦果が欲しいなら遠慮なくあげる。私はそんなもの必要ない」

「実力はあるのに、随分と欲のない女の子なことだ。……ただ、目的はそれ以外にもある。君達二人は容姿もいいし、その道の愛好家にも高値で売れる」

「むう? それはどういう意味?」


 警戒しながら真相を伺うと、どこかレパス王子にも似た邪悪な笑みでリーダーさんが語り始める。

 ただ、私では事情を全部は呑み込めない。前方への警戒は続けながらも、後方で怯えるシャニロッテさんに目配せしてみる。

 こういう事情は私以外の人が詳しそうだ。


「まさか……人攫いとでも言いますの!? わたくし達を毒で弱らせて攫い、どこかへ売り飛ばすつもりでしたの!?」

「人攫い……ロードレオ海賊団がやってたのと同じ。それにしても、毒まで使うのはいただけない」

「別にあの薬を飲んでもしばらく体が痺れただけさ。……こっちにも冒険者とは別の商売があってね。Sランクパーティーという肩書もあるし、名前があれば融通も利かせられるのさ。ハハハ!」


 期待通りに話も聞けたし、私も少し理解できた。つまり、このSランクパーティーもまたロードレオ海賊団と同じってことか。

 勝手に人を物として扱い、商品として売り渡す。トラキロさんの時はAランクパーティーの人達を連れ去られたけど、まさか私自身も同じ窮地に立たされるとは思わなかった。

 ただ、毒を飲ませようとするのはあの時よりもタチが悪い。この人達、ロードレオ海賊団より凶悪かも。


「まあ、こうやってバレちまった以上は仕方ねえよな。……リーダー、ここで消し飛ばすか?」

「そうだね。魔王軍を倒すのは僕ら四人でも問題ない。邪魔な二人にはこの場で『不慮の事故で命を落とした』ことにでもなってもらおうか」

「まあ、そういうパターンになるよね」

「だったら任せときなって!」


 これはもう魔王軍相手に共闘なんて場合じゃない。まずはこの人達を倒さないと私達が危ない。

 向こうも完全にやり合う気だし、ここで戦わないという選択肢はない。まさか、魔王軍じゃなくてSランクパーティーが敵に回るとは予想外だ。


「わ、わわ、わたくしはどうすればいいですの!?」

「大丈夫、安心して。私がいる限り、シャニロッテさんのことは守る」

「ミ、ミラリアさん……!」


 こちらの戦力は実質私一人。魔剣のツギル兄ちゃんがいるとはいえ、シャニロッテさんの方は動揺でとても戦えそうにない。

 でも一人ぼっちにはしないし、何としても守り抜いてみせる。


 ――エスカぺ村にフューティ姉ちゃん。私に関わった人達を失うのはもうたくさんだ。




「ドギュアァァァアアア!!」


「ッ!? ま、まさか、ドラゴンだと!?」

「こっちにまで来たってのか!?」




 緊張一色の膠着状態。そんな場だったけれど、その空気さえも切り裂くような咆哮がこちらへ近づいてくる。

 坑道正面で交戦していたと思われたドラゴンさんが一人、こちらへと急に押し迫ってきた。

 おかげで私やSランクパーティーも戦ってる場合じゃない。突進してくるドラゴンへ向き直り、また別に緊張が走っちゃう。


「くぅ!? ここでドラゴンと交戦することになるとはな!? だが……ものは使いようだ! おい! 煙幕を頼む!」

「分かったわ!」


 反応自体はSランクパーティーの方が早い。リーダーさんが即座に仲間へ指示を出すと、その言葉通りに何か魔法を唱え始める。

 別に大した魔法じゃないけど、煙がたくさん出るタイプの魔法だ。成程、これで目くらましとは考えたものだ。


「はえ!? Sランクパーティーの方々がいなくなってますの!?」

「……私達を囮にしたってこと。考えたみたいだけど、ムカムカしてくる」

「そんな悠長にムカムカしてる場合でもないですの!? このままでは、わたくし達がドラゴンの餌食ですの!?」


 おかげでいつの間にかドラゴンに狙われるのは私とシャニロッテさんだけ。Sランクパーティーはどこかに行っちゃった。

 またしても戦いの矛先が変わるなんて忙しい。その忙しさのせいで、シャニロッテさんはまだまだパニック状態だ。

 こんなシャニロッテさんを守りながらドラゴンという未知の相手をするのは難しいか。こっちも一度逃げた方が得策っぽい。


【ミラリア、少し離れた崖の先に足場がある。あそこまで行けるか?】

「ありがとう、ツギル兄ちゃん。場所さえ見えれば、後は私でなんとかする」

「な、なんとかって……何をするつもりですの!?」


 三十六計逃げるに如かず。この場は一度退き、態勢の立て直しが最優先だ。

 ツギル兄ちゃんも逃げ道を見つけてくれたし、あそこならドラゴンさんも簡単には追って来れない。


 ――逃げ道さえ見えれば、今度は私の魔剣による魔法の出番だ。




「転移魔法……発動」

ちょくちょく難しい言葉知ってんのな。

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