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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
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その少女達、別動隊として動く

Aランクパーティーよりも強いSランクパーティーと一緒にゴー。

「急な提案だったのに受け入れてくれて感謝するよ。君達の実力は買ってるし、僕らも最大限尽力したいからね」

「私も同じように思ってた。Sランクパーティーさん達、よろしく」

「ま、まさか、Sランクパーティーと一緒できますなんて……! 感激ですの!」


 Sランクパーティーの四人の提案もあり、私とシャニロッテさんも一緒になって別動隊で動くことになった。

 坑道正面とは違い、裏側から回り込む隠し通路のような場所。兵隊さんにもルートを教えてもらい、現在六人で行動中だ。


「リーダーが言う通り、その女の子二人は討伐メンバーの中でも頭一つ抜けてる。俺らも頼りにしてるさ」

「一緒に頑張りましょうね」

「こっちも魔法や剣術などには自信があるし、協力すれば問題ないよね」


 一緒に行動するSランクパーティーの人達は見たところバランスが取れている。


 硬い鎧で守りに徹するタンクさん。

 回復魔法が得意なヒーラーさん。

 攻撃魔法が得意なウィザードさん。

 魔法と剣技の両方が使えるリーダーさん。


 成程、このバランスの良さがSランクパーティーたる由縁なのか。確かにこれならば、様々な局面にも対応できる。

 私は剣技は使えても、魔法は魔剣頼り。回復魔法については、発動条件が『居合で斬る』というものなので攻撃にしか使えない。

 シャニロッテさんは攻撃魔法一辺倒だし、こうやってバランスの取れた人達と行動できるのは幸いだ。


【理に適ってはいるが……一応気を付けておけ。このSランクパーティーとやらも目的が同じとはいえ、急にこっちへ手を差し伸べてきたからな。どうにも、裏があるんじゃないかと勘繰ってしまう】

「むう……ツギル兄ちゃんは心配性。でも、分からなくもない。私も気を付けつつも、何より魔王軍の相手が優先の方向で行く」


 ただ、腰に携えた魔剣からツギル兄ちゃんがこっそり話す心配な声ももっともだ。私はSランクパーティーの人達のことを全く知らない。

 知らない人にホイホイついていくのは危ない。ディストールでの二の舞になる可能性だってある。

 初志貫徹。相手の心が分からない以上、一応の警戒はやはり必要。

 とはいえ、今のところはおかしな動きもない。一緒になって坑道の中を進み、魔王軍が潜む場所を目指すのみ。


「Sランクパーティーのことは警戒して、わたくしのことは警戒しないですの? まさか、ミラリアさんに甘く見られてますの?」

「甘くは見てない。グルグル髪の毛が鋭そうだとは思ってる。何より、シャニロッテさんとはウドンを通して仲良くなった。仲良くなった人なら大丈夫」

「あ、あれで仲良くなったと言えますの? ま、まあ、わたくしも変に警戒されるのは嫌ですの。……ただ、このカールヘアーへの感想は微妙ですの。あなたのアホ毛こそ鋭そうでしてよ」

「私のアホ毛は鋭くはない。でも、変幻自在。シャニロッテさんのグルグル髪よりクール」

「……むしろシュールですの」


 シャニロッテさんにはツギル兄ちゃんとの会話が聞こえてたのか、ちょっと小言を挟まれてしまう。

 シャニロッテさんは魔法の破壊力はとんでもないけど、別に悪い人ってわけでもない。ただ単純に力加減が下手ってだけ。

 ツギル兄ちゃんにお説教されてた様子を振り返ると、昔の私を思い出す。剣技の加減がまだまだだった頃と重なり、親近感が湧いてくる。

 お互いに自慢の髪の毛もあるわけだし、意外と似た者同士なのかもしれない。




「むっ……!? 二人とも、少しここで待機だ。どうやら、この奥に魔王軍が潜んでるらしい」




 ちょっとシャニロッテさんともペチャクチャしてると、先導していたリーダーさんからストップが入る。

 物陰に隠れるように体を屈め、私も様子を探ってみる。確かに人ではない誰かがいるみたい。

 大きな角と尻尾、さらに翼。昨日タタラエッジ上空を飛来してたドラゴンだ。そのドラゴンさん達が坑道正面へ向かって少しずつ進軍してるようだ。


「おそらく、正面の部隊と交戦が始まったようだな。俺らはこの先にいると思われる大将首を狙うか」

「ここからは激戦ね。準備はいいかしら?」

「こっちのパーティーはバッチリよ。いつでも行けるわ」


 その様子を見て、Sランクパーティーは各々の武器を構えて臨戦態勢。言われた通り、ここからはまさに激戦だ。

 魔王軍の大将となると、それこそユーメイトさんクラスが出てくるのだろう。あの人と同格の実力者にドラゴンさん達も加わったとなれば、どんな戦いになってもおかしくない。


「シャニロッテさん、魔法はしっかり加減してね。下手すると、この坑道ごと崩れちゃう」

「そ、そう何度も言わなくても分かってますの! わ、わたくしとて、スーサイドで魔法を学んだ魔術師! か、かか、加減はわきまえましてよ!」

「……声が震えてる。大丈夫? 怖い?」

「こ、ここ、怖くなんてないですの! こ、これは武者震いですの!」


 私も腰の魔剣を左手で調整し、シャニロッテさんも杖を構える。シャニロッテさんの方は少し怯えてるっぽいけど、やっぱり魔王軍が怖いのかな?

 それとも、もしかしてこういう戦いが初めてだとか? 強がりなシャニロッテさんの性格からするとあり得る。


「……どうにも緊張してるみたいだね。よかったらこれを飲みたまえ。気持ちも和らぐはずだ」

「さ、流石はSランクパーティーですの。こういう事態にも備えてますのね。ありがたくいただきますの」

「そっちの剣士の少女も飲むといい。激戦前のゲン担ぎにもなる」


 そんなシャニロッテさんの緊張はリーダーさんからしても一目瞭然。自身のポーチから薬のようなものを取り出し、私達へ手渡してくれる。

 こういう薬は初めて見た。やはり、あらゆる事態を想定した用意こそがSランクたる由縁というものか。

 魔王軍相手に油断はしたくない。ここは私も遠慮せずに――




「ッ……!? シャニロッテさん、ダメ! その薬、飲んじゃいけない!」

「は、はえ!? ミラリアさん、急にどうしたですの!?」




 ――いただこうとしたけど、薬を手に取って中身の匂いを嗅いだ瞬間、嫌な予感が全身を駆け巡る。

 この匂い、一度だけ嗅いだことがある。本能的に危険を察知し、シャニロッテさんの薬も弾いてなんとか飲まずにやり過ごす。

 まさか、ツギル兄ちゃんの予感が本当に的中するとは思わなかった。しかも最悪の形でだ。

 シャニロッテさんは戸惑ってるけど、これは物申さずにはいられない。


 ――もらった薬に使われているのは、かつてスアリさんにも教えてもらった材料が含まれてる。




「この薬……毒キノコが入ってる。リーダーさん、どうしてこんなものを私達に渡したの?」

どうやら、簡単な話でもないようで。

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