その少女達、魔王軍討伐に向かう
ウドンパワーを胸に、いざ魔王軍討伐へ。
美味しいミラリア流エスカぺ風味ウドンのおかげで、元気を蓄えてスヤスヤ。翌朝には疲れを残さず起きられた。
本日は朝から坑道へ向かい、魔王軍の討伐だ。前日の約束通り、タタラエッジの外でみんな集まってる。
「魔王軍が占領した坑道はすぐ近くだ! あそこにはアテハルコンが眠っているし、容易く渡すことなどできない! なんとしても取り返すぞ!」
「おおぉぉ!!」
タタラエッジの代表らしき兵隊さんが先頭に立ち、まさに意気揚々と言った様子。確かに集められた人達はかなり強そうだ。
以前にポートファイブで出会ったAランクパーティーより強そうな人もいる。話によると、Sランクパーティーがどうのこうのだとか。
「流石は魔王軍に挑むだけのメンバーと言うことはありますの。ですが、大金星はわたくしのものですの!」
「シャニロッテさん、あんまり気合を入れ過ぎないで。昨日のウドンみたいに、じっくりコトコト頑張ってほしい」
【場所は坑道だ。シャニロッテちゃんの魔法で崩れでもしたら、ここにいる全員がお陀仏だからな】
「わ、分かってますの! ……わたくしだって、大事なことの優先度はわきまえますの」
私とツギル兄ちゃんもシャニロッテさんと一緒になり、防寒用のマフラーを身に着けて準備万端。昨日の振り返りもして、注意もオッケー。
敵は強大な魔王軍。シャニロッテさんの強力な魔法も、使いどころを間違えなければ大きな戦力となるはずだ。
「おぉ!? そこにいる二人は、ミラリアちゃんにシャニロッテちゃんじゃないべか!? 二人も魔王軍討伐に向かうんだべか!?」
「あっ、ホービントさん。昨日はありがとう。ウドンはいいヒントになった」
「えっ? ウドンにお礼を言うんだべか? むしろ、昨日はオラも中途半端に話を切り上げただべが……?」
鍛冶屋のホービンスさんも今回の魔王軍討伐のため、一緒に集まって準備を手伝ってくれている。
鍛え上げた剣や槍といった武器をみんなに手渡し、こちらも準備に余念がない。相手が魔王軍となれば当然か。
そういえば、私も最初はホービントさんに魔剣を鍛え直してもらおうとしてたんだっけ。ウドンのインスピレーションに関するお礼ばっかり出て来ちゃった。
「とはいえ、今から魔剣を鍛え直すのは時間がない。また終わってからホービントさんにはお世話になりたい」
「ああ、そうだべな。オラも昨日の話の続きをしたいべ」
「昨日の話? ……あっ、魔剣について何か知ってるんだっけ?」
「そこも抜け落ちてたんだべか……。ま、まあ、今は魔王軍が優先だべ。全て片付いたら、オラだってもっと話したいべよ。……何よりあの話が本当ならば、ミラリアちゃんこそ今回の魔王軍討伐の要だべ」
後、魔剣についての話も。昨日はシャニロッテさんの介入や魔王軍のドラゴンが襲来して、色々と話が置き去りになってたんだった。
でも、それらは今尋ねるべきことではない。魔王軍がいなくなって落ち着いたら、その時にゆっくりお話しよう。
一度にたくさんのことをやろうとしても、こんがらがってお粗末になっちゃう。
「ぐぬぬぬ……! み、みんなしてミラリアさんにばかり期待するですの……! 悔しいですの……!」
「悔しがらないで。私自身は魔法が使えないから、シャニロッテさんの魔力の大きさは羨ましい」
「同情にしか聞こえませんの……! どうせならSランクパーティーと一緒が良かったですが、わたくしも昨晩の夕食の恩がありますの。仕方なしにミラリアさんと一緒しますの」
【……そもそもはミラリアがシャニロッテちゃんのブレーキ役として選ばれたんだがな】
終わった後のことだってある。今回の魔王軍にしたって、楽園を目指す道中でのちょっとした用事だ。一番の目的は別にある。
とはいえ、敵は強大。以前にユーメイトさんと戦った時より本気みたいだし、手は抜かない。
シャニロッテさんと一緒に魔王軍を討伐することを優先しよう。
「じゃあ、行こう。私とシャニロッテさんで、ウドンの街タタラエッジを守る」
「……タタラエッジはウドンじゃなくて鍛冶の街ですの。もしかして、食べることが頭から抜けきってませんの?」
【実力は信頼してるんだが、こいつはどこか抜けてるからなぁ……】
■
準備担当だったホービントさん達とも別れ、私達討伐メンバーはタタラエッジ近くにある坑道の入口付近へ辿り着いた。
まだ中には入ってないけど、中からは異様な気配がピリピリしてくる。このピリピリはやはり以前魔王軍に相対した時と近い。
坑道へと踏み込めば、そこはもう魔王軍の領域と言ってもいいだろう。
「魔王軍め……。よくもタタラエッジの大切な坑道を占有してくれたものだ。者ども! 準備はいいな!?」
「うおおおぉぉ!!」
「任せてくれ! 魔王軍が相手でも、俺らはやってやるぜぇぇえ!!」
討伐メンバーの士気も上々。数も実力も備わってるわけだし、簡単にやられることもないだろう。
だけど、相手は『戦いの中で生き、戦いで示す』ことがモットーの魔王軍。いざ戦いとなれば、激戦となるのは必至だろう。
このまま正面から突入して大丈夫なのかな?
「隊長殿。僕らから一つ提案があるんだけど、よろしいかな?」
「おぉ? 君達は確か、Sランクパーティーだったか。今回の魔王軍討伐にも積極的に手を貸してくれてるし、こちらも聞く価値はありそうだ」
私もちょっぴり悩んでると、同じような気持ちになってた人がいるみたい。私は知らない人達だけど、Sランクパーティーと呼ばれる四人組だ。
周囲の反応を見るに、ポートファイブで出会ったAランクパーティーよりも凄そう。確かに装備とかはかなり整ってる。
そのリーダーっぽい風格の男の人が、タタラエッジの兵隊さんに意見をしたいみたい。かなりの場数を踏んでるのが私でも見て取れる。
これは興味深い。私だってまだまだ外の世界での戦いには慣れてない。
こういう時こそ、スアリさんのように旅慣れた先人の言葉は役立つものだ。心して耳にしてみよう。
「僕らSランクパーティーとそっちにいる剣士と魔術師の少女二人で別動隊に別れるんだ。……正面からの部隊で、魔王軍を挟み撃ちにするのは如何かな?」
今回はお互いの戦力がガチめ。




