その少女、ウドンを作る
Q.そもそも、なんでウドンなんですか?
A.元々の投稿サイトの都合で……。
「ウドン、もらってきた。とりあえず、このチュルチュルがウドンらしい」
【本当にウドンだけもらって来たぞ、こいつ……】
「それは『麺』ですわね。スーサイドでも似たような食材はありますが、麺だけで本当に大丈夫ですの?」
とりあえずは宿の食堂に行き、もらって来たのは麺と言う白いチュルチュル。これがウドンというものらしい。
作り方については『茹でる』とし聞いておらず、私がお客さんでも関係なし。他の冒険者さんといった討伐対メンバーへの対応にも追われており、忙しそうだったので仕方ない。
まあ、一番重大なチュルチュルは手に入ったんだ。後はここから私なりに頑張ってみよう。
「この部屋、竈がある。お鍋は持ってるし、スアリさんから教わったスミビタケを使えば、お鍋グツグツもできそう」
「ほ、本当に今からウドンを作るですの? 仮にも魔王軍討伐前夜にやることですの?」
「やること。とても大事なこと。私の元気に――強いては明日の戦いに影響する」
「そ、そう言われると、微妙に納得するようなそうでもないような……?」
雪山での食材もまだ少し残ってたし、これはいい機会。ちょっと試したかったことだってある。
ホービントさんが食べてたウドンは半透明のお汁の中に浸かってたけど、あれについては再現が難しい。具材の茶色いフワフワもどうやって作ればいいのか不明。
なので、白いチュルチュル以外は我流に挑戦。といっても、別に変なことをするわけじゃない。
「まずはスアリさんに教えてもらった樹皮で出汁を取る。さらに必要なのは……これ」
「それは確かソイジャムですの? 癖のある味でわたくしは苦手ですが、保存食としては優秀程度としか……?」
「これを出汁に混ぜる。きっと上手くいく」
お鍋でお湯をグツグツさせつつ出汁を作り、その中へソイジャムと呼ばれる茶色いペーストを混ぜ込む。
ソイジャムは少し食べてみたんだけど、これって多分エスカぺ村で『味噌』と呼ばれてたものと同じだ。出汁と一緒に煮詰めれば、美味しいお味噌汁が作れる。
こういったお料理って久しぶりにする。エスカぺ村でもご飯の準備はよくしてたから、この程度なら問題ない。
――あの頃はつまみ食いでスペリアス様やツギルにちゃんによく怒られてたけど。酷い時には味見だけで全部私が平らげちゃったこともあったっけ。
「これは火加減が大事。ここをミスると台無しになる」
【なあ、ミラリア。その火加減だが、シャニロッテちゃんに魔法でやらせてみてくれないか?】
「はえ!? な、なんでわたくしがミラリアさんの料理を手伝わないといけませんの!? しかも、わざわざ魔法を使ってまで!?」
【魔法のコントールの練習だ。これもいい機会になるだろ】
そうこう昔を懐かしみながらお料理してると、ツギル兄ちゃんから急な提案。確かにお料理の火加減ならば、シャニロッテさんも無闇に威力は上げられない。
こういう何気ない場面でも魔法の修行に活かすとは、流石のツギル兄ちゃん。エスカぺ村一番の魔術師だったことはある。
「ひ、火加減はこれでいいですの!? かなり弱いと思いますの!?」
【いや、そのぐらいでいい。むしろまだ強いぐらいだな】
「ここはじっくりコトコト煮込みたい。もうちょっと弱火で」
「な、なんて注文の多い兄妹ですの!? ていうか、何故わたくしがこんなことを……!?」
そんなこんなで、シャニロッテさんも交えながらお料理は続く。完全にシャニロッテさんは巻き込まれた形だけど、魔法の修行が必要なのは同意。
ここで少しでも練習しておけば、いざという時に役立つかもしれない。
――日々精進。身近な生活の中にだって、成長の機会はある。
「む、難しいですの……!? いっそ放棄したいですの……!」
「シャニロッテさん、頑張って。頑張れば美味しいウドンが待ってる。……ふむ、いいお味噌汁。具材とウドンも煮えてきた。少し計算外もあるけど、十分許容範囲内」
グチグチ言いながらも、シャニロッテさんは火加減を頑張ってくれてる。そのおかげか、お鍋はいい感じにコトコトだ。
お味噌の具合も丁度いい。具材も煮詰まってきたし、ウドンも多分いい感じ。この中ではウドンだけが初体験だから、試行錯誤しながらのお料理だ。
ちょっとお汁にとろみが出てきたけど、これはきっとウドンの影響。予定とは違ったけど、見栄えも香りもそこまで悪くない。
「……よし。とりあえずこれで完成。早速食べる。シャニロッテさんはこっちの器」
「ひい、ひい……! つ、疲れましたの……。魔法の調整にここまで神経を使ったなんて、今までで初めてですの……」
【それぐらい魔法を扱うのは本来難しいってことだ。理解できたか?】
「ふ、不服ではありますけど、確かに言われた通りですの……」
そんなこんなで、ミラリア流エスカぺ風味ウドンの完成。器を二つ用意して、私とシャニロッテさんの分も作れた。
シャニロッテさんの修行にもなったし、夕食も作れて一石二鳥だ。
さて、肝心の味はどうだろうか?
見た目的には大丈夫だけど、やはりネックはウドンの存在。お味噌汁と違ってとろみも出たし、これが吉と出るか凶と出るか。
とはいえ、作ったからには最後まで食べる。お残しはダメだって、スペリアス様からもしっかり教わった。
「ッ!? こ、これが……ウドンですの!? わたくしも食したことはありますが、それとはまた別の美味……!?」
「ふあぁ……美味しい。お味噌とチュルチュルが絡み合って、温かいハーモニー……!」
なお、不味いという不安はすぐに取り払われた。口に運べば広がるのは、懐かしいお味噌の味と新たなるウドンの食感。
とろみもいい感じにマッチしており、ウドンをチュルチュルすすればお味噌や具材の味も一緒に味わえる。これにはシャニロッテさんも笑顔で満足。
「シャニロッテさんも私のウドン、気に入ってくれた?」
「ま、まあ、中々やるじゃないですの? ただこうやって美味しくいただけたのも、ひとえにわたくしの絶妙な魔法による火加減があってこそですの」
「うん、シャニロッテさんのおかげ。本当にありがとう」
「そ、そこまで素直に感謝されると、かえって戸惑いますの……」
ホービントさんが食べてたウドンとは違うけど、美味しいことには変わりない。シャニロッテさんも手伝ってくれたし、二人で一緒にミラリア流エスカぺ風味ウドンをチュルチュル味わうのは一仕事終えた後の一服って感じだ。
相変わらずどこかツンツンなシャニロッテさんだけど、もしかすると恥ずかしがり屋なのかもしれない。そっぽ向いてるけど、なんだか顔が赤い。
この様子、シード卿の恋とはまた違った感じだ。私もだいぶ人の気持ちが分かるようになってきた……気がする。
こういった観察と経験も大事。私もシャニロッテさんとはお友達として仲良くなりたい。
最初はちょっとグイグイが苦手だったけど、それはお互い様というもの。お料理では私の方がグイグイしてたし。
――人の縁というのも、このウドンのように新しい味を発見するように理解で長く繋がるのだろう。
美味いこと言ったつもりか。ウドンだけに。




