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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
182/503

その少女達、試験に挑む

タタラエッジで行われていたのは、魔王軍に立ち向かえる人材の選出。

「……うんしょ。この穴の上、結構広いスペースがあったんだ。他の人もたくさんいるし、なんだか血気盛ん」

【さっきのシャニロッテって少女が言うには、ここで魔王軍と戦える人材を選別してるみたいだな。闘技場みたいになってるし、戦うには十分か。魔王軍を相手にするなら、それこそ実力者を揃えたいんだろうよ】


 先に進んだシャニロッテさんの後を追うように、やって来たのはタタラエッジの上に空いてた穴のさらに上。そこに広がるのは、エスカぺ村にもあった試合用の闘技場みたいな広いスペース。

 街の兵隊さんや冒険者といった人達がひしめき合い、手合わせをしているのがそこかしこに見える。

 成程。魔王軍は強敵だから、こうやって戦える人間を選別してるってことか。


「でも、ユーメイトさんの時は私とスアリさんとツギル兄ちゃんでどうにかなってた。今回はそうもいかないのかな?」

【あの時は『魔王軍を倒す』じゃなくて『ユーメイトさんを助ける』ってのが目的だったからな。話を聞くに、今回最大の目的は『魔王軍から坑道を奪い返す』ってことだ。魔王軍にしても、精鋭のドラゴンまで用意してる。……戦いとなれば、かなり大規模な領地争いになるだろうな】

「むう……。私も手伝った方がいいのかな……?」


 大体の話は読めてきた。最初タタラエッジに入った時に感じたせわしなさも、そもそも坑道に巣食う魔王軍をやっつけるための準備をしてたからか。

 今回は以前と違い、魔王軍が人々に迷惑をかけてるってことだ。そういうのは良くない。

 お世話になったこともあるユーメイトさんがいる魔王軍が相手とはいえ、流石に見過ごせないかも。大きな戦いとなって、たくさん被害が出るのも嫌。

 私だって戦えるわけだし、少しでも力になりたい気持ちが強い。


「とりあえず、今はシャニロッテさんの様子を伺ってみる。どこにいるんだろ?」

【おっ。丁度闘技場の中央で試験を受けるみたいだな。俺も元々は魔術師だし、シャニロッテちゃんがどれほどの実力か見物だな】

「これでツギル兄ちゃんより凄かったらビックリ。私の中ではツギル兄ちゃんがナンバーワン」

【さ、さっき話してた『偉大な魔術師』ってのは俺のことだったのか? ミラリアにそこまで褒められるのは恥ずかしいと言うか……。第一、いくら俺でもスペリアス様には及ばないぞ?】

「スペリアス様は魔法だけじゃなくて剣もできるからちょっと違う」


 ツギル兄ちゃんともコソコソペチャクチャしてたけど、とりあえずここに来たのはシャニロッテさんの実力を見せてもらうためだ。

 順番が回ってきたのか、闘技場の中央でシャニロッテさんが自信満々のドヤ顔で兵隊さんと話してる。

 手にはツギル兄ちゃんもちょくちょく使ってた魔術師用の杖が握られてるし、いよいよお披露目会ってことか。あれだけ啖呵を切ったのだから、少しは私の期待に応えてほしい。


 ――偉そうだけど、これは私の中でツギル兄ちゃんの魔法が基準になってるから。偉いのは私じゃなくてツギル兄ちゃん。


「成程、スーサイドで学んだ魔術師か。これは期待できるな。なら早速、適当に魔法の一つでも見せてもらおうか」

「お任せあれ! いずれ世界最高の魔術師になる予定のわたくしの魔法! 目ん玉ギンギンで焼き付けるのですの!」


 兵隊さんの言葉で試験が始まったらしく、まずは手始めにと杖を天高く掲げるシャニロッテさん。とはいえ、身長は私と同じぐらいだから見た目は小じんまり。

 まあ、肝心なのは魔法の方だ。杖の先に輝きが宿り、確かな魔力を私も感じられる。



 ゴゴゴゴ……!



「おお!? 大岩が浮かび上がっただと!?」


 すると、闘技場の上に浮かび上がってきたのは巨大な岩。近くにあった大岩を揚力魔法の要領で浮かせ、ここまで運んで来たってことか。

 確かに凄い魔法かも。もっとも、私は自力で魔法が使えないので、魔法が使える人はみんな凄いことになる。

 でも、ツギル兄ちゃんより凄いかと言われればそうでもない。ツギル兄ちゃんだってエスカぺ村にいた時、あれぐらいの岩をいくつも宙に浮かせてた。

 それを私が次々に斬り砕くという修行もあった。見慣れた私にはまだまだ足りない。


「フフン! この程度、まだ序の口ですの! ここから……こうですの!」


 ただ、シャニロッテさんもこれで終わりじゃないみたい。宙に浮かせた大岩に対し、さらに魔法を唱え始める。

 杖の先に宿る魔力の輝きから、さっきとは違う魔法を使うみたい。何をするんだろ? 詳細までは私では推し測れない。


【ッ……!? あ、あれはマズいぞ!? ミラリア! 身構えろ!】

「ふえ!? な、何が来るの!?」


 他の人達と一緒になって浮かんだ大岩を眺めてると、急に慌てて声をかけるツギル兄ちゃん。もしかして、魔力の流れから何が起こるか感じ取ったのかな?

 だとしてもこの反応は奇妙。でも、ツギル兄ちゃんの言葉だから信憑性は抜群。

 とりあえずは言われた通り、腰を落としていつものように居合の構えを――



 ドッッッグガァァアンッッ!!



「うおおぉ!? 大岩が爆発――って、派手すぎるぞ!? 破片が飛び散りすぎだ!?」

「し、しまったですの!? つい加減を間違えたですの!?」


 ――取ったと同時に、宙に浮かんでた大岩が爆発魔法で盛大に破裂した。これには兵隊さんもビックリ。

 私もこの規模なら納得できよう。魔力の大きさについてはシャニロッテさんは本物だ。ツギル兄ちゃんもここまで大規模な爆発魔法を使ってたところは見たことがない。


 ――もっとも、正確にはツギル兄ちゃんも『できたとしてもやらなかった』だけな気がする。


「ヤ、ヤバい!? 破片が闘技場中に!?」

「こ、このままだと、場にいる全員が圧し潰されるぞ!?」

「……ツギル兄ちゃんの言ってたのはこういうことか。一応、私ならなんとかなる」


 破裂した大岩の破片が雨となり、私達の頭上へ降り注いでくる。

 これは危ない。ツギル兄ちゃんが先に感知し、私も居合の構えを取って正解だった。


 ――頑張って実力を見せるのはいいけど、シャニロッテさんには加減を覚えてほしい。周囲を迷惑に巻き込むだけの魔法は勘弁だ。




「とりあえず、振ってくる岩は切り捨て御免。……刃界理閃!」

加減を知らない学生魔術師、シャニロッテちゃん。

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