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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
始まりの村と追及の王国
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その村、意外と早く見つかる

聖女様、優秀。

「え? もう分かったの? お城の人達、かなり苦戦してたのに? 流石はフューティ様。優秀」

「転移魔法はエデン文明のものですが、魔法には違いありません。一般的なものと同じように術式を逆解読すれば、造作もありませんでした。むしろ、私でなくともすぐに判明したと思うのですが……?」


 どうやら、フューティ様はもうエスカぺ村の位置を割り出してくれたようだ。聖女って凄い。

 そう思ったんだけど、どこか奇妙な話も聞こえてくる。


「もしかして、お城の人達って意外と馬鹿?」

「そう思っても、あまり簡単に口にするものではありませんよ。ですが、本当に何故なのでしょうか? 少し気がかりですね……」


 思わず悪口が出てしまい、フューティ様にも少し叱られてしまう。でも、それぐらいしか考えつかない。

 とはいえ、この考えはここまでにしておこう。私だって村のみんなに馬鹿にされてた時は嫌だった。そして、実際に今は馬鹿なことをしてしまってる。

 人には触れてほしくない部分もあるのだろう。こういう考えに至ると、また一つ大人になった気分。


 ――後、少しだけでも叱られたのって久しぶり。ディストール王国ではみんながみんな、私のことをチヤホヤもてはやしていた。

 悪くはないけど、今は良いと断言することもできない。叱られないと悪いところが何なのかも見えてこない。叱られることも大事なこと。

 エスカぺ村での問題児扱いが懐かしくて、今なら大切な日々だったって思える。


「お城の人達を馬鹿にしたのはごめんなさい。でもとにかく、レパス王子に報告――あれ?」

「ミラリア様? どうかされましたか?」

「そこの戸棚の下にある隙間、風が入ってきてる」


 ともあれ、これでエスカぺ村に帰るための材料は揃った。そう思って部屋を出ようとすると、また別の違和感を発見。

 部屋にあるわずかな隙間から流れ込む風。私の本能がこの下に何かあることを告げてくる。


「本当ですね……。ネズミか何かが外から入り込んでるのでしょうか?」

「多分違う。風圧からして、この下に大きな空洞がある。空洞の形状は四角い。ネズミとかが掘ったんじゃなくて、人の手が加わってる」

「そ、そんなことまで分かるのですか……」


 風の流れの読み方なら、私もツギル兄ちゃんとの追いかけっこで慣れている。見つからないように隠れたりもしたものだ。

 読み取る限り、この下には何か大きな部屋がある。誰かがこの下にスペースを作り出している。

 これはこれで気になる。ちょっと覗き見るぐらいなら時間もかからない。パパッとチョビッと調べてみよう。


「フューティ様、少し離れてて。ここの床、少し開けてみる」

「開けるって、どうやって――」



 スパパンッ!



「これぐらい開けば十分。ちょっと覗いてみる」

「い、一瞬で床を斬撃で……!? 噂には聞いてましたが、本当に凄い剣術ですね……」


 なお、床下を覗き見る方法は私の居合で問題なし。綺麗にくり抜いたので、後ではめ直すのも簡単。

 顔を少し入れられるぐらいの穴だけど、ちょっと見るだけだから大丈夫。驚くフューティ様と一緒になって、穴から下を覗き見てみる。

 やっぱり下は空洞みたいだ。暗くて分かりづらいけど、かなりの広さになってて――




「むぅ? あれって確か……デプトロイド?」

「そ、そうですが、私はあんなに大きなものは知りません……!? それに一体だけでなく、かなりの数が……!?」




 ――中には大きなデプトロイドが並べられていた。そのサイズ、私が戦ったオークロプスと同じぐらい。

 数は見える範囲でも三体ぐらい。デプトロイドって、私が斬っちゃった以外にもこんなにいたんだ。


「つまり、ここはデプトロイドのお部屋だった。なら、疑問は解決」

「そ、そういう問題なのでしょうか? この規模のデプトロイドとその数……私は不可解なのですが?」

「気にしても仕方ない。お邪魔しました」


 これはいけない。私はデプトロイドのお部屋を勝手に覗いてしまったことになる。そっと床をはめ直し、これにて一件落着。

 フューティ様は驚いてるけど、別にデプトロイドが大きくて数もたくさんいるからって心配することはない。デプトロイドは別に襲って来る魔物とかじゃない。

 部屋で静かにしてたし、こっちもあんまり詮索しないでおこう。


 ――こういう気遣い、ちょっと大人になれた気分。


「それよりも、レパス王子にエスカぺ村のことを報告するのが優先」

「た、確かにそれが重要なことですが……。まあ、私もこれ以上の詮索は止めておきましょう。下手すると国際問題になりそうですし……」

「『コクサイモンダイ』って何? 『キミツジョーホー』の友達?」

「ま、まあ……似たようなものです。これ以上の説明は私にも難しいところですね……」


 フューティ様は何か気にしてるし、よく分かんないことも口にしてる。でも、今は優先してやるべきことがある。

 エスカぺ村の座標がどこにあるのかは分かった。今の私は早く村に帰りたい。


 ――そして、ごめんなさいって頭を下げる。追放された身だけど、そこは改めてキチンとしたい。

……聖女様が優秀なだけ?

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