表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
雪山に眠る古代の指令
175/503

◆幻想壊機エデンブレイカⅡ

敵の狙いはミラリアではない。

【お、俺をスアリさんが使って、スアリさんの刀をミラリアが使うってことですか!? そ、そんなことして意味あるんですか!?】

「俺がツギルを使うわけじゃない。……目的は『俺とツギルを一ヶ所に集める』ことだ」

【一ヶ所にって……そ、そうか! ミラリア! すぐにスアリさんの言う通りにしろ!】

「ふえ!? ツ、ツギル兄ちゃんまで!?」


 私にはどういう作戦か分からない。だけど、魔剣であるツギル兄ちゃん本人まで納得して、スアリさんとの武器交換を求めてくる。

 ただ、ここで余計にごねてる場合でもない。管理人さんのマシンガンは今にも発射されそうだし、言われるがままにお互いの刀を交換する。

 スアリさんには私の魔剣を。私にはスアリさんの二刀の一本を。

 そうして交換が終わると――



 ズガガガガッ!!



「ま、また撃ってきた!?」

「ミラリアはそのまま離れろ! 奴の動きを見てるんだ!」


 ――ついに始まる管理人さんのマシンガン掃討。こちらも武器交換と同時に二手に別れ、狙いを分散させるように動く。

 まずは回避できたけど、ここからが大変。攻撃の手数が多ければ、こっちの攻め手もない。

 私が持ってるのは普段の魔剣じゃなくてスアリさんの刀だし、動きを見てもどう決定打を決めればいいのかに迷う。

 あんまり悠長にしてると、またルーンスクリプトとやらで魔法も――




「あ、あれ? 私の方には攻撃が来ない……?」




 ――飛んでくると思ったけど、どういうわけか管理人さんは私を狙ってこない。

 マシンガンを連射しながらスアリさんを追うばかりで、私のことは目に入ってないとでもいった様子。おかげで私は足を止め、じっくり様子を伺うこともできる。

 これってどういうこと? どうしてスアリさんばっかり狙ってるの?


【ミラリア! こいつの狙いはあくまでゲンソウ――魔力の高い奴だ! お前は俺やスアリさんと違って魔力に乏しい! こっちが囮になる!】

「そ、そっか!」


 困惑してたけど、理由についてはスアリさんに握られたツギル兄ちゃんが語ってくれた。

 そういえば、最初からそんなことを言ってたっけ。管理人さんは『魔力(ゲンソウ)を敵視してる』から、魔力(ゲンソウ)が弱い私よりもスアリさんやツギル兄ちゃんの方に狙いが行ってるんだ。

 こういう時、たとえ相手が貧弱でも警戒するのが戦いの基本。そんな基本もできない――いや、思考して判断できないというのはやはり大きな弱点だ。


【お前は俺達が囮になってる間に機会を伺え! スアリさんの刀でも、居合は使えるだろ!】

「つ、使えるけど、私じゃトドメを刺せるような攻撃は……!?」


 ただ、問題はここからだ。いくら私にチャンスが訪れたと言っても、肝心の倒す手段がない。

 魔剣でもダメだったのに、どうやってあの硬い体を斬ればいいの? スアリさんも防御と回避で必死だし、下手に時間もかけられない。

 最適解としてはスアリさんの刀での居合だろうけど――




「ミラリア! 居合の基本を思い出せ! 脱力からの緩急による斬撃の威力向上! 何より……相手を見極める眼! 教えられたことを忘れたか!?」

「ス、スアリさん……! そ、そうだ……こういう時こそ、居合の基本を……!」




 ――そうやって悩んでると、スアリさんが回避しながらも私へアドバイスをくれる。

 そうだった。管理人さんも戦いの基本ができていないけど、私だって見失ってた。今言われた言葉は、スペリアス様にだってよく修行で言われた言葉。


 居合を使う時はまず明鏡止水。心を落ち着け、そこから爆発させて斬り裂くべし。

 斬れないものなどないと考え、斬るべきものの本質を見極める。慧眼無双の心で見極めた箇所へ太刀筋を刻めば、どんな強固な鎧も斬れる。


 ――これまで自然にできた気になってたけど、改めて意識してこその基本というもの。スペリアス様との修行でもそう学んだ。


「無駄な力はいらない……余計な先入観もいらない……。ただ、斬るべき場所を見極めて……!」


 スアリさんとツギル兄ちゃんが囮になってくれてるから、私の方は意識を集中して準備できる。

 教わった居合の基本を思い出し、一度目を閉じて完全に集中。下手に眼で見ようとするのではなく、研ぎ澄ました感覚で見極める。

 たとえ相手がアテハルコンとかいう神の金属の体でも、斬れないなどとは思わない。慢心ではなく、自分を信じる心構え。


 それさえあれば――




「ミラリアに……斬れないものなどない!!」

「ハァァアアア!!」




 ――スペリアス様にも言われた言葉を、スアリさんも同じように口にする。それを合図に眼を見開き、脱力させていた体へ一気に力を込める。

 太刀筋を通すべき場所は見えた。どんなに硬い金属でも、組み合わさっている以上は隙間がある。


 ――ディスクを入れていた胴体部分。あそこが管理人さんにとって、一番脆い隙間の部分だ。



 ズバァァァアアンッッッ!!



「ギギ、ギ……!? そそ損傷大。修復不能。ゲゲゲンソウにも耐える装甲ががが!?」


 基本を思い出し、研ぎ澄まされた心で放った一閃。それはこれまでのどんな居合よりも強烈。

 魔剣でなくとも居合が使える刀ならば、その太刀筋はアテハルコンだろうと斬り裂く。弘法筆を選ばずとはこのことか。




 ――管理人さんは体が真っ二つとなり、攻撃の手を完全に止めた。

また一歩、ミラリアの剣技は昇華された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ