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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
雪山に眠る古代の指令
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その少女、不思議な人形と出会う

ここらへんの話はおそらくジャンル的にSFです。多分。

「こ、この人が案内人? でも、凄く冷たい……。い、生きてるの? そもそも人間なの?」


 洞窟を進んだ私の眼前で待ってたのは、金属でできた人形のような人。この人が管理人っぽいけど、とても管理してるようには見えない。

 動かないし、人間というより本当に人形。体温だって感じない。

 レオパルさんやトラキロさんのサイボーグに近い感じはするけど――




「……ピピ。生体反応、感知しました。ゲンソウ濃度レベル低。敵ではないと判断。これより起動シーケンスに移行します」

「ふえ!? う、動いた!?」




 ――などと困惑してると、突然管理人っぽい人が動き始めた。でも目元は緑色に光ってるし、やっぱり人間には見えない。

 かといって魔物とかでもない。むしろ生物かも怪しい。喋ってるけど、その内容も意味不明。

 『ゲンソウ』って何のことだろ? そういえば、影の怪物もそんなことを言ってたっけ?


「あ、あなたは誰? どうしてここにいるの?」

「ワタシは当施設の番人型デプトロイドです。ここの管理を任されています」

「え……? あ、あなたもデプトロイドなの? レパス王子が使ってたのとは違う……」


 ともかく、この管理人なる人が誰なのか分からないことには始まらない。尋ねてみると、さっき案内してくれた声と違って返事はしてくれる。

 そして驚きなのが、自ら『デプトロイドです』と名乗ったこと。レパス王子が使ってたのはただ戦うことしかしなかったのに、この人はきちんとお返事までできる。

 人間とも魔物とも違うっぽいけど、話せる分にはありがたい。襲ってこないし、私も一人ぼっちで寂しかったところだ。


「えっと……管理人さんでいいよね? ここを管理してるデプトロイドってことは、もしかして楽園のことを知ってたりするの? この場所も楽園に関係してたりするの?」

「楽園……データベース内に検索結果有。重要度高」

「それってつまり、知ってるってこと? これはもしかすると、凄い発見をしちゃったかも」


 『ルーンスクリプト』とかいう謎の呪文言語が語られてたことやデプトロイドであることから、おおよその予想はついていた。

 どこか淡々とした返事だけど、楽園のことを知ってるのは確かっぽい。落とし穴に落ちてしまったのに思わぬ収穫だ。

 こうなってくると、好奇心が先行してどんどん聞きたくなってくる。


「ねえねえ、管理人さん。楽園についてもっと聞きたい。知ってる限りのことを教えて」

「楽園について、データベース深層検索……ケンサ……ク……ガガガ」

「ふえっ!? ど、どうしたの!? 具合が悪いの!?」


 早速詳しく尋ねてみたら、突如管理人さんの様子が急変。緑色の目元もチカチカ点滅してるし、明らかに具合が悪そう。

 表情とかはないけど、絶対に何かがおかしい。もしかして、楽園にトラウマでもあるのかな? 私にとってのエスカぺ村みたいに。


「長期スリープモードにより、データベースに異常を確認。システムレッド。そ、早急な修復をををを……!?」

「ぜ、全然分かんないけど、苦しいってこと!? ど、どうしたらいいの!?」

「施設内にあるるるる、データの再参照が必要です。ワワワワタシにデータへのアクセスを要望しますすすす」

「データ!? アクセス!? そ、それって何――あっ、もしかして……これ?」


 喋り方がメチャクチャな上、動きもどこかぎこちなくなってしまった管理人さん。何かを求めるように彷徨い、私もどうすればいいのか困惑しちゃう。

 だけど、管理人さんが手を伸ばした先にあるものを見ると、探しているらしいものが見つかった。

 丸くて平たくて真ん中に穴の開いた綺麗な板。なんだか、エスカぺ村で食べてたお煎餅みたい。

 もしかして、これがデータとかいうものなのかな? 管理人さんの動きからしてそんな気がする。


「この丸い板をどうすればいいの?」

「ディ、ディスクをワタシの腹部にあるドライバへそそそ挿入願います。不足データの充填により、システム修復とアップグレレレレ」

「ど、どういう意味か分かんないけど、ここに丸い板を入れてみるね」


 あまりにガクガクとした喋りと動きで、私もちょっと怖くなってきた。でも、苦しんでるのだから放っておけない。

 せっかく一人ぼっちの寂しい中で見つけた話相手だし、今は他のことより管理人さんを助けることを優先しよう。楽園のことも後でいいし、このままにしては帰れない。

 とりあえずは丸い板を言われた通り管理人さんのお腹にある穴に入れると、吸い込まれるように中へと入っていく。


 ――これで大丈夫なのかな? そもそもこれって何? 不思議が飽和してきた。


「ジジジ……データの一部修復に成功しました。楽園について、一部情報提供可能です」

「こ、これで大丈夫なんだ……。本当に不思議。でも、体調が戻ったならよかった」

「データについては完全ではありません。早速、楽園の情報を提供いたします」


 外の世界で旅してると、不思議に出くわして流されてばかりな場面も多い。怖いこともあるけど、それは不思議なことへの理解が低いから。

 どんなことでも知れば不思議でなくなる。何より、知るのはとても大事なこと。

 人と関わる大切さも恋も、これまでの旅で少しずつ知って成長してきた。それはこういった不測の事態でも変わらない。

 管理人さんとは話ができるし、落ち着いて対応すればいい。一人ぼっちの寂しさも紛れてきたし、楽園の話が聞けるならドンと来いだ。


「楽園とは、ゲンソウの力の発見を元に人間が作り出した領域になります。当初はユートピアモデルでしたが、時が経つにつれてディストピ――」

「説明中にごめんなさい。私には分からない言葉が多すぎる。とりあえず『ゲンソウ』って……何? そこをまず教えてほしい」


 ただ、説明は分かりやすくしてほしい。分からない言葉だらけでチンプンカンプンになり、肝心の内容が頭に入ってこない。

 まずは『ゲンソウ』についてだ。影の怪物も言ってたけど、ゲンソウというものがまず何なのかが気になる。

 楽園の根幹に携わってそうだし、最初はそこから理解して――




「ゲンソウ……ゲゲゲンソウ……データが不足しています。追加ディスクでデータ補充をををを」

「……もしかして、またさっきみたいに丸い板を入れないといけないの? この様子だと、まだまだ必要っぽい……」

ミラリアからすれば、ディスクドライブだの何だのは分かるはずもない。

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