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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
始まりの村と追及の王国
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その聖女、少女の助けとなる

ミラリアのために聖女フューティが考えたのは?

「やあ、聖女フューティ殿。遠路はるばる、よくぞディストール王国まで参られた」

「レパス王子ですね。私がエスターシャ神聖国にてエステナ教団で聖女を務めるフューティでございます。お会いして早々ですが、少々ご相談がありまして」


 フューティ様と話をして落ち着いた後、私達は本来の予定通りお城まで戻ってきた。

 中ではレパス王子が出迎えており、これも予定通り。ここから一緒にエデン文明解明のため、書庫で調べ物をする手筈になっている。

 だけど、フューティ様はそれよりも優先してやりたいことを述べ始める。


「こちらの勇者ミラリア様がやって来られたエスカぺ村について、私の方で正確な場所を調べたく思います。どうか王城の研究室へ立ち入り、私に調査を一任していただけませんか?」

「え? ミラリアの故郷について? それはまた、唐突と言うか……」


 フューティ様ならば、より高度な魔法の解析ができるとのこと。だからまず、私のためにエスカぺ村がどこにあるのかを調べてくれるらしい。

 それ自体もエデン文明に関する重大な調査だけど、本来予定していた段取りとは違う。それでもフューティ様は私がエスカぺ村に帰れることを優先し、わざわざレパス王子に申し出てくれた。


「ミラリア様の故郷についても、エデン文明に深い関係性が見られるのでしょう? でしたら、私も来たのでいい機会です。この際なので、そのエスカぺ村という場所を優先して調べてみましょう。ミラリア様だって、たまには故郷を伺わないと不安にもなられます」

「……成程。ミラリアからある程度の事情は耳にしたのか。それでしたら、こちらからも願いましょう。ただ、研究室は本来関係者以外は立入禁止となっている。奥にある限られたスペースでのみ作業するよう願います」

「レパス王子のご配慮、感謝いたします。ミラリア様にも私と一緒にいていただきますが、それでも構わないでしょうか?」

「……ああ、構わないさ。あなた方二人でどうにかエスカぺ村の場所を絞ってください。僕は僕でやることがありますので」


 その申し出の通り、レパス王子はフューティ様が率先してエスカぺ村の場所を調べることに賛同してくれた。

 フューティ様も『事情を聴きながら調べられる』ってことで、私が一緒でもオッケーなように話を通してくれる。

 なんだか至れり尽くせりだ。これはこれでかえって不安になってくる。


「ミラリア様。私はあくまで個人的な思想により、エスカぺ村の場所を探すことを優先します。何か不満などございましたら、遠慮なく申し出てください」

「助かるんだけど、なんだか……その……」

「『騙されてるんじゃないか?』とでもお考えですか? ご安心ください。レパス王子にしても、本当にあなたを縛り付けてるわけではないでしょう。少々、怖い話をし過ぎたでしょうか?」

「そんなことはない。とりあえず今は……ありがとう」

「フフッ。そうやって感謝を述べられる人の気持ちを、無下にはできませんね」


 さっきフューティ様から聞いた話も合わさって、私もちょっと疑り深くなってしまう。そのことはフューティ様自身も理解してるのか、どこか警戒心を和らげるように言葉を紡いでくる。

 多分、私はいろんなことを簡単に信用しすぎるんだ。それで自分に都合のいいことばっかり選んじゃうんだ。

 これからはもっと気をつけよう。仮にエスカぺ村へ戻れたとしても、同じ失敗をしていたら意味がない。


 ――これもまた、スペリアス様から教わったこと。私は自分に嘘をついていた失敗を認めないといけない。





「本当に随分と奥まった場所しか使えないのですね。まあ、私も他国の人間なのでどうこう言えませんか」

「私もこの研究室、普段は入れない。初めて入った」


 そうしてやって来たのは、お城の中にあるエデン文明に関する研究室。と言っても、その奥にある小さな部屋の中だ。

 フューティ様が言うには『キミツジョーホー』とかが関係するらしく、そう簡単に全部の情報は見せられないんだとか。よく分かんないけど。

 でも、エスカぺ村の位置を調べられる資料は揃ったらしい。これで本当に判明すれば私も嬉しい。


「……ねえねえ、フューティ様。どうして私にここまで優しくしてくれるの?」

「単純に放っておけないというだけですね。それと、エステナ教団の教えでもあります。教団で聖女の地位を任されてる以上、教えに逆らう真似はしたくありません」

「そういえば気になってたけど『エステナ教団』って何? そもそも『教団』が何?」

「ああ……そこから説明が必要でしたか。私も省き過ぎてましたね」


 そんなわけで、今部屋の中には私とフューティ様の二人だけ。人の目を気にしないでいいので、ちょっと関係ないことも尋ねてみる。

 そもそも、私はフューティ様とは会ったばかり。組織や役職のこともよく分かってなかった。


「教団というのは、宗教という教えを司る団体でして――」


 何も分からない私に対し、フューティ様は順を追って分かりやすく説明してくれる。


 教団とは宗教という考え方を守り、伝えていく団体。エスカぺ村のお社とかもそれに近いものみたい。

 フューティ様が冠する聖女の称号は、その団体内でも高位に位置する神職。聞いた感じ、エスカぺ村の巫女さんが凄くなった感じっぽい。

 大雑把だけど、大体のことは理解できた。


「私が属するエステナ教団は、古代エデン文明に関わる教えの元で活動しています。『エステナ』というのはかつて楽園を守護していたと言われる女神の名前です」

「女神って、神様のこと? 楽園って凄い。でも、エスカぺ村にそんな人はいなかった」

「まあ、これらの教えも永い時間の中で伝えられたものです。脚色もあるでしょう。ただ教えの中にある女神エステナは誰よりも慈悲深く、苦しむ者には手を差し伸べていたと伝えられています。私も聖女を名乗る者として、女神エステナのようにありたいのです」


 私もこの一ヶ月で色々と知った気になってたけど、やっぱりまだまだ知らないことの方が多い。

 他愛なく話をするけど、フューティ様の話は本当に頭に入りやすい。声色に裏表がないと言うか、嘘を言ってるとは思いづらい。


 ――この感覚、ツギル兄ちゃんと同じ気がする。もしかして、ツギル兄ちゃんも私を騙す気はなかったのかな?

 こうして知り過ぎることで私が苦しまないように、配慮してくれてたのかな?


「あら? これってもしかして……?」

「むぅ? フューティ様、何か分かった?」


 私との世間話を交えながらも、フューティ様はエスカぺ村のことを調べてくれている。

 ただ、お城の人達でも簡単に割り出せなかった場所だ。首をかしげているあたり、フューティ様にも難しいところが――




「この座標……ですね。解明に難儀していた割には、随分と簡単に分かってしまったのですが……?」

え? そんな簡単に?

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