表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
橋上の歓楽都市にて邂逅するあの日
136/503

◆海邪豹レオパル

VS 海邪豹かいじゃひょうレオパル


ロードレオ海賊団の女船長! ポンドス使いの眼帯少女!

「うひぃ!? お、襲ってきた!?」

【お、応戦しろ! あいつに容赦は必要ない! とにかく自分の身を守れ!】


 私のパンティーを懐にしまいったレオパルさん。それと同時に不気味な笑顔で涎を垂らし、私目がけてポン刀で襲い掛かってくる。

 鍔のない短刀なんて初めて見たけど、あれこれ考えてる余裕なんてない。やらなきゃやられる。


 ――私の本能が反射的に体を動かすぐらいに危ない相手だ。



 ギンッッ!



「ほぉう? ウチのポン刀捌きを受け止めるとは、やるやないか? ますます気に入ってきたでぇえ! ニャーハハハ!」

「き、気持ち悪い……!」


 どうにか魔剣の鞘で受け止めることはできた。パワー自体はトラキロさんやユーメイトさんほどではない。これぐらいなら防御は問題ない。

 ただ、スピードに関しては別格。こんなふざけた態度なのに、私でも見切るのがやっとのぐらい速い。仮にもロードレオ海賊団船長なだけのことはある。


 ――後、威圧感が凄まじい。何か違う気がするけど、近寄られるだけで悪寒が走る。


「そらそらそらぁ! そないして鞘で防いどるだけやと、ウチには勝たれへんでぇえ!」

「こ、この攻撃の激しさは……!? は、反撃の糸口が……!?」


 それらの要因が合わさり、初手から完全に私の劣勢。ポン刀による連続攻撃に対して、こっちの魔剣はリーチが長すぎる。

 この間合いだと、リーチが短くて繰り出しやすいポン刀の方が有利。攻撃も防御も向こうの思うがままだ。

 このままじゃやられる。まずは距離を置くしかない。


「しゅ、縮地!」

「ん? ほうほう、大したスピードやないかい。せやけど、ウチかてそれぐらいのスピードは出せんでぇぇえ!!」


 どうにか縮地で間合いを確保し、すぐさま腰を落として居合の構え。この人相手に反衝理閃は分が悪い。スピードが速すぎて流しきれる自信がない。

 ならば使うのはもう一つの理刀流奥義。一発の威力は低くても、この技ならこっちも数で攻められる。


「刃界理閃!!」



 シュバババァンッ!!


 ガキキキィンッ!!



「あいたたたぁ!? い、今のはビックリしたで! 単発威力にすれば約30の弱攻撃! せやけど、回数は10を超えるか!? とはいえ、ウチを仕留めるには全然足りへんけどなぁぁああ!!」

「えっ!? そ、そんな!? 効いてない!?」

【嘘だろ!? あいつ、防御に関してはトラキロ並みなのか!?】


 しかし、効果のほどは今一つだった。レオパルさんを一瞬怯ませた程度に留まり、勢いはほぼそのままだ。

 確かに刃界理閃は他の居合と違い、一発一発の威力は低い。その分を数で補う技だ。

 でも、さっきのはレオパルさんを刃界理閃の範囲で完全に捉えてた。普通の人間ならば全身を斬り刻まれ、まともに立つことさえできなくなるはずだ。


 ――何より、当たった時の音もおかしい。トラキロさんの時と同じく、人間の体を斬った時の音じゃない。


「トラキロともやりおうたってことか! まあ、ウチの体はトラキロほど頑丈やあらへんが、それでも普通の体やないんは確かやなぁ!」

「くうぅ!? な、なら、今度は一撃集中で……!」


 やっぱりトラキロさんにしてもレオパルさんにしても、普通の人間とは体のつくりが違うっぽい。いずれにせよ、細かい一撃は意味を成さない。

 ならば重要なのは一撃の威力。納刀した魔剣に衝撃魔法を付与させ、震斬(ブレスラッシュ)を直接――



 キン――ガッ!



「おっとぉ! 同じ技は二度も使わせへんでぇ!」

「ッ!? い、居合が防がれた!?」


 ――当てようとしたら、抜刀した直後にポン刀で切っ先を止められてしまった。

 上手く互いの刀身を合わせ、居合の勢いを殺しにかかってくる。


「ミラリアちゃんの剣技は納刀からの抜刀により、弾く力で刀身を加速させるもんと見た! せやったら、納刀されへんかったらええだけの話や! このまま攻めて攻めて攻めまくって、抜き身のままにさしたるわ! ほんでもって……ミラリアちゃん自身もウチに抜き身を晒せぇぇええ!!」

「もう嫌! この人怖い! 助けて!」

【くそ! 外の世界には『かわいい子を狙うどうしようもない変態』がいるとはスペリアス様からも聞いてたが、こいつは想像以上だ! ましてや女を狙う女の変態だなんて!】


 技術もさることながら、発言から何から何までが怖すぎる。正直泣きたい。スペリアス様がいたら、すぐさまその膝に飛び込んで泣きついてる。

 レオパルさんは異常だ。魔王軍なんかよりもずっと異質で、レパス王子やリースト司祭とは違う形で壊れてる。

 世の中にはいろんな人がいるのは知ってたけど、こんな人のことは知りたくなかった。私の中の何かが穢れてしまう。


「くうぅ……!? 抜刀状態での攻防も練習はしたけど、やっぱり慣れてない……!?」

【い、今は耐えるんだ! 向こうだっていずれバテて隙ができる! それまで持ちこたえ……ハァ、ハァ……!】

「ツ、ツギル兄ちゃん!? どうしたの!? 大丈夫!?」


 おまけに戦況の方もよろしくない。真剣抜き身での殺陣(たて)なんて、始めてやったかもしれない。練習はしてても、慣れてないせいか押され気味だ。

 それだけでもピンチなのに、今度はツギル兄ちゃんの調子がおかしい。いつもと違い、苦しそうに声を漏らしてる。


 ――いや、いつもと違う場面ならある。今がまさにその時だ。思えば、魔剣をここまで抜き身にしたのも初めてだ。




【マ、マズい……! お、俺の魔力に……乱れが……!?】

「まさか、抜き身が続いたせいで……!?」

変態のくせにこれまでの誰よりもミラリアを追い込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ