◆海邪豹レオパル
VS 海邪豹レオパル
ロードレオ海賊団の女船長! ポン刀使いの眼帯少女!
「うひぃ!? お、襲ってきた!?」
【お、応戦しろ! あいつに容赦は必要ない! とにかく自分の身を守れ!】
私のパンティーを懐にしまいったレオパルさん。それと同時に不気味な笑顔で涎を垂らし、私目がけてポン刀で襲い掛かってくる。
鍔のない短刀なんて初めて見たけど、あれこれ考えてる余裕なんてない。やらなきゃやられる。
――私の本能が反射的に体を動かすぐらいに危ない相手だ。
ギンッッ!
「ほぉう? ウチのポン刀捌きを受け止めるとは、やるやないか? ますます気に入ってきたでぇえ! ニャーハハハ!」
「き、気持ち悪い……!」
どうにか魔剣の鞘で受け止めることはできた。パワー自体はトラキロさんやユーメイトさんほどではない。これぐらいなら防御は問題ない。
ただ、スピードに関しては別格。こんなふざけた態度なのに、私でも見切るのがやっとのぐらい速い。仮にもロードレオ海賊団船長なだけのことはある。
――後、威圧感が凄まじい。何か違う気がするけど、近寄られるだけで悪寒が走る。
「そらそらそらぁ! そないして鞘で防いどるだけやと、ウチには勝たれへんでぇえ!」
「こ、この攻撃の激しさは……!? は、反撃の糸口が……!?」
それらの要因が合わさり、初手から完全に私の劣勢。ポン刀による連続攻撃に対して、こっちの魔剣はリーチが長すぎる。
この間合いだと、リーチが短くて繰り出しやすいポン刀の方が有利。攻撃も防御も向こうの思うがままだ。
このままじゃやられる。まずは距離を置くしかない。
「しゅ、縮地!」
「ん? ほうほう、大したスピードやないかい。せやけど、ウチかてそれぐらいのスピードは出せんでぇぇえ!!」
どうにか縮地で間合いを確保し、すぐさま腰を落として居合の構え。この人相手に反衝理閃は分が悪い。スピードが速すぎて流しきれる自信がない。
ならば使うのはもう一つの理刀流奥義。一発の威力は低くても、この技ならこっちも数で攻められる。
「刃界理閃!!」
シュバババァンッ!!
ガキキキィンッ!!
「あいたたたぁ!? い、今のはビックリしたで! 単発威力にすれば約30の弱攻撃! せやけど、回数は10を超えるか!? とはいえ、ウチを仕留めるには全然足りへんけどなぁぁああ!!」
「えっ!? そ、そんな!? 効いてない!?」
【嘘だろ!? あいつ、防御に関してはトラキロ並みなのか!?】
しかし、効果のほどは今一つだった。レオパルさんを一瞬怯ませた程度に留まり、勢いはほぼそのままだ。
確かに刃界理閃は他の居合と違い、一発一発の威力は低い。その分を数で補う技だ。
でも、さっきのはレオパルさんを刃界理閃の範囲で完全に捉えてた。普通の人間ならば全身を斬り刻まれ、まともに立つことさえできなくなるはずだ。
――何より、当たった時の音もおかしい。トラキロさんの時と同じく、人間の体を斬った時の音じゃない。
「トラキロともやりおうたってことか! まあ、ウチの体はトラキロほど頑丈やあらへんが、それでも普通の体やないんは確かやなぁ!」
「くうぅ!? な、なら、今度は一撃集中で……!」
やっぱりトラキロさんにしてもレオパルさんにしても、普通の人間とは体のつくりが違うっぽい。いずれにせよ、細かい一撃は意味を成さない。
ならば重要なのは一撃の威力。納刀した魔剣に衝撃魔法を付与させ、震斬を直接――
キン――ガッ!
「おっとぉ! 同じ技は二度も使わせへんでぇ!」
「ッ!? い、居合が防がれた!?」
――当てようとしたら、抜刀した直後にポン刀で切っ先を止められてしまった。
上手く互いの刀身を合わせ、居合の勢いを殺しにかかってくる。
「ミラリアちゃんの剣技は納刀からの抜刀により、弾く力で刀身を加速させるもんと見た! せやったら、納刀されへんかったらええだけの話や! このまま攻めて攻めて攻めまくって、抜き身のままにさしたるわ! ほんでもって……ミラリアちゃん自身もウチに抜き身を晒せぇぇええ!!」
「もう嫌! この人怖い! 助けて!」
【くそ! 外の世界には『かわいい子を狙うどうしようもない変態』がいるとはスペリアス様からも聞いてたが、こいつは想像以上だ! ましてや女を狙う女の変態だなんて!】
技術もさることながら、発言から何から何までが怖すぎる。正直泣きたい。スペリアス様がいたら、すぐさまその膝に飛び込んで泣きついてる。
レオパルさんは異常だ。魔王軍なんかよりもずっと異質で、レパス王子やリースト司祭とは違う形で壊れてる。
世の中にはいろんな人がいるのは知ってたけど、こんな人のことは知りたくなかった。私の中の何かが穢れてしまう。
「くうぅ……!? 抜刀状態での攻防も練習はしたけど、やっぱり慣れてない……!?」
【い、今は耐えるんだ! 向こうだっていずれバテて隙ができる! それまで持ちこたえ……ハァ、ハァ……!】
「ツ、ツギル兄ちゃん!? どうしたの!? 大丈夫!?」
おまけに戦況の方もよろしくない。真剣抜き身での殺陣なんて、始めてやったかもしれない。練習はしてても、慣れてないせいか押され気味だ。
それだけでもピンチなのに、今度はツギル兄ちゃんの調子がおかしい。いつもと違い、苦しそうに声を漏らしてる。
――いや、いつもと違う場面ならある。今がまさにその時だ。思えば、魔剣をここまで抜き身にしたのも初めてだ。
【マ、マズい……! お、俺の魔力に……乱れが……!?】
「まさか、抜き身が続いたせいで……!?」
変態のくせにこれまでの誰よりもミラリアを追い込む。




