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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
橋上の歓楽都市にて邂逅するあの日
132/503

その都市、怪盗の被害に遭う

怪盗は大変なものを盗んでいきました!

「えっと、アキント卿だよね? 何か困りごと? 怪盗って何?」

「ぬっ!? 貴様はさっきシード卿が侍らせてた冒険者の小娘か!? ま、まあ、今そのことはどうでもいいか。こっちも問題で手一杯だからな」


 フルコースを食べてた時は嫌な雰囲気を出してた人とはいえ、困ってるならそれはそれ。私でも力になれないものかと、人ごみに紛れながら声をかけてみる。

 気付いてはくれたけど、なんだか『こっちはそれどころじゃない』って感じ。これは私も変に尋ねようとせず、周囲の話を聞いて判断するのが一番か。


「冒険者がやったに決まってるわよ! ここ最近の被害ばかりだし、あなた達の中に怪盗がいるんじゃないの!?」

「そ、そんなのこじつけだ! 俺らはやってねえよ!」

「この町は人の出入りが多いから、盗んで逃げれば誤魔化せるとでも思ってるんでしょ!? 返さなくてもいいから、おとなしく白状しなさい!」

「僕達は無実だ! 盗んでもないのに罪を認めたくはない!」


 周囲の様子を伺ってみれば、どうやら貴族っぽいドレス姿の若い女性達が冒険者の男性達に物申してるっぽい。後、何かを盗まれたってのは分かる。

 どうしてこの組み合わせで言い争ってるのかは知らないけど、泥棒が出たなら大変だ。早く捕まえないといけない。


「ねえねえ、アキント卿。その泥棒が『怪盗』ってこと? 何を盗まれたの?」

「え、ええい。シード卿に与する癖に、吾輩にそう迫ってくるな」

「そう言わないでほしい。今の私はシード卿と無関係。困ってることがあるならば、私だって力になりたい。立場とかは関係ない」

「そ、そう言ってもらえるのは、吾輩としてもありがたいが……どうにもやりにくい少女だ。……だが、あの時聞いた言葉が事実ならば、頼りがいはあるのか?」

「むう? 何の話?」

「こっちの話だ。ともかく、事情を話すぐらいなら構わんか」


 そんなわけで、予定を急遽変更。アキント卿にも話を聞き、怪盗を捕まえるのに協力しよう。

 カムアーチの貴族事情は別として、困っている人には手を差し伸べたい。そういう関係が人間の在り方だと思う。

 スアリさんやユーメイトさんのように、立場も種族も関係ない。


「実はこのところ、上流貴族の女性ばかりを狙った怪盗が出没しててな。そやつは鮮やかな手口で盗みを働き、目撃情報すらもない。どういう姿かも分からんのだ」

「そうなの? でも、みんなは男の冒険者さんを疑ってる。怪盗が誰か分からないにしては不自然」

「あー……そのことか。いやまあ、何と言うか……怪盗が盗むものから推察されたと言うべきか……」


 アキント卿に話を聞いてみれば、上流貴族の女性から『あるもの』が盗まれて困ってるらしい。そして、その『あるもの』が原因で冒険者の男性が疑われてると。

 それって何だろう? 冒険者は別として、どうして男性だけに狙いを絞ってるんだろう?

 そのことについても、アキント卿は言い辛そうにしながらも語ってくれる。




「じょ……女性のパンティーだ。その怪盗というのは、下着泥棒なんだ……」

「パン……ティー……? 下着泥棒……?」




 とりあえず、女性が狙われてることはより一層明白となった。確かに私もパンティーを盗まれたら困る。

 ただ、その話を聞いても一つだけ分からないことがある。


「どうしてそれで『怪盗が男性』ってことになるの? 女性の下着を盗まれたのなら、怪盗の狙いは『自分の下着を補充する』ってことにならない? むしろ『怪盗は女性』ってことにならない?」

「……吾輩、今時こんなに純情な少女は初めて見た。なんだか『パンティー』なんて口にしたのが罪悪感になってきた」

「わ、私達もなんだか恥ずかしく……」

「こんな純粋な少女が一人で旅してるなんて、世も末なのか希望なのか……」


 だって、盗まれたのが女性のパンティーならば、盗んだ人はそのパンティーを履いてそうだもん。男の人は女性のパンティーを履かない。

 結構自信のある推理を口にしたものの、アキント卿や周囲の反応は渋い。ヒューっと冷たい風が吹き抜けた気分になってくる。


 ――私、そんなに変なこと言ったかな?




「ニャハハハ! えらい純真無垢なお嬢ちゃんやな! 世の中には女性のパンティーで色々と『楽しむ男』もおるってこっちゃ! そこだけ覚えとればええわ!」

「あっ、入口で会ったお姉さん」




 場の空気が固まってると、少し離れたところから別の人が割り込んできた。カムアーチへ来た時にも会った、眼帯とギザギザ歯に変わった喋り方の冒険者お姉さんだ。

 よく分かんないけど、とりあえず『怪盗は多分冒険者の男性』って認識にしておけばいいのかな? 周囲に目を向けても恥ずかしそうに眼を背けられるし、今は場の流れに乗っておこう。


 ――世の中には不思議な人もいるもんだ。自分で履けないパンティーなんか盗んで何がしたいのやら。


「ウチも話は聞いとったで。確かに『冒険者の男』が今のところ濃厚やろうが、このカムアーチには別の問題かてあるやろ? アキント卿?」

「別の問題だと? 何の話をしてる?」


 そんな唐突に現れた眼帯のお姉さんだけど、何やらこの怪盗騒動で推理があるらしい。

 もうこの際、男性が女性のパンティーを盗む意義は置いておこう。大切なのは怪盗を捕らえることだ。

 まずはその推理を聞かせてもらおう。詳しい理由なんて捕まえた後に聞けばいい。




「……ズバリ、シード卿の差し金ってことや。狙われとるんは上流貴族の女のパンティーばっかし。せやったら、シード卿があんさんらを落とし入れるためにやっとるとも思われへんか?」

女性のパンティーを盗む怪盗って……。ただ怪しいだけの盗人……。

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