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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
橋上の歓楽都市にて邂逅するあの日
124/503

その少女、橋の町へ辿り着く

新章、舞台は歓楽都市カムアーチ。

多くの思惑が入り乱れる中、新たな物語が始まる。

 スアリさんにユーメイトさんに魔槍さん。いろんな人やら魔王軍やら武器やらとも出会って別れて早数日。

 魔剣のツギル兄ちゃんを携えてテクテク歩いていくと、ようやく大きな町が見えてきた。

 ディストールやエスターシャと同じぐらい大きいかも。何より、この町がある場所が凄い。


「ここが歓楽都市カムアーチ……。橋の上に町があるの?」

【みたいだな。規模もかなりのものなのに、海を跨いで渓谷上に町を作ってるとはな。そのためか、人の往来も多いみたいだ。俺達のような冒険者も結構見えるぞ】


 なんとカムアーチは海を跨いだ橋の上にある町だった。それだけでも凄いのに、並んでいる建物も大きくて立派。

 こうやって橋の上に町を作ったのは、ツギル兄ちゃん曰く人がたくさん通るからだとか。確かに人がたくさん通れば、それだけで町は賑わう。

 色々なお店も並んでるし、よくこんなことを考えたものだ。外の世界って大胆。


「にしても、なんだか眩しい町。眼がチカチカする」

【魔法による照明がそこら中に設置されてるな。こういうのって確か……『ネオン』だったか?】

「『ネオン』だか『オネンネ』だか知らないけど、こうも眩しいと眼が疲れる。もう夜になるのに、これじゃお寝んねもできない」


 ただ、私にとってはあまり優しくない光景かも。これまでの街道の方が、エスカぺ村での生活に近くて眼が慣れてたぐらい。

 カムアーチの街並みは明るすぎる。眼をゴシゴシしないと苦しい。

 他の人は気にしてないけど、こうも明るすぎるのも考え物だ。昼と夜の感覚が分からなくなってくる。


「よう、お嬢ちゃん。もしかして、カムアーチは初めてかいな? ここは通称『眠らない町』と言われとってな。お上りさんには色々と新鮮過ぎる場所かもしれへんな」

「むう? あなた、私と同じ冒険者?」

「まあ、そないなとこや。ともかく、あんまりお嬢ちゃんみたいな可愛い子がキョロキョロするもんやないで。この町自体は眠らんでも、危険は仰山眠っとるからな~」


 町の入口で辺りを見回してると、私と同じ冒険者らしき人が声をかけてくれた。変な言葉遣いをした同じぐらいの背丈の女の人だ。

 でも、感覚的に私より年上っぽい。とりあえず、カムアーチのことには慣れてるっぽい。

 左眼に眼帯をつけてちょっとギザギザした歯並びが怖いけど、アドバイスしてくれる辺りいい人っぽい。


「あなたも冒険者なら、この町のギルドがどこにあるか知らない? まずは換金したいものがある」

「ああ、ギルドやな。それやったら、そこの大通りを進んで右に曲がったらええわ。ウチは用事も済んどるからここでお暇やが、お互いに旅を頑張ろうやないか。ほなな~」

「うん。えっと……ホニャララ~」

「ああ、ちゃうちゃう。『ほなな』や。ウチの方言で『またな』ってことや。……ホンマにお上りさんっぽいな。あないに小さいのに、一人で旅しとるなんて何者やろか? にしても、可愛い子で――」


 なお、そこから特に一緒するようなことはなかった。お互いに手を振って別れ、こっちは教えてもらったギルドへと向かう。

 なんだか、あの人の喋り方は『方言』というものらしい。外の世界だから、言葉についても色々あるってことなのだろう。

 ツギル兄ちゃんやフューティ姉ちゃんもよく分からない呪文を唱えることがあるし、言葉一つを見ても世界は広い。


【傍から見れば、ミラリアは幼い一人の冒険者だからな。人が多い町となれば、良からぬことを考える盗人だって潜んでるかもしれない。一応の注意は払っておけよ】

「うん、分かった。でも、今はギルドでずっとポーチに入れたままだった巨大蛇を換金したい。そしておいしいご飯を食べたい」

【……結局は食い意地に収まるんだな】


 ともあれ、カムアーチの散策は後回しだ。まずはギルドでアイテムを換金し、この町でご飯を食べる資金としよう。

 道中では野草やラディシュ草によるニュー保存肉で健康的な食事は心がけてた。だけど、やっぱりご飯はできたてが一番。何より、ご飯にはその町の文化が感じられる。

 後、ラディシュ草の保存肉ってちょっとピリ辛。鼻にツンと来る香りは味わい深いけど、何度も食べるのはちょっとキツいかも。


 ――思えば、このラディシュ草をユーメイトさんの口に突っ込んだんだった。あの時むせた原因はこれか。





「こ、これを換金したいと!? ほ、本当によろしいのですか!?」

「え? 何? ダメなことでもあるの?」


 まあ、過ぎたことを考えても仕方ない。今必要なのはアイテム換金による資金調達だ。

 手続きの仕方はポートファイブのギルドでトラキロさんに教わってた。ロードレオ海賊団の副船長だけど、こういうところはしっかり本当のことを教えてくれてたみたい。一応感謝しておこう。

 ただ、巨大蛇の牙や皮を差し出すと、急に受付の人の態度が変わった。どこか間違えたのかな?


「これはダーコンダの牙に皮じゃないですか!? Sランクの冒険者でも倒すのが難しく、この辺りでは出没しないのに……!?」

「倒したのはポートファイブの近く。そっちで換金するのを忘れて、カムアーチまで持ってきちゃった。冒険者のランクとかはよく分かんない。もしかして、私が正式登録してないから不都合とかあるの?」

「い、いえ! 滅相もございません! むしろこれほど貴重な品、こちらから買い取らせていただきたく存じます!」


 とりあえず、手順を間違えてはいないみたいで安心した。それにしても、受付の人は凄い興奮してる。

 この巨大蛇、そんなに凄いのかな? 襲われたから咄嗟に斬っただけで、そこまで手強かった印象もないんだけど?

 でも確か『優先的な討伐対象』みたいなのには入ってたっけ。まあ、私はご飯を食べるためのお金がもらえるならばそれで良くて――




「こちらが換金額になります! どうか、また当ギルドをご利用くださいませ! 期待しております!」

「ふにゅっ!? こ、これっていくら? 硬貨がたくさん……!?」

思わずお金持ちになっちゃった。

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