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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
魔の街道と追憶の出会い
123/503

{ペイパーのその後}

もう1話、三人称視点での別場面。

ミラリアと別れた後のペイパー警部。

◇ ◇ ◇



 ミラリアやスアリといった面々が共に行動していた最中、別の場所でも世界を揺るがす動きが見えていた。

 ミラリア達が旅立った時の最初の大陸、そこにあるエスターシャ神聖国。かつてミラリアも修練に使った場所で、その騒動は起こっていた。


「や、止めろ! お前さん達には任せられん! オレッチだって、約束して任されたことがあるんだ!」

「そうは言いますがペイパー警部。あなたは勝手に大罪人の手配書を処分してしまったそうじゃないですか? まあ、元から私どもの話を鵜呑みにする人ではないと思ってたので、コッソリ様子を伺って正解でしたね」

「だが、おかげでミラリアがフューティをどこに埋めたのかも分かった。まさか、こんなところに女神エステナの像と共に弔われてたとはな。ミラリアの行方は掴みづらくなったが、これだけでも十分な収穫だ」


 大勢のエステナ教団員に押さえつけられるのは、ミラリアと別れた後のペイパー警部。あの時の願いを聞き入れてフューティを弔うため、教えられた場所までやって来たところだった。

 だが、ここはエステナ教団の総本山。すでにリースト司祭とレパス王子による包囲網は引かれており、逆にペイパー警部を利用して目的を果たそうとしていた。


 ――その目的こそ、ミラリアが棺に入れて埋めた聖女フューティの遺体にある。


「おや、見つかりましたか。不格好ながらも棺に入れられてたおかげか、肉体に過度の損傷もないようですね。こちらとしても助かりました」

「お、お前さん達……! フューティ様の遺体をどうするつもりだ!? そもそもフューティ様を殺したのだってミラリアちゃんじゃなく、本当はそっちなんだろ!? エステナ教団が何を考えてるのか知らんが、いい加減にしろぉお!!」

「口を慎みたまえ、ペイパー警部とやら。この場で僕に殺されて、ポートファイブにいるという娘にも後を追わせたいのか?」

「うっ、ぐうぅ……!?」


 やがて掘り返されたのは、ミラリアがフューティのために作った棺。中を開けば、あの時レパス王子から受けた胸の傷以外に損傷はなく、眠っているようにも見えるフューティの遺体があった。

 リーストやレパスとは決してフューティを手厚く弔うために掘り起こしたのではない。そんなことはペイパー警部も直感で理解できる。

 自らの娘も脅しの材料とされ、ペイパー警部になす術などない。


「本当にこの女の遺体があれば、お前達の言ってた通りのことができるのだな?」

「レパス王子の期待にはお応えしましょう。皆様、ペイパー警部は聖堂の地下に監禁して、フューティ様の遺体は実験室へ搬送願います」


 そんなペイパー警部の予感通り、リーストとレパスの先導の下、フューティの遺体はエステナ教団の手で利用されようとしていた。

 ペイパー警部自身もエステナ教団に捕らえられ、聖堂の地下へと監禁を余儀なくされてしまう。


 エステナ教団がエステナ教団を捕らえる異様な光景。それを前にしても、リーストはいつもの張り付いた笑顔のまま。

 実質的な権限は他国の王子であるレパスが握り、エステナ教団は歪な体制へと変化していた。


「リースト司祭。君達もここまで来たら僕と一蓮托生だ。知る限りの知識を全て使い、僕の野望を成し遂げるために尽くせ」

「もちろんでございます。我々としても、ディストールと争うのは得策ではありません」

「……その話ばかりだな。まあ、構わん。僕の体も改良されたし、フューティの遺体を使った計画も上手く行けば、よりこちらの戦力も強固となる。……もうミラリア如きに遅れはとらん」


 全てはレパスが胸に抱く世界を掌握する野望と、ミラリアに対する復讐心のため。かつて斬り刻まれた肉体も強化して再構築し、ただひたすらに力を追い求めていた。

 エステナ教団をも手中に収め、フューティの遺体をも掘り起こしたことにもそういった意味がある。


 ――聖女と呼ばれたフューティの肉体は、死して尚もある力を宿していた。


「フューティの肉体を使い、女神エステナの力を再現しろ。それさえ手に入れば、世界も楽園も一気に近くなる」

「ご安心くださいませ。器が手に入ったのならば、後必要なのはそこに入れる魂のみ。それにつきましても、カムアーチに心当たりがあります故。すぐに私が転移魔法で向かいましょう」



◇ ◇ ◇

これにて、本章「魔の街道と追憶の出会い」はおしまいです。

次話からミラリアは新たな舞台、歓楽都市カムアーチへ。

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