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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
魔の街道と追憶の出会い
120/503

その者達、解散の時

問題が解決したことで、一時的に集った面々も別れの時へ。

「ユーメイト様!? ご無事デ!?」

「ええ、お騒がせしました。こちらの人間の少女達のおかげで、闇瘴による汚染は収まりました。あなた達は彼女達に道を開けてください」

「に、人間が……ですカ? ユ、ユーメイト様がおっしゃられるのならバ……」


 少し洞窟の奥で話をした後、私やスアリさんは魔王軍の間を抜けて洞窟の入口まで送ってもらう。

 怪我をした魔物さんもいるけど、みんなそこまで酷い怪我じゃない。スアリさん、本当に私の願い通りにしてくれたんだ。ここまでの手加減をして制圧できるなんて、流石は理刀流の二刀流。

 先導するユーメイトさんの姿を見れば、最初に出会った鎧の魔物さんもおとなしく従っている。やっぱり、冥途将って魔王軍でも凄い立ち位置なんだ。


「では、この辺りでお別れといたしましょう。私も魔王軍という立場を知られた以上、あまり長く同伴はできません」

「私は気にしないから、もう少しだけ話を聞きたいかも……」

「たとえミラリア様が気にされなくても、人間が魔王軍と一緒にいるのは避けるべきです。どこに人目があるかも分かりません。ただ、今回の一件での感謝は事実として残しておきます。本当にありがとうございました」


 その後はトントン拍子で話が進み、こちらからこれ以上の言及もできない。上手く話を流されちゃった気分。

 感謝してくれるのは嬉しいし、ユーメイトさんがこうして見送ってくれるのもありがたい。だけど、心の距離感を感じてしまう。


【あの……本当にこれ以上は何も話していただけませんか?】

【くどいぞ、魔剣の兄よ。ユーメイト様とて、まだ全快とは言えぬ。我としても長話はさせたくない】


 まあ、ユーメイトさんだってまだ本調子じゃないのは事実だ。魔槍さんも言ってることだし、こっちからも言及は控えよう。

 それに私の目的は楽園を目指すこと。今回の一件はその道中で出くわしたちょっとした別件だ。

 楽園を目指すこと自体は応援してもらえてるし、今はそのことだけ胸に抱いてお別れとしよう。




「……ユーメイト。しばらくここで待っててくれ。俺は少しあの子達と話がしたい」

「……ハァ、そうですか。まあ、あなたがそうしたいならそうしてください。こちらも聞きたいことはありますが、後になっても構いませんので」




 洞窟を出たところでお別れの挨拶をしようとすると、何やらスアリさんがユーメイトさんに耳打ちして一人でこちらに迫ってくる。

 なんだか、ここでスアリさんともお別れみたいな雰囲気だ。でも、これも仕方ないかも。

 そもそも、スアリさんとユーメイトさんは知り合い同士。ユーメイトさんも元に戻ったのだから、色々と話したいことがあるのだろう。

 それにしても、どうして一人だけで私の方に来たんだろ? 別にユーメイトさんが一緒でもいいんじゃないかな?


「ミラリア、ツギル。俺ともここでお別れだ。ユーメイトとはまた時間をおいて話をしたい。こういう結末になれたのもお前達のおかげだ。感謝する」

「それならよかった。私もスアリさんには介抱してもらったり色々教えてもらったり、とてもお世話になった。恩返しできたみたいで満足」

【まあ、俺も結果としてはよかったとは思いますが……どうして魔王軍なんかと知り合いに? スアリさんにしたって、本当は何者なんですか?】


 やっぱりお別れみたいで、スアリさんは個別で挨拶を交わしてくる。短い間だったけど、別れるのはちょっと寂しい。

 でも、元々は私とツギル兄ちゃんでしてた旅だ。スアリさんはあくまで一時的な同伴をしてくれただけ。

 問題も解決したし、これ以上お世話になるのも申し訳ない。とはいえ、スアリさんのことは私もやっぱり気になる。

 でも、ユーメイトさんの方は適当にはぐらかされてた。なんとなくだけど、スアリさんもあんまり語りたがらないような気がする。


「……すまない。俺の素性についても、お前達に話すわけにはいかない」

「そっか。残念だけど仕方ない。ユーメイトさんみたいな魔王軍と関わってるのも、スアリさんの個人的な事情があるんだと思う。私もあんまり人に聞かれたくない事情はある。だから無闇に詮索しない。自分がやられて嫌なことを他人にするのはよくないこと」

「……フッ、そうか。ミラリアは利口だな。最初に会った時は無知な小娘かと思ったが、しっかり成長する様子が垣間見える。俺も安心した」

「ふにゅっ!? アホ毛、クシャクシャしないで。くすぐったい」

「相変わらず、アホ毛のことは妙に気に入ってるんだな」


 予想通り、スアリさんが身の上を語ってくれることはなかった。だけど、なんだか様子が最初の時と違う。

 厳しさが抜け落ち、ほんのりとした笑顔から感じられる優しさ。私の頭をアホ毛ごと撫でてきて、少しムズムズしてしまう。

 でも、悪い気はしない。スアリさんの手の動きからも優しさが感じ取れる。


 ――この感覚、スペリアス様に近いかも。いつもは厳しかったけど、私が修行などで成果を出した時はこうやって撫でてくれたのを思い出す。


「……ツギル。お前はミラリアの兄だ。何があろうとも魔剣として、妹のことを守ってやれ」

【え? あ、はい。そ、それは当然ですが……】

「ミラリア。確かにお前は強い。剣術にしても、その心根にしても強い。だが、世界とはまだまだ広いものだ。俺が教えた旅の知識だけでなく、多くの経験を経て世界を見て回れ。そうすることがお前の成長にも繋がり、目指すべき楽園へも導いてくれるだろう」

「う、うん。私、世界をもっとたくさん見て回る。いずれは楽園へ辿り着けるように頑張る。……でも、その目的だけは間違えないようにする」

「ん? 楽園を目指す目的か?」


 スアリさんは頭を撫でてくれながら私を応援してくれてる。最初はスペリアス様のことでアレコレ言ったり、キツい人って印象が強かった。

 だけど、こうして短い間一緒にいただけでも、この火との奥底にある優しさは理解できた。やっぱり、人と関わって相手を知ることは大事。


 ――それに、私はこの人に旅の目的は改めてしっかり伝えておきたい。スペリアス様と気配が似てるからかな? なんだか、そうしないといけない気がする。




「私が楽園を目指すのは、お師匠様でお母さんであるスペリアス様に会いたいから。会って『ごめんなさい』って伝えたいから。私がワガママ言って困らせたこと、キチンと謝らないといけないから」

もしかすると、ミラリアは何かに気付いたのかもしれない。

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