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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
魔の街道と追憶の出会い
112/503

そのパーティー、魔物の軍団と接触する

闇瘴に挑める力を持ったミラリアだから聞ける剣士スアリのお願い。

「近くまでは来れたが、やはりどうにも面倒なことになってるな」

「あそこの洞窟にその人がいるの? でも……入れそうにない」


 今度はしっかりスアリさんの先導で道を間違えずにテクテク目的地へ。そうしてやって来たのは小高い丘の上。

 現在、私達はそこから下に見える洞窟を覗き込んでいる。あそこの中に闇瘴で苦しむスアリさんの知り合いがいるらしいけど、どうにも困ったことになってる。


【あれって……魔物だよな? しかも結構な数がいるぞ? あの様子だと、洞窟の中にも結構いそうだ】

「スアリさん、本当に知り合いがあの洞窟の中にいて、闇瘴に苦しんでるの?」

「ああ、そうだ。だがあの様子だと、魔王軍が洞窟自体を牛耳っているようだな」


 洞窟を囲むように守るのは、大量の魔物達。これまで狩ったりした魔物と違って、武器を持ったりお互いに声をかけたりしてどこか知性的。

 あれが噂に聞く魔王軍というものか。なんとも面倒なところに集まってくれたものだ。


「ねえねえ。そもそも、どうして魔王軍は闇瘴のいるところに集まってるの?」

【魔物自体が闇瘴から生まれたって言われてるし、人間には有害な闇瘴でも魔王軍からしてみれば実用的な資源なのかもな】

「成程。それは納得の理由。ツギル兄ちゃん、冴えてる」

【いや、普通はそう考えると思うぞ?】


 その理由についてはツギル兄ちゃんがパパッと考察してくれた。魔王軍自体も初めて見るけど、とりあえずは『大変な魔物の軍団』って認識で大丈夫だろう。多分。

 いずれにせよ、あれだけの魔物の相手はしたくない。流石に骨が折れる。


【そもそもその知り合いって人も、こんなところに潜まなきゃいいのに……】

「少し込み入った事情があってな。あいつはあそこから出られない。こちらから出向くしかないが、ミラリアならどうする?」

「え? 私? む~ん……」


 その方法については、なんと私に一任されてしまった。スアリさんのお願いなのに、私に白羽の矢を立てないでほしい。やるならせめてツギル兄ちゃんで。

 とはいえ、頼まれたならば考えてみよう。こうやって考えて動くこともまた経験だ。


 まず、このまま魔王軍の元へ突撃するのはなしで。私とスアリさんが組めば勝てなくはないかもだけど、今回の目的は洞窟の奥へ行くことだ。

 魔王軍からすれば、こっちの方が侵入者にもなる。無闇に刀を振るうのは、相手が魔物でも魔王軍でも避けたい。

 何より、魔王軍の魔物には知性があると見える。ならば、いつも魔物に襲い掛かられて斬り返すような真似も無粋だ。


 ――私は外の世界で人と触れ合い、交流の大切さを学んだ。話ができるのならば、相手が魔物でも同じことだろう。




「すみません。私達、この洞窟の奥へ行きたい。通ってもいい?」

「エッ!? ニ、ニンゲン!?」

【ミラリアァァア!? いきなり魔物に話しかける奴がいるかぁぁあ!?】




 てなわけで、まずは接近して挨拶。そこからお話しでお願い。相手の言葉も分かるし、これならなんとかなるかもしれない。

 にしても、ツギル兄ちゃんは逐一やかましい。私のこの完璧な対応のどこに文句があるのだろうか?


「……おい。いきなり動き出すな。せめて考えを俺に伝えてからにしろ」

「あっ、そうだった。ごめんなさい」

「まあ、作戦としては悪くないかもしれないが……」

【えっ!? いいの!? 魔物と交渉する作戦でオッケーなの!?】


 そうだった。先にスアリさんへ伝えておくべきだった。思わず先走って一人で前に出るのは危険である。

 でも、作戦自体は褒めてくれた。ツギル兄ちゃんがやかましいだけで、流れとしてはいい感じっぽい。


「止まレ、人間どもガ。ここより先は我ら魔王軍が幹部の命令によリ、何人たりとも通すことはできヌ。すぐに立ち去レ」


 とはいえ、実際に素直に通してくれるかとなると話は別。全身鎧の一際話ができそうな魔物が出てくるものの、返ってくるのは拒絶の言葉のみ。

 闇瘴を守りたいのかどうしたいのか知らないけど、要望が通るかどうかは別問題だ。交渉って難しい。


「ス、スアリさん。どうしよう?」

「流石に素直に話を聞くかどうかとなると違ってくるか。魔王軍の連中も頭が固い」

【いや……俺達の対応もかなり無茶な気がしますよ? 普通、魔王軍といきなり交渉なんてします?】


 こうなってくると私ではどうすればいいか思いつかない。スアリさんに顔を向け、涙目で尋ねずにはいられない。

 いくら魔王軍の頭が固いとしても、話せる相手にいきなり斬りかかるのは野蛮。私としては、ツギル兄ちゃんも頭が固い。


 ――でも、本当にどうしよう? 持ってる巨大蛇の牙と交換で取り合ってもらえないかな?


「……何者かは知らぬシ、目的も見えてこなイ。だが、こうして我ら魔王軍と接触してきたからにハ、こちらの流儀に従ってもらおウ」

「その流儀に従えば、ここを通してくれるの?」

「ああ。結果次第にはなるがナ」


 そうこう悩んでたら、全身鎧の魔物さんが何やら条件を持ち出してきた。どんな流儀か知らないけど、それで洞窟の奥に行かせてもらえるならここはおとなしく従おう。

 スアリさんの知り合いだって、今こうしてる間も闇瘴に苦しんでるんだ。時間をかけたくはない。


 はたして、私達がここを通るために魔王軍から持ち出される条件とは――




「我らは魔王軍。偉大なる魔王ゼロラージャ様と共に力の道を歩む者達なリ。……自身達の願望を叶えたくバ、我らを力で超えてみせヨ!」

結局こうなる。

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