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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
始まりの村と追及の王国
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その少女、村の問題児

初心者です。過去作の投稿です。よろしくお願いします。

一人の少女による異世界ファンタジー冒険譚開幕でございます。

 空は青く、ほどよく雲が浮いている。プカプカしてて柔らかそう。

 突き抜ける風は心地よく、走れば私自慢のアホ毛をなびかせる。ソヨソヨ揺れて気持ちがいい。

 周囲を覆う木々、実りを感じさせる緑の山々。見慣れた故郷の景色とはいえ、悪くはない。




「待てぇぇえ! ミラリアァァア! 今日という今日もいつもと同じく、お前の好き勝手にはさせないからなぁぁあ!」

「むぅ……。ツギル兄ちゃんはいつもの如く騒がしい」




 後ろからの怒鳴り声さえ無ければだけど。私は現在、追いかけてくるツギル兄ちゃんから逃亡中だ。

 村の中をお互いに慣れた調子で突っ走る。この追いかけっこも何回目だろうか? 多分、トータルだと100回以上だと思う。


「ほうほう。ミラリアちゃんとツギル君の兄妹は、相変わらず元気じゃのう」

「おじいさん! ボーっとしてる場合じゃないですよ! ミラリアの奴、村の御神刀を持ってまた外に向かってるんですよ!」

「この御神刀、私が授かったもの。どう使うかは私の自由」

「それで無茶しないのが条件だったろ!? 村の結界は壊させないからなぁぁあ!!」


 村のみんなも慣れた様子で、私達兄妹の追いかけっこを眺めている。特におじいちゃんといった年配層は顕著。

 もう100回以上も続けていればそうなる。でも、みんながみんな眺めてるだけでもない。


「そっちの二人! ミラリアを止めてください!」

「おうよ! 今日という今日は俺達で止めてやるぜ!」

「覚悟しなよ! お転婆問題児のミラリアちゃん!」


 ツギル兄ちゃんの掛け声を聞いて、村でも大柄なおじさん二人が私の前へと立ち塞がる。だけど、慌てることはない。

 これもいつものことだから、いつものように対処すればいい。こっちには最近手に入れた御神刀だってある。

 お師匠様の修行に耐えたこの剣技も合わされば、切り開けない道などない。



 スパンッ! スパンッ!



「うおっ!? 俺のズボンが……いや、パンツごと!?」

「は、恥ずかしい! 悔しい! ミラリアちゃんめ、また無駄に居合の技量が上がってやがる……!」


 すれ違いざまに加速して踏み込み。そこから鞘に収まった御神刀を素早く抜刀&納刀。

 これぞ私が長年の修行で身に着けた剣技。圧倒的な速さと鋭さを持った居合術だ。

 手にした御神刀との相性も抜群で、おじさん二人を下半身丸裸にするぐらいならわけない。

 お股を手で覆い隠し、私を追ってる場合じゃない。


「ミ、ミラリア!? お前、なんてことをするんだ!? いつもならズボンだけで済ませてるのに、パンツまで切り落として辱めるなんて……!? そんなことをして楽しいのか!?」

「楽しくはない。邪魔するから悪い」


 前方の障害は排除。でも、ツギル兄ちゃんは相変わらず追いついてくる。

 流石は私の兄と褒めてやろう。こっちもスピードには自信があるのに、よくぞ毎回ついてこれるものだ。

 私が村一番の剣術使いとすれば、向こうは村一番の魔術師と称されている。中身は違えど、私と共に修行してきたが故か。


「でも、ツギル兄ちゃんの相手を直接するのは厄介。どうにかして、やり過ごす方法は――」

「こらー! ミラリアちゃん! またお兄ちゃんを困らせてるのね!? 村の外に出ようとするのだけは、このお姉さんだって許さないから!」


 対策を練りながら角を曲がると、今度は村の巫女さんが仁王立ちで止めに入ってきた。この人の耳って長いからか、騒ぎもすぐに聞きつけてくる。

 どこかドヤ顔で胸を見せつけてくるけど、その格好が妙にムカつく。私より大きいのが気に食わない。結構年増のくせに。

 とはいえ、ここでオッパイ巫女装束が割り込んできたのはチャンスかもしれない。


「斬り捨て御免」



 スパンッ! ――ハラリ



「……へ? え? きゃぁぁあ!? う、上着がはだけたぁあ!?」


 仁王立ち程度で私は止まらない。そんなに胸を強調するならば、いっそ布で隠さずに見せつければいい。

 丁度ツギル兄ちゃんも角を曲がってくるし、いい機会だと思う。


「ミラリアァァア! 勝手に村の外へは――ブベェ!?」

「キャァァアア!? ツギル君のエッチィィイ!?」


 まあ、本当の狙いは別だけど。角を曲がってきたツギル兄ちゃんは、そのオッパイを拝む暇もなくビンタで目線を逸らされてしまう。

 完璧な作戦であった。年増な長耳オッパイ巫女も役に立つ。

 後ろ目で確認してみれば、ツギル兄ちゃんは今も巫女さんにゲシゲシと踏んづけられている。あれはあれで袴の中が見えそうだけど、厄介な追っ手とはおさらばできた。


「村の入り口、見えてきた。後はあそこの結界を御神刀で斬れば……!」


 そして見えてくるのは、結界で張られた村の入り口。今回はここまで辿り着けた。

 いつもはここでツギル兄ちゃんが転移魔法を使って瞬間移動してくるけど、今回その心配はない。御神刀だって持ってるし、後は結界を斬り破ればいい。




 ――この先に、私が目指す楽園がある。




「いざ、外の世界へ……!」


 速度は十分。腰に携えた御神刀の柄に手を当てて、一気に踏み込みながら居合を放つ。



 スパ――ガキィン!!



「ッ!? これでもダメ……!?」


 しかし、結界は私の想像の上を行く。御神刀による居合をもってしても、傷一つつかない。

 なんて強度だ。御神刀と私の居合が合わさっても破れないなんて、誰がどうしてこんな結界を作ったのだろうか?




「残念じゃったな、ミラリア。おぬし程度の実力では、まだまだワシの結界を破るには至らぬ」

「ふんぎゅ!?」




 まあ『誰が作ったのか』については私も知ってる。その人は突如私の頭上に降りてきて、自慢のアホ毛ごと踏んづけてくる。

 銀色の長髪をなびかせ、魔女装束を身に纏った女性。見た目は美人だけど、口調がババ臭い私のお師匠様。

 私を踏んづけたまま余裕の笑みで見下ろし、これまたいつものお説教モードで話しかけてくる。


 ――やっぱり、この人が最後の難関か。


「修練が足りぬな。外の世界へ羽ばたきたくば、素直にワシの言葉に従っておれ。我が娘ミラリアよ」

「ス、スペリアス様……」

なお、まだ村の外にすら出られない模様。

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