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ブレイクソード  作者: 遊者
魔界
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第九十話 魔界 終

~クロ視点~

「終わったか」絶対空間の中から這い出て焦土と化した衰弱大陸に戻る。ベータとアミス、大陸住民はまだ絶対空間の中にいる。理由は管理者と上位者が徘徊しているかもしれないからだ。


「被害が凄い」ただでさえやせ細っていた大陸は生きていくのが不可能なほどに壊滅している。地面には死の灰が降り注ぎ、遠くの山は黒煙とマグマを空まで飛ばしている。


「ヘルは違う場所に移動したみたいだし、私が元に戻すか」上位者との戦闘が終われば勝者が修復する。それが抵抗者が決めたルールだ。守らない奴もいるが。


「巻き戻せ」詠唱をの大元を省き、魔法を展開していく。蒼と緑の魔方陣は空を覆い、紫と白の魔方陣は地面を覆い尽くした。


「時空遡行」魔法の名を呟くと同時に世界の修復が始まった。焦げた大陸は肥沃な大地に変わり、自然はその怒りを鎮めた。むせかえるくらいに汚く染まった黒い空は次第に色が落ち、赤が返ってきた。


「力を使い過ぎた」倦怠感に襲われた私は地面に片膝をつく。


「はぁ」ため息を吐き空を見上げる。魔界は人界と違って青い空ではなく赤い空だ。私が生み出した時は何処までも蒼く果てしなく広がるものだったというのに。


「嘆いていても仕方ない。世界を取り戻すまでは我慢の連続だ」綺麗な空も、聳える巨峰も、慈愛に満ちている海も、見守る星も、照らしてくれる太陽も、支えてくれる月も今はいらない。全てを取り戻した時に見れれば十分だ。


「そのためにも目の前に迫る火を避けねばならないな」目線を上げると数万を超えるモンスターが波のように押し寄せていた。魔力の流れ、生命力の薄さ。十中八九上位者が作り出したものだろう。


「厄介なことを残して消えたな」ヘルはこうなることが分かってここから消えたように思える。面倒ごとが嫌いな性格のアイツならやりかねない。


「まぁウォーミングアップだと思うか」魔力を込めながら宙に浮く。上位者の配下は能力を使わないと倒せない。能力が無い私とは相性が悪すぎる。


「能力が無い状態でも破壊できるか,,,試してみるか」手に集めた魔力を開放し、氷属性の魔法を撃ちこむ。これなら大陸に負担がかからないし、後処理も楽だ。


「効かないか」放った魔法はモンスターに当たれど倒れることは無かった。冷気が空気中の水分も凍らし、雪が降りているというのに動きすら鈍らない。


「神具を使うしかないな」リベリオンの形態を軽装から重装に変化させる。いざという時に使うのが神具の強みなんだが,,,私の着ている鎧は関係ない。


反逆纏身(リベリオン)」鎧の名を叫ぶ。これで真価を発揮することができる。切り札でも奥の手でもない。純粋な強化。そして能力の付与。反逆を纏うのに相応しい。


「今回は氷結か」魔力が瞬時に氷に変わり地面に落ちる。突き刺さった氷の破片を中心にして凍てつく空気が広がり始めた。


「戦えそうだ」能力と言うのは解釈の幅で強さが変わる。どれだけ弱い能力でも想像力と自信、思い込みで最強格になる。


「掛ってこい!」覇気に能力を乗せ周囲を氷点下に持って行く。動きが鈍れば戦いやすくなる。鈍らなくても次の攻撃に転じやすくなる。長い間生きてきた私だからできる芸当だ。


「!!」耳が痛くなる方向が四方から聞こえてくる。前方だけかと思っていたが、いつの間にか囲まれていたようだ。上位者の配下ともなると規模も戦略も違う。それに質も。


基盤となった生物の数段上。力も、頭脳も全てが高水準。分かりやすく言うと二つ名。更に千体に一体は特殊個体。俗にいう一級二つ名個体。国の軍隊総出で討伐できるかどうか。


「私に対して意味はないが」地面を砕き亀裂の中に地雷型の魔法を仕掛けていく。ここに接触すれば大爆発が起き、看破され避けられても時間差で爆発する。


「があああぁあ!!」罠に気が付かなかったモンスターたちは叫びながら凍り始める。所詮上位者の傀儡もこの程度か。


「興覚めだな」能力があれば誰でも倒せる存在は戦っていても楽しくない。成長が見込めないからな。


「消え失せろ。崩山」魔力を山の様に練り上げ、遥か上空に吹き飛ばす。数秒もしない内に爆発する欠片となりこの大陸に降り注ぐだろう。また時間遡行魔法を使わなければいけないが、今はこの状況を乗り切ることが先だ。


「!!」異変に気が付いたモンスターたちは目もくれずに私に襲い掛かってきたが、もう遅い。無慈悲に体を貫き、粉々にする死の氷が衝突を始めた。


響き渡る悲鳴に轟く爆発音。揺れる大地に割れる空。八強に数えられることはもうないが、世界を震わせた力は未だに健在のようだ。


「これで満足か?メライ」モンスターの渦の中、刀を二振り携えて、獲物を屠る好機を窺う一人の剣士に問う。調停者と手を組みアミスの殺害、魔界の崩壊を企てた上位者。素材はいらない。ここで殺す。


「満足と聞かれれば満足じゃない」彼はそう言うと刀を振りぬいた。黒い眼帯越しからでも分かる鋭い眼光。始めから本気でくるようだ。


「お前を殺してやっと渇きが潤う」


「力を奪われた私を殺して?破壊者も落ちぶれたな」メライは上位者。別名は破壊者。事象や概念を手に握る妖刀と霊刀で破壊する。この戦いは攻撃に当たれば負けと言っても良い。


「落ちぶれるも何も無い。俺は障害全てを破壊する。それが使命であり天命だ」刀が紫色に光る。妖気を集めているのだろう。空に浮かぶ太陽は喰われた様に黒く染まっている。私の作った世界を壊す真似は見過ごせない。


「その使命も天命も此処で消える」魔法空間から神具を取り出す。狙うは短期決着。長引いたところでメリットはない。


「どこまで喋っていられるか、試してみよう」メライは握っていた刀を振り回し隕石を落とし始めた。神具でもないというのにこの性能。管理者は本当に厄介な物しか生み出さないみたいだ。


「その余裕が身を滅ぼすことになるぞ?」リベリオンに魔力を注ぎ込み、氷の鎧に変化させる。これでリベリオンの機能を使うことができる。


「行け。氷鎧騎士」周囲に立ち込める冷気がたちまち氷の騎士に変化する。力はないが、隕石を止めるための弾にはなってくれるだろう。


「,,,」無言で頷くと騎士たちは空を飛び、降り注ぐ隕石に向かって突撃を開始した。


「どうするメライ?」魔法を展開しながら挑発を開始する。軸が無限に広がったことにより、上位者たちは複雑な感情を手にすることになった。前までは効かなかった心の揺さぶりも聞くようになっているだろう。


「近接戦で片を付ける」右足で踏み込んだかと思えばもう目の前まで近づいていた。


「っ!」咄嗟に後ろに飛んだが、刀の間合いからは出れていなかったようで、右腕が叩き落とされていた。


「痛いな」地面に落ちた右腕に一瞬目をやり、再びメライに目を向ける。この戦いが終わらない限り回復は出来ない。


「勘は鈍っていないようだ」左右上下から飛んでくる斬撃を紙一重のところでいなしていく。


「伊達に世界を旅していないからな」鎧を高速変形させ、重装から軽装に形態を変える。重たい動きじゃいくら見切れていても対応できない。


「経験値は無いようだが?」変形中に生まれた死角から無数の斬撃が飛んでくる。


「気のせいだな」ガントレットと肩に装着している魔導砲で攻撃全てを弾き返す。魔法鎧は使用者の意志を大きく反映してくれる。今も猛攻を凌ぐために補助のための兵器を出してくれた。


「ふっ!」その隙を見逃さず足に力を籠め拳を振りぬく。綺麗な弧を描く左フックは確実にメライの顎先を捉え、脳みそを揺らした。


「くっ,,,」体に力が入らなくなったメライは軽い音を立て地面に倒れ込んだ。


「魔法以外も使えるということを教えて貰わなかったのか?」悔しさと屈辱で酷く歪んだ顔を見下ろす。上位者も戦い方を知らなければ弱い。


「まぁ、知っていてもリベリオンがある時点で勝てないがな」ガントレットに魔力を流し込み、威力を底上げしていく。これで殺せるなんて思っていないが数年は復活できないだろう。力を奪われたことが悔やまれる。


「じゃあね」頭部を完全に捉えた拳は頭蓋骨を貫き、息の根を完全に止めた。何とも呆気ない最期で、正直拍子抜けだ。


「あとは隕石を止めて終わりか」地面に突き刺さっている妖刀と霊刀を引き抜く。銘は知らないがさぞ高名な職人が作った逸品に違いない。他の抵抗者に渡して戦力増強を図ろう。


「止まれ」纏っている妖気に上書きする様に闘気を纏わせる。メライの命令を無視できるようにするためにはより強固で抑圧できるこれが最適解だ。


初めは抵抗する様に震え隕石を落としていたが、氷鎧騎士に隕石を壊され常に流し込まれる闘気に折れたのか、紫色に光っていた刀身は鈍くなり、空を突き破る岩も無くなった。


「これで今回の件は終わりか」流れていく暗雲を眺めながらこれからどうしていくかを考える。鍵であるアミスを失うわけにもいかないし、魔界の平和を保つためにはベータが必要だ。


今は自分の意志で二人ともここに居てくれているがどうなるか分からない。


「世界を取るか、仲間を取るか」人間に近づき過ぎたのか、人間が近づき過ぎたのか。


「後者だろうな」自問自答を繰り返しながらイージスの中に戻る。魔界の皆には外は危険だと言い聞かせておこう。監視者も管理者も恐ろしくて出ていられない。出るときは力を得たときだ。

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