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ブレイクソード  作者: 遊者
魔界
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第八十五話 魔界5

「ここがこの大陸の中で最も活気のある町、『アライブ』だ。向こうに見えるのが死の山で、その麓に友人がいる」人界と変わらない賑わいを見せる故郷の説明を後ろの二人にする。


外壁も無ければ塀も無い。来るもの拒まず、去る者追わずの精神で数百年以上存在するここは、多種多様な魔族が存在し、その分だけ、家が建ち、店がある。日用品から武具まで何でも揃うメインストリートは繁栄している人界の王国と遜色は無い。


「魔族って人間の事を嫌ったりしてるのか?」少しだけ体を震わせながらベータが聞いてきた。


「二極化してるよ。嫌いな奴は呪い殺そうとするし、友好的な人はずっと気にかけてくれる。ここにいる魔族は皆、私のおかげで人間の事が好きだよ」不安を取り除けるように説明していく。


「戦争、する?」アミスは相も変わらず戦いの事で頭がいっぱいの様で、槍を強く握り締めている。


「しないよ」そう返答すると、つまらなさそうな顔をした。流石は戦闘狂。それ以外の事はあまり興味がないらしい。共に歴史を調べているとベータから聞いているが、そうは思えない。


「魔族の特徴って何かあるか?人界の尺度と違ったら教えてほしいんだが」


「魔族は魔界特有の魔力の流れを使って魔法を使う。だから角や翼が生えていたり、動物を模した体をしているよ。特に色が濃い、もしくは体を覆う補助部位が多い魔族は強い。そういう魔族には喧嘩を売らない方がいい」魔法空間から紙を取り出して絵を描きながら情報を加えていく。


「魔法障害じゃないんだな」町を出入りする魔族をベータは深く観察している。向こうも人間の来訪が珍しいのか、遠目で見てくる。


「障害も見方によっては武器になる」人界で馬鹿にされてもここでは猛威を振るうことができる。魔界で馬鹿にされても他世界で活躍することができる。大事なのは自分の在り方。


「クロ、良いこと、言う」アミスは感心する様に頷いた。話をしっかり聞いてくれればもめ事が起きなくて助かんるんだが,,,まぁ、歴史を追うくらいだからそんなへまはしないだろう。


「はは。まぁ、魔族の認識はそこまで齟齬が無いだろう。安心して魔界を楽しもうじゃないか」


「そうだな。気にしてたらずっと足踏みしそうだ」不安が無くなったベータはいつもの様に不敵に笑った。瞳が震えておらず、先だけを見据えている良い目。


「同感」アミスの表情は全く動いていないが、決意が固まったのだろう。少しだけ震えていた体ががっしりと大地を掴んでいる。華奢な見た目だが、侮れない。


「では行こうか。後魔法障害ではなく、魔痕だ。気にしないとは思うが」少しだけ釘を刺し二人を連れて町の中に入る。先程も言ったがここには門も無いし、門番も居ない。ただ、町の中で起こったことは町の中にいる自警団が裁く。悪かどうかはそいつら次第。私はあまり良く思っていない。自己中心的な考えをする奴が多いからな。


「町並みは変わらないんだな」目線を右に左に動かしながら様々な情報を視覚で手に入れながら緑髪の男が言った。


「人型の生物は便利な建物や威厳のある建物は中心に集める傾向にある。ほら、向こうに見える似合わない城はこの町のど真ん中に建築されているよ」町の奥に見える巨大な城を指さす。あそこにはかつて人間界と同じように八強として名を連ねた猛者がいる。


「豪華な装飾で固めてんな」壁には痛すぎるほどの宝石と灯りが、見上げても見上げきれない五つの塔が空を貫き、その中に王として座るようにさらに高い主塔がそびえ立っている。ベータはその光景に釘付けだ。


「行きたいが、クロの旧友に会いに行くのが先だろ?お前が気持ちのままに動くのは初めてだしな」カッカと笑いながら背中を叩かれた。そう言えば言葉にするよりも先に体が動いていたな。私も人と言う枠に染まってきたか。


「綺麗。でも、資源は、どこから?外?それとも、交換?」外身を気にする彼とは対照的に、アミスは構成している物について知りたいようだ。


「資源はこの先の山からで今は掘りつくして枯渇しているよ。この町を支えているのは長の手腕と貿易があるからだ」少しでも疑問が解消できるように細かく説明する。魔族が人間を知った時の様に、人間にもまた、魔族を知ってほしい。


「長に、会いたい」私の話を聞いたアミスは珍しく瞳を輝かせた。


「長か,,,今の長は向こうは私を知っているだろうか,,,」指を頭に当て記憶を辿る。私は長の事を知っている。それどころかこの世界全ての生き物を知っている。全知全能、そして無知蒙昧。万物の事象を理解している私にとってこの世界はおまけであり、今を生きるのは暇つぶしだ。


抵抗者だろうが、神だろうが、上位者だろうが、管理者だろうが、関係ない。全ては無に帰し、意味を為さない。故に惰性で生き死にを繰り返す。それが私の選択だ。


「まぁ、行ってみれば分かるか」記録を見ること、思い出すことはあまりに面倒くさい。そんなものは世界図書館や時空図書館に行けば閲覧できる。だから会うということを選択する。回りくどいことはしたくない。時間がないからな。


「城に行くのか?」


「アミスが長に会いたいと言うのでな」金髪少女の頭を撫でながら城に行く経緯を話す。


「城の中を見て回れるか?」魔法空間から紙とペンを取り出しながら聞いてきた。魔界特有の魔力の流れが人間の使う魔法を妨害するはずだが、意に介さないとは,,,ここまで成長しているとは驚いた。


「取り合ってみるよ。十中八九許可を出してくれると思うが」この町は人間を歓迎している。それに前の長は私の旧友とも仲が良かった。引継ぎがしっかりとしていれば喜々として手を取ってくれるだろう。彼が何かしていなければ。


「心配いらなさそうだな。それじゃ、しっかりと情報を書いて行くか。あ、俺の事は気にしないでいいぞ」彼はそういって町や住民について詳しく紙に書き始めた。


「分かった」彼の言葉を信じて城に足を伸ばす。遅くなったり早くなったりする彼の歩調に少しだけ不安が募る。はぐれてしまうのでは、誰かにぶつかってしまうのではと言うもの。でもそれは杞憂だった。


ダンスを踊るようにステップを刻みながら人ごみの中に入り、町を構成する建物の事をマッピングし、その店は何なのかを補足を横に書いていた。さらにはどのような見た目の魔族が経営しているのか、どのような魔族に需要があるのかを目にも止まらぬ速さでまとめていた。


城の前に着く頃には大方の地図が出来上がっていた。これほどまでの完成度の地図は私の長い生涯の中でも一、二を争うほど。それくらい綺麗で、分かりやすい。彼なら冒険神の跡を継げるかもしれない。


「やっぱ情報を集めてる時が一番楽しいな」魔法空間に紙を戻し、新しい紙を取り出しながらベータが言った。手にはインクがべったりと付着しており、見て目が少々悪い。これから長のところに行くのだから見栄えは気にしなくては。


「動かないでくれるか?魔法を掛ける」返答を待たないで浄化魔法をかけ、手の汚れを落とす。ついでに服に付いている汚れも。


「折角だからアミスにも掛けてあげよう」連続で魔法を唱え、アミスの鎧についていた血や埃を落とす。彼女は魔法が上手く使えない。


誰でも使える様な浄化魔法も、初級魔法も。小さい頃のトラウマだと言っているが別の要因がある。だが、深くは聞かないと決めている。私の事を信頼して口を開いてくれるその時まで。世界が保てていればの話だが。


「ありがと」彼女は少しだけ笑顔になった。綺麗になることは人らしい生活の一歩だからな。


「礼は待ってくれていた兵士に言った方がいいんじゃないか?」気が付けば私たちの周りには沢山の魔族が武装して立っていた。


重厚な鎧を纏う者。己の肉体を強化し獲物を持つ者。真痕が顕著に表れ魔力をかき集めている者。どこを見ても猛者ばかり。


しかし、殺意も無ければ敵意も無い。中には雑談を始めている者もいる。仕事だから一応来て見たが、相手は人間だから別にいいかと言った具合だ。


「あ~、お前達はここに何しに?」黒い角に溶けては再生を繰り返す翼を持った男が、頭を掻きながら前に出てきた。黒い髪の中からこちらを覗く紫の目は品定めをしているようだ。


「長に会いたくてな,,,『ヘル』の朋友と言えば通してくれるか?」私が名を言うと彼らは後退りをした。ジンと言う名前の魔族は一時この魔界に恐怖のどん底に叩き落とした。


両手に握られた神をも殺す銃で大陸を歩き回り殺戮の限りを尽くし、作り上げた死体の山は数万を優に超える。彼が歩いた道には生命が残らない。二つ名は『ゼロ・アライブ』、又の名を八強『死神』。現時点でこの世界で三番目の強さを有している。


「ヘル,,,恐れ知らずもいい加減にしてくれないか?アイツの名を出したら,,,」黒角の魔族が何かを言いかけた途端頭が吹き飛んだ。視認することが不可能な凶弾。不幸にも彼に当たってしまった。


「___」皆が悲鳴を上げようとしたが、圧倒的な存在の接近を本能で理解し、押し殺した。声を上げれば次の被害者になると。


「俺の名前を出したらこうなるって言いたかったのか?」後方から男の声が聞こえる。


「ヘル,,,手癖の悪さは変わらないな」振り向くと拳銃を指で回している友が立っていた。長身で赤い髪。龍のような目。白と金で作られた銃に、禍々しい魂を狩り取るような形をした鎌。ヘルだ。


「城に行きたいんだろ?この紙でも渡しとけ」彼はそういって魔法空間から一枚の紙を取り出し、渡してきた。


「いつもの場所で待つ」ヘルはそう言い残し、この場から消えた。瞬間、空気に安堵の雰囲気が流れた。


「相変わらず破天荒な奴だ。ベータ、アミス、私は予定変更してヘルのところに行く。この紙を持って城を見ててくれ」呆気に取られている二人の内、意識がまだありそうなアミスの手に紙を握らせる。


紙の内容は城の探索許可証。断ったり、仲間に傷が付くような事態になればこの町が消えるという旨の物。世界に名を響かせる彼だからできる荒業。


「う、うん」たじろぎながらも彼女は頷いた。


「すまないな。彼も悪気があって殺しをしているわけじゃない。運命が、能力が苛んでいるんだ。理解は出来なくても、認知だけしてくれ」魔法を展開しながらアミスに話す。ベータは完全に放心状態だ。


「数日ヘルのところにいる。何かあったら名を叫べ。『ヘル』とな」返答を待たず、展開が完了した転移門を通る、場所はゼロ・アライブ山頂。大事な話をするときはここだ。


「もう来たのか。まだ神具ロンギヌスの手入れが終わってねぇよ」龍の死体の山の上で銃を磨きながらヘルは笑っていた。


彼の神具はロンギヌス。一度標的にされれば逃げ切ることができない必中の銃。弾丸には畏怖が込められたものが使われる。畏怖の運命と蓄積の能力の彼とは相性が良い。


「久しぶりに会えるというのは心が躍るのさ」リベリオンを重形態から軽形態に移行させる。この場所には敵もいないし、監視者の目も無い。落ち着いて会話することができる。


「その気持ち分かるぞ。お前が魔界に来た時からずっと疼いてたからな」


「覗いていたのか。変態め」


「その気になれば振り切れただろ」


「真価を発揮するまでもない」神具には主武装と副武装、そして切り札、奥の手が存在する。主武装は皆が知っている通りの性能。副武装は能力の無効化、運命の無効化がある。それ以外はまだ伝えられない。


「それに存在を消してもお前は見るだろう?」


「当たり前だろ。仲間だからな。ロンギヌスで追ってやるよ」ヘルはそういって銃を形態変化させ、スコープを覗き込んだ。


これがロンギヌスの副武装。形態を変化させることによりどんな状況でも打開することができる。形式は全部合わせて十三。切り札は使用者により変化するので不明。奥の手は神撃一葬。数日神具が使えなくなるが、上位の神以下の存在なら殺すことができる完全にぶっ壊れの性能。


そして背中に担いでいる鎌もまた神具。名をグングニル。性能は攻撃した者の全てを封印することができる。封印する量によって時間が決まるが一つであれば永遠の時間に閉じ込めることができる。


副武装は収穫。半径十キロメートルの負の感情全てをかき集め放つことができる。この波動に当たれば精神が止み、体がまともに動かなくなる。ヘルはこれを銃弾に変化させ撃ち込んでいる。


切り札は大収穫。奥の手は魂心冥世。魂と意識を冥界から呼び覚まし対象を強制的に封印に持ち込むことができる。これも使えば神具が使えなくなる。期間は百年くらいだったはず。


「ストーカーは勘弁だ」魔法空間から椅子とテーブルを取り出し、簡易的な話し合いの場を作る。今したいのは神具の話ではなく、この世界を終わりに導いている管理者についてだ。


「監視者で十分ってか?」にやにや笑いながら彼は椅子に座った。右手には銃、左手には酒が。どうやら長話になりそうだ。


「今も見られていそうでひやひやするよ」空は赤く染まり、日がもうじき暮れることを伝えている。その奥には憎悪の念に満ちた目が覗いているような気がした。


「魔界まで見る暇なんてねーよ」私の心配を取り除くように空に向かって銃弾を打ち出した。目を潰すのに自分が見る必要もないと言わんばかりの笑みを浮かべながら。


「そうだな,,,それよりも近況報告をしよう」簡単な食べ物を出し会話を始める。これ以上無駄話をしていたら一週間以上アライブに戻れなくなるからな。


「オーケー。何から話そうか,,,異界からの来訪者の話でもするか」彼の有用な話から使えない馬鹿みたいな話は想定よりも短く終わった。その分、私が話すことが多かったが。

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