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ブレイクソード  作者: 遊者
獣世界
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第七十三話 キマイラ

開戦早々キマイラは凍てつく棘を飛ばしてきた。速い!


「避けろ!!」悠遠眼で未来が見えているが遠い。庇う時間はない。ここは攻撃に転じれるように構えを取っておくか。


「分かってます!」彼はそう言うと地面を両手両足で掴み、キマイラに飛んでいった。棘よりも速く正確な動作で。


「隙を作ります!」~鬼牙~

キマイラの顔に小さな傷が付く。そしてそこから鮮血が飛び散った。小さな傷は彼が付けたのか。って感心している場合じゃない。生まれた隙をしっかり掴まないとな。


「ナイス!!」~狼現門~

錐揉み回転と突進を組み合わせながらキマイラに近づくと共に地面に門を創造していく。現状火力の出る技がこれくらいしかない。


「狼!?増援がきましたよ!」彼は俺の仲間と気が付いていないのか、顔を攻撃しながら逃げる好機を探している。


「その狼は僕の召喚獣です!安心して攻撃を!」短剣をキマイラに向かってぶん投げ、腰につけているボウガンを取り出す。近距離戦は向こうに任せて俺は出来ることをしよう。行動阻害に牽制。密集攻撃はもう少し戦い方が分かってからだ。


「了解です!」俺の言葉を信じてくれたのか、また攻撃を始めた。本当にこういうのに弱いな。


「があぁああ!!」キマイラは増えた攻撃の手に苛ついているのか、地面を前脚で砕きながら空に舞い上がった。後には凍てつく棘が突き刺さり、辺りに霜を下ろしていた。


「狼を使え!!」召喚した狼を梯子の様に空に伸ばす。キマイラにはまだ届かないが、あいつなら懐まで飛び込めるだろう。


「落ちろ!!」刺さった短剣に括りつけていた糸を引っ張り叩き落とす。


「いいんですか!?」彼は俺の返事を聞く前に狼の背中を駆け上がり跳躍をしようとしていた。


「当たり前だ!」クロスボウに矢を装填しながら狼を操作していく。すこし先の未来が見えるだけでもアドバンテージだ。狙いが格段にしやすい。


「オッケー!!」彼はそう言うと脚に力を溜めて空を飛んだ。それを分かっていたのかキマイラは蛇に大口を開けさせて毒牙で噛みつこうとしていた。


「それはばれてんだよ!」クロスボウから風を切りながら一本の矢が飛び出し、蛇の頭を捉え穿った。突然の出来事にキマイラは翼で空気を掴むことを止め、状況の把握に移った。


「え!?」急に止まるキマイラに呆気を取られた獣人は狼の群れの中に落ちて行った。予定がぶれたな。軌道修正をしないと。


はぁ、賢いモンスターは苦手なんだよ。人語を理解しているだとか、魔法を使えるんじゃないかって思考が巡って、躊躇してしまうことがある。


「でも今は殺しに行かないとな!」~闘争運命~

能力を発動させ、思考を戦闘だけに向ける。状況は五分、いや向こうの方が有利かもしれない。空と言う優位性。そして俺達の行動を阻害させることができる凍てつく棘。それにまだ翼と顔での攻撃が分からない。


「獣人!お前に託すぞ!!」もう一度クロスボウに矢を装填する。今度は動きを止めるために束縛のエンチャントが付与された矢。それも対炎、氷属性を持った特別な代物。


「分かりました!」獣人は狼の波を掻き分けながらもう一度攻撃の隙を狙っている。信じてくれるだけでこんなに戦いやすいんだな。


「がああぁあ!!」翼が大きくはためかせると棘と同時に毒が混ざった旋風が巻き起こる。


「そのまま行け!!」~吸気~

狼に棘を喰らわせ、毒を俺が吸い込む。解毒魔法も無いし、ポーションも無い。でも勝利を手に入れるにはこのくらいやらないと。散っていった狼にもこんくらいの雄姿は見せてやらんとな。


「がはっ!!」口から血が大量に出る。遅効性じゃなくて即効性の毒か,,,キマイラの枠に入っていてくれよ。


「っ!任せて!!」一瞬だけ俺の事を見た後、彼はキマイラとの間合いを一気に詰めた。


「待て!」遠くにいて聞こえないのか、それとも集中して聴覚が機能していないのか。指示が届かない。


「ぐるるる!!!」未来を見えていた俺はこいつが何をしようとしているのか分かった。口の中に魔法が溜め込まれている。そして二秒後には獣人を燃やし尽くしているということだ。


クロスボウか!?いや、矢が間に合わない。なら見殺しにするか?いや信頼して背中を任してくれた彼にそんな仕打ちは出来ない。くそ!考えている間にも時間が進んでいる。


「おらああああぁあ!!」獣人の牙が届くかどうか、その時に口が開いた。不味い。彼は死ぬ。解決策は?一つだけある。でも俺が無事かどうかわからない。


「関係ないな!!」~世界加速~

能力を発動させ体をキマイラと獣人の間にねじ込む。悩んで見捨ててあいつらが喜ぶか?神達は笑うか?喜ばないし笑わない。


「お前だけでも逃げろ!!」魔法が展開される前に獣人を地面に蹴り落とす。下には狼が待機しているから大丈夫だろう。心配すべきは俺だな。


「えっ!?」


「シネ」~クリムゾン・イグニス~

紅炎が俺の体を包み込み皮膚、筋肉を焼き尽くす。餓狼を纏っていてもこの威力。耐えきるのは不可能。だがここから離れれば地面にまでこの魔法が届くだろう。


「そんな!!」下から獣人の声が聞こえる。ここまで予想はしていなかったみたいだな。亜種との戦闘では死人が出るなんて当たり前。それに今回は即興のパーティー。死者が出ない方が難しい。


「地獄には,,,連れてくぞ,,,」クロスボウの残骸から矢を取り出しキマイラの体に突き刺す。これで動けなくなる。そこを獣人が殺す算段だ。もう少しこの世界を楽しみたかったが、運が無かったな。


「おおぉぉううぅぅん」咆哮するキマイラと地面に落ちて行く。ここまで場を用意したんだ。殺しきってくれなきゃ困る。


「すぐに終わらせます!!」~鬼刃爪~

獣人の腕が真っ赤に染まり、爪が長く伸びた。そして自由落下をする俺達を器用に攻撃して、キマイラだけが粉微塵になった。初めから使えよと思ったが、そこまでの隙が無かったな。


「がはっ!!」地面に落ちた衝撃と喰らった攻撃の多さで口から血が噴き出る。救いなのは傷口が殆どが火傷か凍傷で出血が少ないということだ。悪いことは死を感じないといけないということだ。


「大丈夫ですか!?」涙目になりながら獣人が駆け寄ってきた。


「いいや,,,でも、勝てたな」地面に倒れたまま口を開く。もう動くこともできない。


「傷が深い,,,!死なないでください」視界が揺れると動き出した。担がれているのか。視界はもう霞み過ぎて良く見えない。唯一生きている聴覚が周囲の情報を集めてくれる。足音が複数。それも重々しい物。追手かそれとも別のモンスターか。


「置いて,,,行け,,,」このままじゃ二人仲良く死んで終わりだ。本末転倒もいい所だろう。


「安心してください!僕の仲間が駆けつけてくれただけです!」俺の事を安心させるためなのか、それとも見栄を張っているだけなのか。不安な部分が多いが、音は一定の間隔を空けていて近づいてくるような気配もない。


「分かった,,,」そして俺は意識を手放した。次に目を覚ましたのはどこかの集落で、俺は重傷者として寝かされていたということだ。

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