第六十一話 帰宅
~ブレイク視点~
「その話は無理だな理由は王国に仕事が残っているし、何よりもアクセルとブランが大事だからこんな事件に巻き込みたくない」真面目な顔をしたベータと顔が見えないクロから話を聞き終わった俺はよく考えて断った。
「でも、俺の仲間が揃って罪を償えた時になら俺はお前のとこに行く」懐から対になっている転送石の片割れをベータに渡す。数は三個。俺とアクセルとブランの石。二人が行かなくても俺は行く。俺が生み出したことだから。
「あぁ、お前なら必ず来ると信じてる。それじゃ,,,」
「「また逢う日まで」」互いに拳をぶつけ、この場を後にする。俺が出るところはグロリア王国。ブランが出るところはマギア王国。ベータ達が出るのは世界樹。場所が違うのはブランがこの交差点に干渉してずらしてくれたから。本当に気の利く彼女だ。
光に包まれながら三人の姿を見る。三人は結束が固まったのか談笑していた。あの調子だと心配しなくても良さそうだ。ブランも此処で力と自身が付いたのか落ち着いた表情で転移を待っていた。
なんで俺とブランが一緒じゃないのか知りたいか?知りたいか!?知りたくなくても教えてやるよ!アイツは約束の時間で約束の場所で出会う方がいいからって断ったんだよ!俺についてくるのを!
なら俺が行けばいいじゃないかって思うだろ!?だろ!?でも俺は業務が溜まりまくってんだよ!だから無理なんだよ!クソ王が猶予をくれたけどそれはドラゴ・ケープに行って仲間に会うって言う簡単なものだから!こんなやばいとこに来る話じゃなかったから!
この世界は本当に良く出来ているよ。まじで、褒めたい。あー駄々こねるだけ無駄だな。適当に仕事を終わらせてアクセルとブランと会おう。そして調停者に拳を喰らわせてやろう。
「はぁ、業務を終わらせるか」光が晴れると目の前には見慣れた風景が飛び込んできた。山のように積まれた本に研究途中の薬品類。俺の仕事場で間違いないな。
「今やることは,,,」優先事項を確認しながら紙に書き起こしていく。俺は秘書という立ち位置だが、厳密には現場監督だ。戦闘の腕を買われた俺はギルドと提携して国の安全を確保している。
難易度の高い依頼は俺達上層部で終わらせたり、一定のモンスターの狩猟をした人物には報酬金を割り振り、生きがいにしてもらうようにしている。また退役した冒険者にも一定の額を普及している。
「これくらいでいいだろ」目の前には百枚を優に超える紙の山ができていた。これはやる事を金額、規模で区別しまとめたものだ。
雑用から重要事項まで書かれた優れもの。ここまですればプロティスから文句を言われなくて済むだろう。
あの王様は小言が多いし、俺に必要以上のこと求めてくる。運命が守護だがなんだが知らんが何とかなってるならいいだろって内心思っている。
「口にしないだけましだな」
「そうだよなぁ,,,ってプロティス!?」声が聞こえ、後ろを振り向くと俺の上司が立っていた。
「ブレイク、帰ってきたら連絡しろよ」笑いながら寄ってくる王の目は無感情だ。これは,,,やばい!!
「ちょっと待て、お前と俺の仲ならこれが冗談だってことが分かるよな?証拠に資料をこれだけまとめたんだぞ?な?だから手にかき集めている魔力を霧散させようぜ?」
「そうだな,,,仕事を増やしても良さそうだ」魔力を霧散させ次にしたのは魔法空間から今までに溜まった業務の紙束だった。
「勘弁してくれよ,,,」項垂れながら増えた仕事に手を付けていく。この王は俺のことを道具だと思っている節がある。前なんて百七十八連勤をしたことがある。お前らの労働基準法が真っ青になるだろ?ちなみに睡眠は三日に一回だけ。ポーションだけ飲んで目を覚ましていた。
それから三日三晩俺は業務に勤しんでいた。救いだったのは現場に行かなくてよかったということだ。もし現場に行くことになっていたら俺は薬物に手を出していたかもしれない。
「これで終わり~」机に突っ伏し休憩を取る。これで地獄のデスマーチが終わった。腕は疲労で上がらないし、視界は疲れすぎてぼやけている。本当に限界だ。早くベッドで横になって寝たい。
「でも体が動かん」俺の意思とは裏腹に鉛のように重くなった体は全く動かない。このままだと机と結婚でもしたのかと聞かれてしまう。
「あ,,,意識が,,,」俺はそう呟き、眠りについた。
次に目を覚ました時にいたのは俺の自室のベッドの上だった。傍には俺専属のメイドさんが立っていて俺の様子を確認していた。
「おはようございますブレイク様。作業場で寝ているところを発見しましたのでメイド総出で運びました」
「あぁ、悪いな。どうも疲れが溜まっているみたいでな」体を倒したまま褐色黒髪の美人メイドに礼を言う。何度も世話になっているから本当に頭が上がらない。
「慣れています。ブレイク様は自分の体調管理ができないということはこの数年で分かりましたから」
「ははは、今度から無いようにするよ。本当にごめん」水が注がれたコップを受け取りながら謝罪する。最近はポーションの不味い飲み物しか飲んでいなかったから助かる。
「それでは私はここで」彼女はそういって俺の部屋から出た。窓から差し込む光の感じからもう昼頃だということが分かる。腹も空いているし飯でも食べるか。
「起きたのか。飯でも食いに行こうぜ?」そんなことを考えていると死線を友に潜り抜けてきたレンが扉を開けて入ったきた。
「何を食べるかによるな。俺はパンが食いたい」
「俺は断然米だな。素朴な味が他の食材の良さを引き立ててくれるからな」
「おっと意見が分かれたな。こういう時はもちろんこれだよな?」懐から一枚のコインを取り出し、ニヤリと笑う。
「裏だ」
「オーケー」コインを上に撃ちだし手の甲でキャッチし手で覆い隠す。所謂コイントスというやつだな。些細なことから大事なことまでこれで決める。これが俺達のやり方。
「結果は?」レンが俺の手を避け確認する。
「表だな。パンを食べようか」肩をポンポンと叩き慰めてやる。負け続きだったかようやく運が傾いてきた。
「仕方ない。城下町に行ってパンを食うか」話しながら廊下に出る。他愛も無い話だけど居心地が良かった。帰る場所があるのはいいことだ。




