表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイクソード  作者: 遊者
時空各地
58/97

第五十八話  バグ

~バグ・ベータ視点~

「体がおかしいな」蝕まれる感覚には慣れているが今回のは違うみたいだ。外側からじゃなくて内側から何かが食い破るような感じだ。痛みは無いが不快感が残る。


「向こうが暴れているのか」こういう類が起こる時は大概LIB軸の俺が暴れている。勘弁してほしいと思う反面ありがたいと思う。自分が強くなれる機会を作ってくれているのだから。


「それよりも目の前の敵に集中しないとな」目の前には数百の帝国騎士が武装して構えている。理由は知りすぎた。ただそれだけ。


「おとなしくすれば苦痛は与えない」リーダーと思われる人物が槍を手にしながら前に出てきた。背丈は二メートルほどで筋骨隆々だということが鎧越しでも分かるくらいでかい。


槍はそれよりも大きく、先端には剣を小さくしたものが取り付けられていた。柄は黒く覆うように白い魔方陣が刻まれていて身体強化か、武器を強くするための物だということが素人の俺でも分かる。


「おとなしくしなかったら?」冷汗を垂らしなが問う。


「苦痛を味わいながら死ぬ」にやけながら言い放つ騎士を見て背筋が凍る。人の命をなんだと思っているんだ。


「どっちも殺されそうだから逃げるぜ」魔法を発動させ逃げる準備をする。


「待て!!」転移が始めるコンマ数秒、槍が目の前まで来ていた。額が熱くなるのと同時に俺は帝国のある大陸から別の大陸にワープできた。


「何とかなったな」血を拭いながら安堵する。俺は勇気があるわけでもないし、守りたいものがあるわけでもない。好奇心だけ揺れ動く気まぐれな人間だ。


「今は身を隠すことが優先事項だな」こんなくだらないことを思考している暇がったら自分の身を守らなければ。この世界は想像よりも残酷で救いが無い。それは三人を失った時に気が付いた。


岩を飛び越え、川を渡り、木々を掻き分けて拠点にしても良さそうな立地を探す。最近は俺を賞金首にする国が増えていて街にも迂闊に入れない。だから野宿だ。


「この辺でいいか」俺の前には大きな口を開けた洞窟があった。ジメッとしていて誰も寄り付かなさそうな所。しばらく身を置くのにちょうど良さそうに見える。


「問題は中にモンスターがいるかどうかだな」この手の洞窟にはキノコの怪物やゾンビが多い。そうなると話は別で一刻も早くここから逃げ出さなければならない。理由は国が総出で焼き討ちしに来るから。そうなると必然的に俺が見つかることになる。それだけは避けなくてはならない事項だ。


「ま、入れば分かるか」いつでも魔法を発動できるように魔力をかき集めながら松明を片手に進んでいく。本当なら光を出す魔法を維持できればいいんだがそんな器用なことは出来ない。


洞窟に潜る事小一時間。モンスターを警戒していたがそんな心配はいらなかった。それよりも下り坂の地面がぬかるんでいたりしていてそっちの方に注意を向けることの方が多かった。


「ここが最奥か?」能力で情報を収集しながらここに来たから間違いは無い筈だ。広さは縦二十メートル、横二十五メートルくらい。高さは数十メートルはあるだろう。上が見えない。壁はヒカリゴケで覆われていて程よく明るい。数日間過ごすには問題が無い。


「モンスターもいなさそうだしキャンプ地にするか」魔法空間,,,とは程遠い空間から物を取り出していく。まるで世界に穴が空いたような虚無の場所から想像したものがポンと出てくる。


この世界の欠陥ともいえる意味の分からない特異点。俺はこれをバグと呼んでいる。能力も収集から逾晉ヲに変わっている。読めないし今まで通りに使えているが気味が悪い。便利だから仕方なく使うが。


「それにしても今回のは長いな」体を蝕まれてから一時間以上経過しているのに収まらない。それどころか範囲を拡大しているようにも思える。


「俺もそろそろ潮時ってことか」俺はいろんな軸の終わりを見てきた。死期くらいある程度分かる。すこし悔しいような気もするし嬉しいような気もする。この世界で人間である俺が知れることは知り尽くした。


世界図書館に別の軸の存在。人間界の他に別の世界があるということ。それとは別種の異世界からの来訪者のこと、そしてそいつらが好き勝手やっているということ。


「バトンを繋いでやるか」逾晉ヲを使い、紙とペンを出す。今からやるのはメモの続きを書くことだ。俺みたいな存在がいるということを別の俺に知ってほしい。それが記憶の重なり『デジャヴ』や『夢』であったとしても。


「俺もやってくれたしな」消えかけている記憶をかき集めながら印象に残ったことを書き留めていく。いつか必ず役に立つということを信じて。


栄帝暦1200年9/17

今日は世界図書館という存在について別の俺から聞くことができた。自分でも集めていたが正直、眉唾物だった。でも俺の目を見て確信した。存在するということを。でも俺は謁見証を持ち合わせていなかったので断念。代わりに別の目標ができた。俺の意志を継ぐということ、そしてそれを繋ぐということを。


栄帝暦1202年13/15

俺は新しい世界を見ることができた。それは俗に魔界と呼ばれるものだ。行き方の手順をお前らに知ってほしいから書いておく。

一。極級の魔法を使い魔力を乱す。

二。乱れた魔力に向かって禁断の魔法を使う。

三。成功すれば魔界の門が現れる。しかし、失敗の場合が多いので代償は考えておくこと。成功させる条件は一気に極級の魔法を使うことだろう。


栄帝暦1010年3/33

この世界とは別の世界から来訪者が来ているということを帝国に侵入して知った。あいつらは帝国に雇われて自由にやっているようだ。生憎だが、この世界に俺がいる間は殺すという選択を取らせてもらう。理由は別の軸の俺が来訪者に殺されたからだ。今のところ手間取ることは無いが感触は本当に,,,何とも言えない。


栄帝暦1011年5/15

失敗した、俺は大きな過ちを犯した。三人を見殺しにした。本当に俺はクズだ。もしお前らが失っていないのなら守ってくれ。俺はもうどうでもいい。


栄帝暦1022年6/19

久しぶりに紙とペンを取ったが胸糞悪い。何もかも神の手の平の上で行われている。


栄帝暦1025年7/13

この世界の全てを知った。帝国が隠し続けていた不都合。神を殺せるのはお前等だけだ。時空図書館___


「もうだめみたいだな」体が朽ち、手に力が入らない。死ぬのは怖くない。あいつが破壊してくれれば解決するから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ