第五十五話 摩天楼
「中々腕が立つみたいね」彼女の右手から撃ちだされる光弾の間から声が聞こえる。まだ全力じゃないのか。流石は改造レイヴントだな。
「てめぇこそ。俺のフルスロットルまで耐えてくれよ?」体を地面に叩きつけ巨大機械を展開していく。主砲が四門。補助が七十七門。刻まれた魔方陣は数億にも上る。
「喰らいやがれ」魔力が極限まで圧縮された光弾を撃ち放つ。その速度は音を完全に置き去りにする。数は一秒あたりに百程。だが一発一発が超絶重たい。いくら改造されたレイヴントとはいえ当たれば機能停止にまで持って行けるだろう。
「くっ!!」光弾を撃ち込むのを止めて防御の態勢に入ったのが見えた。攻めるなら今だろう。だが本当に攻め込んでいいのだろうか。さっきまでは俺に一方的に攻撃をするくらいの苛烈な性格だ。
何か裏があるな。カウンターか、はたまた支援を待っているのか。前者だった場合近接戦をしなければ回避できるだろう。後者の場合時間経過で攻撃が開始され不利な状況になる。
どうしたものか。こうやって思考している間にも時間が進んでいく。一応何かあった時に対処できるように地面と接続しているボルトを外して離脱できるようにしよう。出力は多少弱くなるが許容の範囲内だ。
「ははは!!」煙の奥から笑い声が聞こえる。これは俺の,,,予想外だな。目の前が一気に赤色に染まる。これは完全に危険信号。これ以上ここに居たら死ぬ。
「縮め!!」機械を無視して後方にワイヤーを飛ばし後ろに下がる。瞬間俺がいた場所に巨大な手が振り下ろされていた。それは金属で出来ていて己の熱で水蒸気が上がっている。コンクリートで出来ていた地面は砕け散り、下に敷かれていた配線がむき出しになっている。
「そんなことまでしてんのかよ!!」完全な機械化に手を出しているなんてな。ここまで来ているのは俺達だけかと思っていたんだが帝国のことを下に見過ぎていた。
「これだけじゃないわ。もっと凄いものを見せてあげる」~エリミネイト・カーペット~
巨大な手が開き切り、地面に固定された。俺と同じような使い方だろうが出力が全く違う。俺のは自己完結型だが、向こうは他者の力を借りている。
地面から飛び出た配線から電気エネルギーを吸収しているし、周りに集まっている野次馬の様な物から管が出ている。危険だと思っていたが違ったみたいだな。
この攻撃を受けたら終わらせてやろう。こいつよりも上の技で。
「来い!!」今の俺なら体の一パーセントでもあれば蘇生可能だ。本体の脳は別の空間に保管しているし、ダブルBの協力もある。恐れることなんてない。視界情報が赤くなるのは二人が危険だと感知したに過ぎない。
「死になさい」真っ赤な閃光が俺に衝突すると体の端が崩壊を始めた。朽ちていく俺の姿を見て彼女はにやりと笑った。そうなるから改造は危険なんだよ。
「死ぬかよ。ば~か」崩壊した”はず”の肉体を彼女の後ろで再構築して首をひねる。改造されていようが急所は同じ。違うのはバックアップがあるかどうか。見たところこいつは捨て駒だから無いだろう。
そのまま地面に組み伏せて背中側から機械を構築していく。俺はレイヴントでもあり生物兵器でもある。生物兵器はそのままの意味。モンスターの能力を魔法で押し込んだ生き物のことを指す。
人間に使うとなれば禁術扱いだが、俺は機械だから関係ない。関係があっても俺は強さに飢えているだろうから戸惑いも無く受け入れるだろうけど。
俺の体に埋め込まれたモンスターはアンデッド。死なない肉体を持つ怪物。使用制限は一日に一回。一度だけ死を回避することができる。
「土産に見せてやるよ。これがレイヴントだ」~クリムゾン・カイザー~
背中には翼のような形をしたものが展開を終えた。狙いは摩天楼。ここまで来たら派手にでかいのをぶちかましてやろう。リーダーが望んでいるし、ダブルBからの制止も無い。好きにやらせてもらうか。
「ま,,,,,,,,,,」下から何か聞こえたような気がするが供給源が喋るなんてありえないよな。
ドオオオオオオォォォォンンンン!!!!
凄まじい爆発音と共に頭上からは建物を構築していたものが落ちてくる。煙があちこちからモクモクと立ちあがり、帝国内はさらに混乱し始めていた。
「アクセル、攻撃を始めるぞ」ベータの声が頭の中に響き渡る。機械を使って体力を消耗しているからもう少し後が良かったんだが、文句は言っていられない。俺の脳はこいつらだからな。
「行けるか?」
「当たり前だろ」
「「グッドラック」」俺の返答を聞くや否や二人はすぐに魔法を撃ちこんだ。それは金と銀が混じった天から斜めに差し込む光の柱。魔法と言うのを完全に理解した二人の到達点。
「ナイス」熱が冷めた機械を体に取り込んで摩天楼に向かって加速する。俺の能力は加速。色々改造されてどれが正しいのか分からないが有用な能力なのには変わりない。
敵兵を避けながら街中を走っていく。ばれそうになったときは迷彩を発動させてスルーする。そんな行動を続けること数分。俺は摩天楼に辿り着いた。
「破壊させてもらうか」ワイヤーを摩天楼の上に突き刺して昇っていく。こんな建物は上を壊せば勝手に崩れてくれる。まぁさっきの魔法で半壊しているんだが。
「させないぞ」側面を駆け上がっていると後ろから魔弾が飛んできた。また厄介なのが来たな。
「知るか」背中の機械を震わせ魔力を霧散させる。空中戦は魔力をどう使うかだ。俺みたいに事前に機械を刺しておけば落下しないで済むが、今回の奴はそうしていない。
「くそおおぉぉ!!」現に声が下に落ちて行っている。馬鹿は相手にしなくていいから助かる。この後も何人か戦闘を挑んできたが同じことを繰り返すだけだった。本当に帝国軍は学ばない奴が多い。
「帝国もこんなもんか」摩天楼の頂上に魔法を誘発する爆弾を仕掛けて離脱する。今回の任務はあっけなかったな。LIB軸が動いているからだろうか。ま、楽に越したことはないからな。
「起爆していいぞ」数秒のラグがあった後、摩天楼は崩壊した。この時にこの世界の時間が止まった。世界が恐慌に陥った。これで俺達の軸の活動は終わり。後は後続がバトンを繋げばいい。




