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ブレイクソード  作者: 遊者
時空各地
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第五十四話 レイヴント

~ネオ・アクセル視点~

「LIB軸は上手くやっているぞ」焚火に照らされた三人の顔を見て今の状況を教える。この軸はどの軸よりも未来だ。そして発展した文明が過去にありそれが崩壊していない。


空には魔力で動く機械が高速で飛び交い、地面は非常に静かで、それでいて荒々しい金属の塊が往来している。人々は刀剣を持つことを止め、機械で魔力を直接撃ち込む方法を見つけた。俺たちはこの人を傷つける機械をレイヴントと呼んでいる。


見た目、機能は多岐に渡る。お前らの世界で言う銃のような見た目の物もあれば、固定砲台、弓の形をしている物もある。


変わらないのは他者を傷つけるという点だ。レイヴントは戦場を一気に引っくり返すことができるし、能力の差も埋めることができる。


平等になった、と言えば聞こえはいいが、上層部の奴らはこれをよく思っていないのか、新型のレイヴントの開発を中止させた。それも禁断の魔法を使ってこの軸に直接。本当に馬鹿な話だよな。そのせいでモンスターにやられる人間は増えるし、冒険者を引退した奴らでたまり場を作ったり無法地帯だ。


それを波及しないように食い止めているのはブレイク、ブラン、ベータが立ち上げた非営利団体「アナザーエンド」俺はその命令に従って動く戦闘要員。レイヴントの製造が禁止にされただけで改造までは禁じられていない。


体をレイヴントにしていた俺は自分から体を改造してハイエンドに貢献している。体に時空観測装置を埋め込み、戦闘用の刻印が彫られたパーツを体に埋め込み、果てには超圧縮魔力発生装置を体に取り付け、半永久的に動けるようになった。


元々望んでいたこととはいえ、仲間にここまで容赦なく改造を施す三人は悪魔に見えた。でもそれだけ俺と言う存在が必要とされているのが分かって嬉しかった。この世界の俺もまた家族に排他的な扱いを受けてきたから。


「LIB軸が上手くやっても俺達に影響が来ない。未来が変わらないのか、それとも切り離されたのか」


「分からないわね。私たちが存在しているということ自体おかしなことだから」


「同感だ。この世界の構造には穴がありすぎる」三人は自分たちの考えを口にする。本来であれば未来人である俺達が過去に干渉すれば世界の強制力で無かったことになる。なのにこの世界ではそれが適応されていない。


「禁断の魔法による概念の消失,,,俺達の知らない領域で何か壮大なことが起きているのかもしれない」時空観測装置であらゆる時間、空間を覗き込んで情報をベータに渡す。俺の視覚とベータの視覚は繋がっている。リンクはどちらかが切断と言えば解除される。


「どっかの抵抗者もそんなことを言ってたな」


「となるとこの線も考えにくいな。切断」リンクを解除して焚火に薪を放り込む。俺たちが王国や帝国にいないのは非営利団体で世界から狙われているから。上層部は自分にとって利益になることしか望まない。今のような腐った社会が好きという根っからのクズたちが今頂点に立っている。


民衆から搾取できるだけ搾取する。枯れれば殺すか放置かの二択。還元なんて言葉はアイツらには無い。稀に民衆の声を聞いているがそれは酷くねじ曲がって届いている。


「この後の動きは?」アナザーエンドのトップに君臨する蒼髪の男、ブレイクに聞く。彼は仲間思いで利益のことは考えていない。そして世界が終わらないようにする。それが彼のモットーであり、生き方だ。


「アクセルは帝国に攻撃を。できれば経済崩壊まで追い込んでほしい。ブランとベータはアクセルの後方支援。俺は他軸に干渉してくる。何か意見は?無いみたいだな。それじゃあ、行動開始」彼の言葉で俺達は動き出した。


ブレイクは他軸に干渉するために時空間の間に入り、ブランとベータはディケンズ帝国の遥か情報にテレポートした。俺はレイヴントを展開して帝国に向かって加速を始める。


脚が熱で真っ赤に染まり、頭部が金属で覆われていく。目の前には単純化された視覚情報が薄緑のウィンドウで表示されている。この機能を作ったのはベータ。それを改良したのがブラン。アイデアはブレイクだ。


「行くぞ!」地面を大きく抉り前進する。背中に格納していた翼を広げ、周囲にある木々をなぎ倒しながら帝国を目指す。距離は数千キロメートル先。今の俺なら数分で辿り着くことができる。ブランの魔法にベータの情報処理。今の俺達には死角が無い。


「そのまま行って数秒経ったら右に直角に曲がって」頭の中にブランの声が響き渡る。ブランも俺の脳とリンクしている。恐らくベータが情報を集めてブランに策を練ってもらっているのだろう。彼女は俺達よりも先を生きているからな。


「了解」左側の翼の出力を高め最終的には爆発させる形で右に曲がった。今の俺にはこの高性能な機械を扱うことができないみたいだ。


「俺自体も改良しないとな」いくら文明が発達したとしてもパッシブや能力までが廃れたわけじゃない。便利になっただけで地力があれば他人よりも上に行くことができる。もっともそんなことをするのは楽じゃないから誰もしないが。


「帝国まであとどのくらいだ?」視覚を共有しているブランとベータに聞く。リンクされているかどうかは視界の右端に名前が書かれているかだ。


「あと一分もしないで到達するわ。戦闘の用意をしておいて。作戦は死なない程度に暴れて来い。あ、あと帝国に傍受されないようにリンクを切るから」なるほど。俺の任務はひたすらに暴れて帝国にダメージを負わせることだな。


「オーケー」地面に墜落しながら機械を展開していく。飛翔行動は慣れていない。着地する時は毎回砂煙を上げながら目標を捕捉している。爆音と飛び散る石が鼓膜と聴覚を通じて俺の脳に送られる。


「目標難易度は,,,normal。今の俺なら余裕ってことだな」ウィンドウには簡略化された情報以外にも目標達成の難易度が見える。その他は俺の欲しいときに欲しい情報が送られてくる。本当に良い仲間を持った。


「こちらベータ。アクセル、行けるか?」黒煙が上がる帝国を見ていると入電があった。恐らくは超高高度からの攻撃。さしずめブランの攻撃だろう。系統は炎魔法。オリジナルで爆発と火炎が混ざったもの。


「任せろ」体を回転させながら展開させた機械で街を破壊していく。空飛ぶ機械を打ち落とし、迫りくる帝国軍を破壊していく。こいつらはレイヴントの製造を禁止したくせに自分たちは抜け道を使って製造している。


どこまでも自分勝手な奴らだ。それに付き合っている民の頭も気が狂っている。もしかしたら異常を感じているのかもしれないが行動しなければ何も変わらない。俺はそんな奴を殺すことに躊躇いは無い。


「こちらディケンズ軍!未確認のレイヴントが,,,」上層部に報告しようとしている人間を積極的に殺していく。向こうも何か隠し玉を持っているのかもしれない。先手を打たれれば勝機は遠のく。最も俺の勝利条件は派手に暴れることだから関係は無い。心配なのはアナザーエンドの所在地を知られることだ。


「黙っとけよ三下」改造した右腕から赤い光線を放ち頭部を的確に撃ちぬいて戦線を前に前に進めていく。目的地は世界の貿易を支える摩天楼。


パァン!パァン!乾いた発砲音が周囲から聞こえる。しかし俺の外殻に当たるがダメージはゼロ。ここら辺で支給されている武器はたかが知れている。臆することは無い。音が聞こえた方向に向かって高出力の魔力弾を放つ。


「都市内で不正改造されたレイヴントを確認!銃弾が効かない模様!」取り逃がした人間が上層部とのコンタクトを取っている。俺としたことがこんな簡単なミスをするとは,,,他の軸に関わり過ぎたせいで腕が鈍っているな。ここらで元に戻すか。


「銃弾どころかレイヴントでも効かないぜ?」索敵を使い俺のことを報告している人間を見つけ地面に叩きつけそのまま絶命させる。そしておそらくまだ繋がっているであろう無線機に声を通す。


「俺の目標は摩天楼だ。来るなら来い」一方的に言い放ち無線機を握り壊す。これで俺の目標である帝国にダメージを与えるということがうまく進むだろう。もっとも誘導が成功していればだが。


「目標発見!撃退せよ!!」連絡が早いな。もう増援が来ている。俺の予想だともう少し後に来る予定だったんだが,,,まぁ、こいつらの運命はここで潰える。


「俺を倒す?馬鹿にすんなよ」~狼現門~

機械で改造された狼達を門の中から解放する。神界に行ったときよりも改良され、攻撃力、防御力が底上げされている。何よりも駆動に必要なエネルギーが減った。


「こいつらを倒してから言え」不敵に笑い狼を突撃させる。熱くなったエンジンを音を上げ、狼達が咆哮を上げ、戦闘の火蓋を落とした。


「じゃあな」戦場を狼に任せて摩天楼に向かうために機械を展開させていく。今回は目立ちたくないから特殊迷彩を施された金属板を呼び出し身に着ける。これで完全に景色に溶け込めたはず。あとは混乱に乗じて摩天楼を目指すだけだ。


街を破壊したおかげで帝国民はこの場所から逃げようと機械を動かしている。皆の考えが同じなのか機械はその場で止まり続けている。身体強化を怠らなければ走れたのにな。


「アクセル、俺達が魔法を撃ちこむ。その隙を逃すなよ」頭の中にベータの声が響き渡る。摩天楼に直接攻撃か。あそこは魔法障壁があるから魔法がかき消されるはずなんだが、伝えるということは何か策があるということなのだろう。


「オーケー」機械を飛び越しながら目標を定める。天を貫いてなお伸び続ける塔。人類が生み出した最高傑作。高さは一万メートルを超える。倒れない理由は魔法を機械による精密制御。反逆が起きても自動防衛装置が働き要塞に変わる。


「新型のレイヴント発見!総攻撃!」上空から敵の声と同時に爆撃が始まった。俺の隠密スキルが完全にばれている。どこかで情報が漏洩したか、単純に帝国の技術力なのか。


「殺せばいいか」迎撃用の機械を地面に広げ、敵の攻撃を吸収する。そして受けた攻撃をそのまま上空に向かって放つ。赤色の閃光が敵を包み込む。だが、全てを殺せたわけじゃない。何人かが生き残っていた。


「貴方みたいなレイヴントは初めて見たわ」その中でも攻撃を完全に避けきり接近をしてきた女がいた。簡易情報にはdangerそして名前の一覧にアルファと表示されている。こいつは危険だ。


「そりゃどうも」


「それでその力をどこで手に入れたのかしら?」彼女の顔が金属の板に包まれていく。俺と同じ改造レイヴントか。


「教えるわけないだろ」俺の右腕が地面に落ちると同時に戦闘が始まった。

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