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ブレイクソード  作者: 遊者
時空各地
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第五十三話 魔女と骸骨

~抵抗者***視点~

「調停者は本当にうざったいな!」目の前から迫りくる白い影をいなしながら愚痴を吐く。こいつらは並大抵の攻撃は効かない。パッシブやフィジカルだけでゴリ押してきた者たちはここで敗れる。この影は能力を応用してやっと傷が付く。


「お前等も操り人形でつまらなくないのか?」自分の体から骨を取り出して攻撃を始める。鎌状になった骨を振り回しながら接近してくる影たちを破壊していく。俺の武器は骨で出来た物で形は様々。剣もあれば盾もある。色物枠でフォーク、鋏がある。


「ふっ!!」錐もみ回転をしながら前に進んでいく。今俺がいるのは人類生活限界圏のその先、魔界と呼ばれる場所のさらに奥。龍界と呼ばれる場所の境界線。俺の目標は龍神に会うこと。そのためにはここを切り抜けなければならない。


察しの良い奴は気が付いているかもな。俺の種族がスケルトンであるということが。


俺は弱小な霊魂だった。それがいつの間にかたくさんの意識を集めるようになり、行き場を無くした魂たちが宿った。でも俺達には肉体と言う宿が無かった。あったのは冒険者の骸だけ。


その中で唯一自我を保っていた俺がその中に入り込み、きっかけを作った。そうでもしないと大量の意識と魂に窒息させられそうになったからな。そのあとは雪崩のように魂と意識が骨の中に入っていった。そうして生きる骨が出来上がった。


体を動かせるようになった時、俺は「またか」と思った。クソみたいな世界に嫌気がさして死んだって言うのにまたこのクソみたいな世界で生きることになるなんてってな。


虚空から聞こえる他人の声に精神が蝕まれ、死んでいない神経が空気に触れるたびに魂たちが悲痛の声を上げた。生き地獄。死んでも救われない俺を救ってくれたのがアベントイアだ。彼は世界図書館で俺と言う生物を確立し、苦痛から解放してくれた。


タダじゃないけどな。俺は抵抗者としてこの世界の上位者を倒すという使命を貰った。今はそれに従って調停者の勢力を一人で削っている。他にも上位者がいるが傍観に徹底している。ここまで好戦的で排他的なのはアイツくらいだ。


「でも、操られているっていう点で言えば俺も同じなのかもな」地面から鋭利な骨を発生させ、影たちを霧散させていく。俺の能力は骸骨。骨を自在に操ることができる。勿論俺の体限定だが。


「違うのは自分の意志があるかどうかだな」影に対して骨を飛ばす。突き刺されば爆発を、刺さらなければ反射をさせてもう一撃を狙う。


「,,,,,,,,,,」身を翻しながら骨を回避し、俺に接近する十字が刻まれた影は相当な手練れであることが窺える。今まで殺してきた影は俺の小手調べってことか。


「ぐっ!」振り下ろされた剣を骨で受け止める。が相当な威力を持っている。一瞬にして亀裂が走り粉砕した。これは舐めて戦えるような相手じゃないな。


「第二形態に移行だな」俺の本体は魂と意識が混合した部分。人間であれば心臓があるところだ。ここを重点的に守ることによって戦闘に一層集中することができる。


「でもお前は許してくれなさそうだ」形態変化しようにも攻撃の波は収まらない。それどころか激しさを増している。


「なら能力を使うか」先程散らした骨を影に向かって撃ち込む。破片だけでもあたってくれれば十分なんだが、そう上手くはいかない。全て軽々といなされ、カウンターを喰らってしまった。体の半分が一撃で持ってかれた。


「本当に強いな!」目の前が暗くなっていく。本当は使いたくないが強制的第三形態に移るか。


「お前はこれで終わりだ」~死踊髑髏~

骨が爆発的に増えていく。そしてすべての骨に属性が付与されてる。炎、雷は当たり前。風や暗黒、氷属性も持っている。何よりも強いのが全ての骨の色が白で統一されているということだ。これで属性の判別ができなくなって有効打に繋がる。


「,,,,,,,,,,」死から逃げるようにステップを刻みながら骨を避ける影はさながらダンス。だがそれも束の間の時間。影は俺の攻撃に一度当たると動きが鈍くなり、そこを集中砲火され、灰塵に帰した。


「しばらくは形態変化が使えないな」俺の形態変化は時間経過で使えるようになる。正規の手順を踏んでいるのであれば一日で使えるようになる。でも今回の様に強制的に変化させると一ヶ月は使用が不可能になる。


能力はそのまま扱うことができるが、強敵と出くわしたときは逃げることを余儀なくされるだろう。俺の体は不便だ。でもそんな今が楽しい。少なくともクソみたいな世界に呆れていた時よりも格段に。


「よう、ヤコウ。調子はどうだ?」一息ついていると空間を砕きながら一人の老人が目の前に姿を現した。


「ぼちぼちです。強制的第三形態を使っちゃたんでしばらくは戦力にならなさそうです」頭を下げて今の状況を伝える。上司にはそれ相応の態度を取らないと解雇されちまうからな。


「お前がそこまでするなんて調停者も本気を出し始めたか。どれ儂も本格的に動くか」老人はそういうと空間に亀裂を入れ、世界図書館に繋がる道を切り開いた。


「付いてきてくれ。竜よりも先にこっちの方が優先だ。君に紹介したい人物がいるんだ」手招きをされた俺は空間の切れ目に入った。視界が一瞬暗転し、光が差し込むようになると目の間が図書館に変わっていた。それはあまりにも大きく、どれだけの時間を費やしても読み切れないことが分かる。


「館長~この資料本気でまとめるんですか?」魔女の帽子に銀色の髪、金の瞳を持つ女性は気怠そうに山積みになった本を見て欠伸をしている。


「当たり前だ。しばらくは彼女の補佐をしてくれ。名前はテルミスだ」肩を叩かれてテルミスと呼ばれる女性の前まで体が動いた。


「俺の名前はヤコウ。しばらく世話になる」骨の手を差し出して挨拶をする。こんなぐうたらな人間がまともな挨拶をできるとは思っていないが、恩人が目の前にいるからな。体裁だけは保っておかなければ。


「よろしく~。君はスケルトンなんだね~。この資料の纏ま蛾終わったら研究させてよ~」ゆっくりだが骨の俺にビビらないで握手をしてくれた。見た目はやる気が無さそうなのに手には生命力の強さが感じられる。


「ということだ。ヤコウは戦線復帰できるまでここにいてくれ。ここから出る方法は知っているだろう?」


「えぇ。そこの黒本を開いて魔力を流し込めばいいんですよね?」祭壇の上に置かれている一冊の薄汚れている本みる。


「その通りだ。それじゃ後は任せたぞ」彼はそう言って別の次元に繋がる扉を開いて移動した。本当にやること成すこと規格外だ。


「それで俺は何をすればいいんだ?」補佐と言ってもやることは多岐にわたる。資料のまとめかもしれないし現地に行って確認する作業が必要なのかもしれない。


「これについての資料を探してほしんだ~」そう言われて渡されたのは一枚の紙だ。内容はワールド・ブレイクについて。ワールドという人物について。アクセル・オーバーの状況。軸の安定化をするためにはどうすればいいのか考えること、と言うのが小さい紙に所狭しと殴り書きされていた。


「了解。この本棚から探し出せばいいんだな?」彼女が頷いたのを確認して本の森の中に入る。この世界図書館はバカでかい。この中から限られた事柄や人物を見つけ出すのは至難の業だ。


「まずは同系列のワールドからだな」でも乱雑に置かれているわけじゃない。管理された状態で本が置かれている。ここにはたくさんの本棚が置かれているが頭文字で統一されている。


「こっから探し出すのか,,,」目の前にはワールドについての本が大量に置かれている。その数は兆を優に超えているだろう。


まぁ、ワールド・ブレイクには心当たりがあるから探しやすそうだな。ワールドという名前の奴も限られているから比較的簡単だろう。問題なのはアクセルと軸の安定化についてだ。


この二つは現在進行形で増え続けている。アクセルはLIB軸から分岐しているし、軸の安定化も遠くに行けば行くほど安定が難しくなる。


「やれることをやるか」禁断の魔法について書かれている本を世界図書館で検索し絞り込む。最もこの検索を使うには莫大な魔力が必要になる。透明の板に手を当てて検索を開始する。これを作ったのはドワーフだ。


アイツらは最大効率、誰でも手軽にを目標に快適な機械をどんどんと生み出している。それが人間に伝わらないのは人間という種族の悪意の深さについて知っているからだ。


「ワールド・ブレイクについての事象は過去百七十四件、最近は一回使われたみたいだな」検索に引っかかった本を取り出して読み漁る。そして得た情報を簡潔にまとめ、紙に書いていく。この書く作業も機械が行ってくれる。


「そして最近のワールド・ブレイクはアクセルが関わっているのか」今回の問題児がこんなところにもいやがる。こいつは俺達の最終兵器だが扱いが難しい。特にアクセルとブレイク。こいつらは一度動いたら止まることを知らない。


その点ブランやベータは歯止めが効く。無いよりも理性を保っている軸が多い。それに比べアクセル、ブレイクときたら精神崩壊を起こしているか、全てを殺すマンになっている。勘弁してほしい。


「その前の使用は世界樹戦争、その前は人魔対戦で四回。その前にワールドの封印に百五十,,,,,,,,,,ってこいつやばくねぇか!!??」本を投げ飛ばして声を上げる。何なんだこの怪物は。こんなものが存在していい筈がない。


どれだけの概念、能力、魔法を無くしたんだ?この世界はどれだけ失ったんだ?考えるだけで背筋が凍り付く。そして俺の頭が次のことを想像していた。テルミスが言っていたワールドとはこいつのことだと。


「でもこいつの文献なんて存在しないよな」ここまで厳重に封印されている人物だ。世界図書館に記録されているわけがない。されていたとしてもアベントイアが無理にでも改変しているはず。彼女はどれだけ無謀なことを調べようとしているんだ。それともアベントイアの指示の元か?


彼ならやりかねない。面白いからという理由で行動する。俺を助けたのも面白そうだったからだ。彼女がここにいるということはそういうことなのだろう。


思考を巡らせながら本を読んで紙に書き起こす。今俺が考えているのは軸の安定化についてだ。俺の考えじゃ軸の強さは背負うモノとか能力とか以前にその軸の意識の強さで決まるのではないかと考えている。


そして一番強い意識に統一される。神なんかがいい例だろう。あいつらは不変の存在だ。抵抗者もそうだな。完全に安定した意識がアベントイアなんかに選ばれて選択することができる。そこには過去も未来も存在せず、今というこの一瞬を生きている。


「どうするべきか,,,」本当なら並行世界同士がぶつかれば対消滅するはずなんだが、この世界はそうもいかないらしい。何度もワールド・ブレイクが発動しているし正しく作動していないのかもしれない。


「ま、こんな風に考えれるってことはこの線はありえないだろう」俺達が想像できることは消滅していない。例外はあるがこの認識は抵抗者の間でも共通だ。


「次にアクセルの状況だが,,,しばらくは様子見だな。にしても他の抵抗者は何してんだか___」本の山に埋もれながら俺は少しだけ眠りについた。半ば思考を放棄した骸骨。己の野心のために文献を読み漁る魔女。いまだに数を増やし続けている世界図書館。この世界はもう止まらない。終止符が打たれるときまで。

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