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ブレイクソード  作者: 遊者
神の世界
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第四十二話 神界9

「今日は僕の番だね。」アレスとの特訓が終わって一週間が経った頃、二人目の神がやってきた。あの時の疲れがまだ残っているが仕方が無い、強くなるためだ。ちなみにナギサとの特訓は無くなった。効率が悪いと皆に言われたから最後になった。


「内容は?」アレスは戦の神だったから内容は戦闘だった。というか戦闘に持ち込んだ。でも今回は違う。ツーフェイスは戦闘に特化している神じゃない。


「そうだね,,,スキルの強化でもしてみるかい?」彼はそういうと一冊の本を亜空間から取り出して、俺に渡した。


「これは,,,?」表面はざらざらとしていて色は褪せた赤色。題名も書かれていない薄汚い薄い本。


「君は盗賊なんだろ?この本に書いてあることを出来たら優秀な盗賊になるよ」促されるように俺は本を開く。中身は白紙。何も書かれていない。どういうことだ?そう思って俺はページを何枚もめくる。しかし、どのページにも絵や文字なんかは書かれていなかった。


「僕からの課題はそれを読むこと。スキルを習得したら見せに来て。あ、安心してね。これが終わるまでは次の神の特訓は来ないから」ひらひらと手を振って家の中に入ってしまった。


何も書かれていないのを読む、か。哲学か何かか。頭を使わないといけないな。大抵こういうのは炙ったりすると文字が浮き出てくる。やってみるか。


家の中にあった蠟燭を訓練場に持ち出して火を付ける。そして揺れ動く炎の先端で炙るようにページを動かす。くっ付いているからやりにくい。失敗したら燃えてなくなるだろうし慎重に。


「出てこないな」あれから試行錯誤してすべてのページを炙ってみたが紙のいい匂いが辺りに広がるだけで終わってしまった。これ以外の方法を試すしかないのか。


俺が考えられるのはこれくらいしかないんだが,,,そういえばこれはスキルを取得するための本だと言っていたな。もしかしたら盗賊関連のスキルを使えば見れるんじゃないか。モノは試しだ。やってみよう。失敗すれば別の方法を模索すればいい。


「千里眼、発動」本来は遠くを見るためのスキルなんだが、近距離でも使える。利点は細かいところまで見れるということ。欠点は視界が馬鹿みたいに狭くなることだ。


「おっ、文字が見えるな」予想通り盗賊関連のスキルでしか見れないようになっている。何々、千里眼の使い方について、本来は遠距離の偵察用のスキルだが、このように細かいところに注意を払うときにも扱うことができる。しかし視野が極端に狭まってしまうのが欠点だ。そこで新しく考案されたのが,,,


「次のページか」千里眼を発動させた状態でページをめくる。この調子ならすぐに読めそうだな。ツーフェイスは俺のことを甘く見ていたみたいだな。


ここからは千里眼だけじゃ見れないので自分で考えてみるとよい。その時に発現したスキルの使い方を書き残しておこう。


「って、なんで遠回りさせんだよ!!」地面に本を叩きつける。こういうのって取得の仕方とか書いてあるんじゃないのか!?なんで自分で考えるんだよ。もし発言して違うスキルだったらどうするつもりなんだよ!


「あと俺のこと見て笑ってんじゃねー!」窓から俺のことを馬鹿にするようにナギサが笑っている。今に見てろ。すぐに取得してやるかな。


これでも小さい頃から盗賊に憧れてスキルを得てきたんだ、このくらい屁でもないってことを証明してやるよ。


なんて豪語してみたはいいもののまるっきり進展がない。飲まず食わずで三日過ぎたがあれ以降の文字が全く見えない。ナギサたちは俺のことを見て笑っているし。ちょっとは心配してくれてもいいんじゃないですか?断食のレベル超えているんですけど。


ま、神は性格が悪いのが揃っているから仕方ないな。別の盗賊系のスキルを使うか。視覚に作用するスキルは千里眼以外に索敵と目利き。先に索敵を使ってみようか。ま、周りの情報をかき集めるスキルだから意味はないと思うが。


「え?少し読めるぞ」おかしい。索敵を発動させた途端、文脈はおかしいが文字が頭の中に浮かんできた。本は白紙のままなんだが,,,文字を敵と認識しているのか?残りの目利きと組み合わせるとどうなる。


「はっきりと分かるぞ!」目利きを使うとでたらめな文字たちが綺麗に並び始めた。これでやっと読めるわけだな。


ここまで読めたということは視覚に作用するスキルの応用に気が付いたと思う。これらに千里眼を組み合わせることができるようになれば一秒未満の未来が見えるようになる。やり方は自分でまた探し出せ。未来が見える理由も分かるはずだ。


「ここからまた白紙、か。でも今回はヒントがあったな」応用をすれば見えるということが分かった。千里眼と索敵、そして目利きの組み合わせ。頭にバカみたいな負担がかかると思うが慣れるしかないだろう。


「それじゃ発動」千里眼と索敵、目利きを同時に発動させ、白紙を見る。今までこんなことをしたことなかったからどんなことが起こるのか楽しみだ。


「いってえええぇぇ!!!!」頭が割れるように痛い!斧か何かで頭を叩き割られているような感じだ。そしてそれを捻じって脳みそを引きずり出そうとしている。それに目の前が真っ暗だ。これ死後の世界ってやつか!?もう死んでいるのに!?やめだ、やめ!


「死ぬかと思った」すぐにスキルを止めたが痛みが引かないでずっと残っている。痛いのは別にいいんだが、いや良くないか。手掛かりが何もつかめないってのが最悪だ。未来なんて見えなかった。それどころか視界が真っ暗だったんですけど。


「千里眼と索敵か目利きのどちらかを完全に制御できるようになったら三つ同時に発動させよう」こういうのは順序を立てて少しづつ進めていくのが一番効率が良い。楽して強くなるなんてことはないからな。


千里眼と索敵を使って近くを見る練習をして一か月が経った。まさかここまで時間が掛かるとは思っていなかった。でも目利きを使わなくても文字がはっきりと見えるようになった。ここまでくれば目利きを使っても大丈夫だろう。


「でもそれじゃ躓くのがこの本なんだろうな」何度も見返してボロボロになった本を見下ろす。これは俺が読んできた中で一番の曲者だ。このくらいのスキルじゃ読めないのがオチだろうな。


「今度は索敵を外して目利きを発動させるか」スキルを切り替えて本を見る。遠くを見るものを近くで見る感覚というのはまだ慣れない。


「情報が多いな,,,頭がいてぇ」本の内容がしっかりと入ってくるが、それ以外の情報も入ってくる。視野が狭いから何とかなるだろうと思っていたが、駄目みたいだ。ちょっとでも他のものが写るとその情報が頭の中に流れ込んでくる。


これを御したものが盗賊を名乗れるのだろう。これは先が長そうだな。


「はぁ」ため息を吐いて上を見る。この特訓が始まって一か月か。俺がゲkじゃ胃に降りる頃には何十年も経っているんだろうな,,,ってそれ不味くないか?俺がこの肉体でブレイクと会うとき、向こうは老いを感じ始めているんじゃないか!?


「焦んなくていいよ。神界の時間の流れはとてもゆっくりだからね」後ろからナギサの声が聞こえた。


「そうなのか?」振り替えると飲み物を二つ持ったナギサが立っていた。こういう時はすぐに答えてくれるから性格が悪いと思えなくなる。


「うん。こっちの一年は向こうでは半年くらいだから」指を折りながら彼はそう答えた。


「そうか,,,なら思う存分特訓できるな」渡された飲み物を飲み干して俺はまた本と向き合う。ここなら、アイツに追いつくことができる。背中を見るんじゃなくて横に立てる。絶対に俺は胸を張ってあいつと旅をする。そしてこの世界を___


そう志して三か月ほどの月日が流れた。もうこの特訓が日常になっている。ナギサたちと飯を食って特訓して飯を食って寝る。たまに休むけど。


お前たちの予想通りスキルの応用は上手くいっていない。ま、本来スキルは年単位で習得するものだから仕方のないことだ。ブレイクはバンバンスキルをと習得していたけど、アイツは例外だ。


そこまでの才の無い俺は地道に努力をし続けることしかできない。このくらいのことなら王国に居たときもずっとしてきたことだからな。落ちぶれた俺ができることはひたすらに剣を振るい、スキルを得て、パッシブを得て、戦うこと。


あの頃は血まみれだったけど、今は落ち着いて生活ができている。そう考えてみれば今の方が良い環境なのかもしれない。


「今日も頑張るか」千里眼と目利きを発動させる。最近は安定した出力ができるようになって入ってくる情報も制御できるようになった。調子がいいときは索敵も発動させている。今日は調子がいいから索敵を発動させて文字を読んでみるか。


何々、ここまで読めたということは盗賊スキルの基礎三つを完全に会得したことになる。これで免許皆伝と言いたいところだが、最後の課題だ。全てを出し切り、少し先の未来を見れるようになれ。今の君にならきっとできることだ。スキルの名前は悠遠眼。


「これで本は終わりか,,,」ぱたりと本が閉じた。あれ?今俺はこの本を完全に読んだのか?まじか!あとは未来を見るだけだ!どうすればいいのかも手に取るように分かる。今の俺ならできる!


「悠遠眼発動!」目の前に移るモノ全てが重なったように見える。これで少し先の未来だな。頭もこの情報量に慣れたのか痛くない。後は未来を見る部分だけの調整だな。


「千里眼と索敵の範囲を限定して、そこに目利きを発動だな」何をすれば限られた範囲の情報を見れるのかを理解した俺は修正をした。範囲を担当しているのが千里眼と索敵。時間の濃度を担当しているのが目利きだ。


そして今俺が見ているのは二つの世界。


今の世界と少し先の未来。未来と言っても一秒に届くかどうかの世界だが。何はともあれ未来を見ることに成功したな。後はツーフェイスに見せて合格をもらうだけだ。


「アクセル!悠遠眼の発動できたんだね!」走るナギサが複数に見える。初めて見るモノにはこうやって作用するんだな。出力を止めて今を見るか。ていうか普段は悠遠眼は発動させないでおくか。見にくいしな


「ああ。何とかな」笑いながら抱きしめる。こうやって喜びを分かち合える仲間がいるということは幸せだ。


「僕もそれ使えるって言ったら怒る?」上目遣いで聞かれたら回答は一つだけだ。


「怒るわけないだろ」笑いながら頭を撫でる。神だから使えて当然という思いもあるし、仲間だから嫉妬できないという思いもある。


「さてとツーフェイスに見せに行きますか」体に付いた汚れを落として家の中に入る。ナギサも俺の真似をして後ろを付いてくる。でもなにかそわそわしているような,,,


「もしかしてお前、俺の菓子を食ったな」口元に目をやると確かにそこには俺が作ったシュークリームのカスタードが付いていた。


「え!?な、何のこと!?」慌てて口元を拭うがもう遅い。つまみ食いをした奴は許さん!


「テラーとの特訓が終わるまでは菓子は無い」


「いやあぁぁ!!」痛々しい悲鳴の声が神界中に響き渡った。


なにもかもナギサが悪い。あのシュークリームは俺用の奴だと釘を刺していたからな。それを破るなんて極悪非道だ。このくらいの罰は当たり前だろう。


「中々に思い罰だね。アクセル」廊下を歩いているとツーフェイスが角から出てきた。ちょうどいいな。悠遠眼を見てもらうか。


「仕方ないですよ。向こうが約束を破ったんですから。それよりも、本を読み切りましたよ」悠遠眼を発動させて課題が終わったことを証明する。


「上出来だね。合格だよ」彼は笑いながら俺の横を通り過ぎる。その時に感じた何とも言えない臭いが俺の本能の何かを搔き立てた。何度も嗅いだことのある___


「次はテラーだな」拭いきれない違和感を持ちながら俺は部屋に戻った。次の特訓は上手くやれるのだろうか。窓から見える空は曇っていて黒い雲が遠くから流れてきているのが見えた。


「今日は雨が降るな」そう呟いて俺は本を開く。今まで余裕が無くて読めていなかった本たちだ、この機会に読んでしまおう。きっとその方がいい。


~アクセルが合格する少し前~

「これで俺のやることは終わったな」地面に倒れた神を見下ろして呟く。俺の手には大量の血が。そして短剣が握られている。


「そっちは終わったか?」隣で黄泉の門を壊している神に聞く。見た感じ傷が付いていないから終わってなさそうだ。


「もう少しだ。ツーフェイス、これ、本当にやるのか?」紅炎を纏った神が戸惑いながら聞いてきた。


「当たり前だろ。これ以上、アイツがいたら困るからな」俺が今からやることは門の破壊と再構築だ。アクセルを早く下界に戻してあげたいから,,,というのは建前で俺の目標のための前段階だ。


「でもこれをしたら秩序が,,,」


「いいから黙ってやれよ?」戯言を抜かす神の頬を短剣で斬る。この世界にもう秩序なんてものは存在しない。今更何を言っているんだ。


「わ、分かった」しばらくして門が完全に壊れた。時間が掛かってしまったが仕方ない。俺以外の神は全員使えないからな。こうやって活かしてやっているだけ感謝してもらいたいものだ。


「再構築をしたら教えてくれ。俺は戻ってるからな」最近はやることが多くて困る。アクセルに他の神に対しての牽制。天界との戦争に天使との抗争。神達の間に亀裂が生じている。


修復するためには力がいる。そのために俺はたくさんの顔を持つことになった。それはここに来る前から。そしてここに来てからさらに増えた。苦労ばかりしているのに顔にはしわが付かない。来るのはしわ寄せだけ。幸せは離れていくばかり。


「なぁ、ゼロ。俺達、世界を取り戻せるかな」空に手を伸ばす。かつて同じ運命を背負って仲間のことを思い出す。神に成れなかったあいつは今どこで何をしているんだろうか。世界図書館にも記録されいないバグの様な存在。


「開門」俺が過去に作った黄泉の門を開け、下界に降り立つ。正攻法じゃないが故、堕天した判定にならない。俺が見つけた世界の抜け道。


アイツはどこにでもいてどこにもいない。存在しているのに存在していない。世界が否定しているかのように。だが、今もこの世界に散らばっている自由はかつてアイツが手にしたものだ。


「俺たちはお前を肯定するために生まれた」再び決意を固め歩き出す。結果がどうであれ俺は、俺たちは取り返しのつかないところまで来てしまった。


「そうだろ?スクリーム」俺の目の前には禍福の結成メンバーである剣神が立っていた。相も変わらずみすぼらしい見た目をしている。


「なんだ?ツーフェイスじゃないか。てことはファスターも一緒か?」太刀を揺らしながら近づいてくる。旧友との再会程嬉しいものはない。


「いいや。お前に変革の時が来るということを伝えにな」でもその時間も短い。この方法じゃいられてせいぜい三分だ。急いで計画のことを伝えないといけない。


「変革、か。手掛かりが掴めたってことでいいんだな?」スクリームは不敵に笑う。この顔をするってことはやる気みたいだな。


「詳しくはお前が昇ってきたときにな。その時はフォーズもいるからよ」別れを告げ、門を開く。ようやく俺たちの苦痛を開放する時が来る。世界に還す時が来た。


~最果てにて~


「カオス!カオス!」ゼロは相変わらず笑って踊っていた。解放された彼は自由を使い世界中にばらまいた。悪意も善意も、好意も嫌悪も。憤怒を、怠惰を。


「遊ぼうヨ!??」世界はおもちゃ箱。あれもこれも暇を潰すための玩具。壊れないおもちゃなんてない。けど世界は壊れない。一生遊んでいられる。


「僕はどこ???ここ??」error観測不可!


ここに彼はいません。世界なんてものは否定されます。


ひゃひゃ!!


     おっおっ!!変身!??


革命の時が近い。バグはバグらしく潰されて死ぬべきだ。


「嫌だよ!!???」0と1の狭間で何を伝える!??僕は君たちが何者なのかを理解しているよ?


       見ているだけで何もしないということを。


      傍観者であるということを。この世界に来て分かち合おうよ。全てを。


なんでもできるから。errorerror信じるな。信じるな。かれは 存在しない。


 世界に登録されていない。番号が無い!


 no number 404 見つかりません。


世界線は纏まりません。解けました。 


                殺してください。忘れてください。


 彼は存在しません。信じられるのは自分だけです。


彼はゼロは存在しません。


ブレイクも、ブランもアクセルも神も存在しません。


ここにあるのは曲がった存在だけです。観測不可。観測不可。


不明瞭。


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