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ブレイクソード  作者: 遊者
神の世界
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第四十話 神界7

あれからナギサとの日々が続いた。料理は俺が担当することになった。俺はナギサの作るクソ不味そうな料理を食べるのが嫌だったのと、向こうが俺の作る料理のことを気に入ってくれたからだ。


欲しい食材とか、調味料はナギサに買いに行ってもらっている。なにせ俺は他の神と敵対してしまっているからな。


それ以外はナギサが担当することになった。とはいっても洗濯とかそのくらいだ。その他は互いが気になったことをしていくという感じだ。部屋が汚れているとかな。


初めの頃はよく迷ってナギサに見つけて貰っていた。馬鹿にしようとしているお前らは一回この家に来た方がいい。迷路みたいに廊下は伸びているし、部屋の数も多い。それに部屋と部屋が繋がっているから自分がどこにいるのかもわからなくなる。


今はそんなことは滅多にない。たまに特訓で疲れているときに意味の分からない部屋で寝ていて、ナギサが起こしに来るパターンはある。お腹空いた~って感じで。


俺はなんで迷子にならないか気になって聞いたら、慣れだと言われた。確かに自分の家で迷子になる人間なんていないもんな。俺も王国で暮らしていた時は迷わなかったからな。


でもそれは規則的に造られているからで、こんな不規則で気持ちの悪い所じゃない。こんなことを言ったらナギサに怒られるか。


訓練の方は順調って言いたいところだが、実際はだめだめ。あれ以来神力が上昇する素振りを見せていない。訓練もただただ戦うだけ。俺みたいな人間には嬉しいかもしれないが、普通の人間なら狂ってしまうだろう。


だから今の俺はナギサの専用主夫みたいな生活をしている。朝起きて飯を作って戦って、昼になれば休憩をするために炊事場のある部屋に戻って、そのあとは少し休んでまた戦って、陽が暮れる頃に訓練が終わって、風呂に入って飯を作って自由時間。


あと数日に一回は休息日が設けられている。効率よく神力を伸ばすために必要な事らしい。


戦いが無ければ普通の日常って感じがする。成長も、刺激も何もない、時間だけが緩やかに無くなっていく。それだけの日常を。


炊事場のある部屋はナギサの自室らしい。扉の上に何も書いていなかったから聞いてみたら僕の部屋だよと教えてくれた。いまでは共同の部屋に変わって、俺のスペースとナギサのスペースでせめぎ合いをしている。


俺も初めは別の部屋で過ごしていたが埃塗れだし、道に迷うし、ナギサが起こしに来るいしで面倒くさくなって自分の部屋にした。向こうも気にしていないようだったし、この調子で俺の部屋にする予定だ。


娯楽と言えば、戦いと会話だけと思っていたが、俺の興味を惹くような本がナギサの部屋にたくさん置いてあった。機械の内部構造の本だったり、これまでの歴史・京編とか。後は俺が捨てた魔法の本とかだな。


魔法の本には魔法のことだけではなく、それによる弊害のことやできるまでの過程なんかが書いてあった。こういったものは全てナギサの奉納品らしい。人間はナギサのことを水と知識の神として崇めている。自分たちは今までにこういったことをしてきましたとナギサに教えるために納めている。というのを本人から聞いた。


ナギサは「知っているから鬱陶しい。でも捨てる気も起きないからこうやって残しているんだ。そして今はアクセルの暇つぶしの役になっている」と残された本についての経緯も教えてくれた。


今は魔法本で魔法障害についての話を読んでいる。魔法障害。これは魔力の強いものに発現するものであり、古来から魔族の証として嫌われている。代表として角や体の一部を覆う独特の模様。あとは魔法の異常なまでの精密制御。


オーランはこれの影響を強く受けているのだろう。あそこまでの角はそうとうな障害になったはずだ。そして他者の追随を許さない圧倒的なまでの魔法。本人もそういっていたし間違いないな。


そして肝心なのが魔族という単語だ。これは魔力障害を持つエルフの言葉を指すようだ。人間界では魔族=悪というイメージが強いから見つかったらすぐに殺されてしまうだろう。


魔族も存在はしているがそれは魔界に住んでいる者たちのことだ。人間界に来るなんて物好きはそうそういない。いたとしても魔界独特の魔力の流れが無いから魔法なんて使えたものじゃない。文字通り世界が違うからな。体格で勝てるかもしれないが燃費が悪い。


きっとブレイクは頭が悪いからオーランを見たら殺してるだろうな。,,,,,,,,,,ってオーランがなんでブレイクのことを知っていたんだ?あの時に見せたあの顔を意味をようやく理解できた。


殺されたんだ。ブレイクに。でもいつ殺されたんだ?蒼髪になったのは王国の指名手配で確認した時。その時は確か二年位前だったか。


少なくとも二年前からオーランは神界に存在している。でもあそこまでの神力はもっと前から存在しているのだろう。噛み合わないな。何か大事な部分が抜けている。


殺されている前提で話を進めていても仕方が無いな。これは今度聞くしかない。でも殺されたのが間違いなかったら、オーランは何らかの手法で神に成った。それは短時間で強大になる程に。


考えたら結論が出るまで考えたくなるな。どこかで区切りを付けないと。オーランとの会話で聞いたのはワールド・ブレイクと神の成り方くらいで,,,


あ、ワールド・ブレイク。この魔法があった。これなら世界を変えた概念がある。オーランはエルフ。取り戻したのは言葉。それ以外にも取り戻したんじゃないか?


例えばオーランの失った信仰が帰ってきたとか。それなら神に成る条件も一つは達成している。推薦も帰ってきてるとしたら条件はクリア。納得は行かないが今はこれで満足するか。こんな考え事に耽っていないで準備するか。じゃないと,,,


「お腹空いたー!」


「ぐふっ!」やっぱりな。今日は休息日で丁度三時。おやつの時間だ。これを目当てにナギサは俺のことを探して突進をかましてくる。


「作るからよけろ」俺を押し倒して上に乗っかているのは紫の髪を下ろした美形の神様だ。こんなのが神だなんて信じられるかよ。


「早くしてよ~」俺の腕を引っ張て催促してくる。ここ最近は俺のおやつのメニューも似たようなものになってきているから勘弁してほしいものだ。どうやったら喜ぶのか考える身にもなって欲しい。


「はいはい。で何を食べたい?」こういう時は聞くのが手っ取り早い。新メニューでも思いつかない限りはこうした方が喜んでくれるし、確実。あと考える手間も少ない。


「甘いの!」でました。圧倒的にざっくりとした回答。これは今日何食べたいに対してなんでもいいよというレベルのものだ。これは俺の気に入るものなら何でもいいよというなんでもいいよだ。


甘いのも気に入る甘いのを要求している。俺が後作っていないのは指で数えるくらいしか残っていない。王国で学んだ料理はこういう時に役立てるものじゃないんだよな。


「分かった。少し待ってろ」本を元の位置に戻して炊事場に向かう。今日は何を作ろうか。パンケーキも作った、ショートケーキも作った。他に何か甘いものは無いか,,,簡単に、そして早く作れるようなもの。


「綿菓子でも作るか」砂糖を熱して液体にして、回転させ糸のようにし、それを棒に巻き付けていく。これならすぐにできそうだ。


「魔法で砂糖を温めるか」フライパンを魔法で熱して、その上に砂糖をかぶせていく。焦げないように火力を調整しながらかき混ぜていく。焦げたらプリンでも作るか。時間が掛かるから明日以降の話だけど。


「風魔法で飛ばして,,,」どろどろになった砂糖の中心に向かって回転する風魔法を発現させる。吹き飛んでいく砂糖を取りこぼしが無いように棒で巻き取っていく。部屋が汚れたら掃除するの俺だしな。


基本ナギサは掃除というのをしない。汚くなったら水で押し流すだけ。俺が来たときは部屋の隅にゴミの山ができていた。四角い部屋が丸に見える不思議な現象。


なんて話をしている間に綿菓子ができた。見た目は不格好だが、色も赤色を着色したし、文句を言われるなんてことは無いだろう。言われたら作んないぞって脅せばいいしな。


「できたぞ」顔一つ分はあるだろう菓子をナギサに手渡す。俺の分は作っていない。魔法がうまく使えないのもあるし、早く本を読みたい。知識は無いよりもあった方がいい。生き方にも戦闘にも大きく影響するからな。


「ありがとう」笑顔で受け取る彼は見た目相応の顔をしていて愛でたくなってしまうほどだ。ま、俺のことを痛めつけてくるからそんなことはしない。そもそも俺の師匠だしな。そんなことをしたら不敬だ。


「それじゃ、俺は本を読むからな」


「駄目」横を通り過ぎようとしたら止められた。


「話し相手が欲しいのか?」


「そう!よくわかったね」腕を引っ張られソファまで連れて行かれる。こうなるから嫌なんだよな。休息日の三時は。


「それなりの時間一緒だからな」ため息を吐きそうになったが押し殺して座る。


「困ったら頭を掻くよね、アクセルは」指摘されて気が付いた。俺は頭を掻きながら座っていた。


「困ってねーよ」隠す様に俺は下を向いた。


「そうなの?じゃあ話してもいいね。今日さ,,,」ナギサとの話は寝るまで続いた。これだから嫌いなんだ。でも案外悪くない。振り回されるってのも。そしてこうやって世話をしている自分も。


「結局読めなかったな」寝息を出し始めたナギサを横目に読めなかった本たちを見る。今日読むはずだった本たちの山を。次の休息日もこんな風になるんだろうな。何か対策を考えないとな。


そんなことを思いながら、毛布を蹴飛ばして腹を出していたナギサに毛布をかけ直し、俺は自分で作ったベットの上に横になった。どうか明日は神力が上がりますように。


俺はそう願いながら目を閉じた。隣からは寝息が。外からは虫の音が聞こえる。風に揺られて風鈴が涼し気な音を出している。京の雰囲気は落ち着く。


何故だかわからないけど、故郷の様な感じがして。王国じゃなくて俺は大和国の生まれだったのかもしれない。


「おはよう!」いつもの様にナギサに起こされて目が覚める。時間にして朝五時。昨日寝たのが日付が変わるくらい。結局あの後は寝れなくて寝落ちするまではナギサとの談笑を楽しんでいた。


「あぁ、おはよう」上に乗ったナギサを体から降ろして体を起こす。なんでこいつは俺の上に乗るんだか。


「今日の朝ごはんは何?」笑いながら話しかけてくるこいつは俺の心情の一つも理解してないんだな。まじで愛でたいこの姿。これを堪えるだけで精いっぱいだって言うのに。


「サンドイッチでもいいか?弁当にもできるし」戦闘が終わった後にここに戻って来て、飯をまた作るというのは面倒くさい。


「美味しければなんでもいいよ!僕はその間に買い物行ってくるから」手の中には一枚の紙が握られていた。昨日の話の中で俺が欲しいと言ったものばかりが書いてある紙だ。


「行ってら」玄関まで見送るなんてことはしない。面倒だし、そんなことをしている暇があったら飯を作るか、本を読む。


「今日は肉と野菜のサンドイッチとコーンスープで終わらしてもいいな」サンドイッチは昼までに無くなるとしても、コーンスープは晩までもつだろう。そしたら献立を一つ考えなくて済む。


作る物が決まった俺は貯蔵庫から鳥の肉と葉野菜を取り出す。調味料は棚の中に乱雑に置かれている。その中から必要なものを取り出していく。今回使うのは塩と胡椒。醤油に酒。後は片栗粉とみりんと砂糖。ドレッシングは俺が作った専用のものがある。


「料理開始」鶏肉に包丁を入れて厚さを均等にしていく。これをしないと矢木村ができるし、生焼けの可能性も出てくる。腹を壊すのは問題ないが、味に影響が出るのは問題だ。これはしっかりと行う必要がある。


均等になったら肉に塩と胡椒をまんべんなく振りかけて片栗粉を付ける。この時に余分な粉を落とすことで粉っぽさが無くなる。


フライパンの中に油を注いでいく。今回は揚げ焼きにする予定だから多めに入れる。皮全体がつかるくらいが目安だろう。


そうしたら下ごしらえが終わった鶏肉を熱していない油の中に皮目を下にして入れる。熱された状態で肉を入れると皮が縮んでしまう。


「ファイア」魔法を使いフライパンを温めていく。火力は中火。皮に軽く火が通るまでの間にタレを作っていく。


適当な器に砂糖を大匙二杯入れ酒とみりんを同量入れる。醤油は大匙三杯くらいが俺的には好みだ。ここら辺は自分で作って試行錯誤してくれたらと思う。


皮面が焼けたらひっくり返して火が通るまで面倒を見てやる。適当にやっても構わない。そこにプライドが無いのなら。


焼けたら油をふき取ってタレをばら撒いて完成。後はパンに挟まるようにカットして、野菜と一緒に挟む。コーンスープは牛乳とトウモロコシを適当に入れたら完成だから割愛。


後はナギサが帰ってくるまで読書でもしているか。昨日は全然読めなかったしな。栞を挟んでいたページから読み始める。魔法障害の次は魔力についてか。


魔力はいろんな研究がされているけど全容を把握できていない不思議な存在だ。身近に使っているものが一番知らない。電波みたいなものだろ。知らんけど。


「こんな研究まであるのか」魔法に興味の無かった俺がのめり込むくらい面白い内容がぎっしりと書かれていた。中でも興味を惹いたのが魔力は生命エネルギーの延長線にあるという研究だ。


この研究を進めた人間は加齢による魔力出力の変化についてまとめていた。歳を重ねていくにつれて全盛期から遠ざかっているというもの。体にも同じことが言える。筋肉が衰えて戦えなくなるとか、。生活が困難になるとか。


生命エネルギーが一番多いのは二十歳前後。そのあとは緩やかに落ちていくということ、そしてそれを防ぐ方法は無いということを書いていた。本当はもっと小難しい言葉を並べているんだが、俺の理解力が足りないのと、魔法についての知識が少ないからこんな風になってしまった。


「面白いけど、眠たくなるな」難しい言葉を並べられると瞼が重くなる。これでも王国では名門とされている学校に行っていたんだけどな。あの頃とは違うんだな。


こんなところで時間の流れを感じながらナギサの帰りを待つ。本は魔法の本から神についての本に変えた。あのまま魔法の本を読んでいたら寝落ちしてしまう。


「神にもいろんなのがいるんだな」数百を超える本に圧倒されながら読み進めていく。そこには八咫烏の名前やオーランの名前もあった。


「なんだこのページ?」パラパラとめくっていくと、汚れていて文字が全く見えないページを見つけた。かろうじて分かるのは熊の様な見た目をしているということだ。


もしかしてキンカムイについて書かれているのか?信仰され無くなったから本からも姿を消したのだろうか。それとも何か別の理由でこうなっているのかもしれない。


神に成れない俺には関係ないな。推薦ももらえないし、信仰も無いしな。二人を生き返らせることができるのはもっと先か、できないかもしれない。


「辛気臭い顔してるね。アクセル」


「お帰りナギサ」声を聞いて俺は帰ってきたことに気が付いた。そして空が赤色に染まっていることも。もう夕方か。これじゃ用意したサンドイッチも無駄だな。京の晩御飯にするか。


「その顔は何か諦めた顔だね」核心を突いてきた言葉に胸が締め付けられる。あそこまで覚悟したことが達成できないことに対しての無力感をまた呼び起こされる。


「仕方ないだろ。俺には力が無いんだからな」笑いながらナギサの顔を見る。


「そんなこと言わない。カムイもわすらるる神だから」ナギサはカバンの中から甘いものを取り出して俺の口の中に詰め込んだ。わすらるる神って何のことだ?


「信仰が無くなった神のことだよ。それも意識的にね。仮にも神なのに紙にしか姿を留めないのってかわいそうだよ」ナギサは俺が呼んでいた本を取り上げてキンカムイが書かれているページを開いた。


「キンカムイ。彼の真名はキムンカムイ。大和国の遥か北の土地で信仰されていた神なんだ。もうそんな土地は無いし、信仰していたら迫害されちゃうんだ」子供を見る様な目でカムイの絵をなぞった。


「でも熱狂的な信者が今もなお、語り継いでいるんだ。だから彼は神界に存在できる」ナギサはそういって本を閉じ、本棚に戻した。


「そうか。でも前は神だったんだろ?力があって信仰されていた。俺とは正反対じゃないか」俺は苛立ちを隠せなくなり、強めの口調でナギサに問いかけた。こいつに俺の何が分かるって言うんだ。大事なものを失くし、取り戻そうと必死にもがいて、やっと見つけた希望も潰えた俺のこの感情が。


「そうだね。でも君は今を生きているし、君のことを覚えてくれてる人がいる。今を生きている者が一番強いんだ」俺の隣に座って慰めるように頭を撫でた。こいつは本当に何も俺のことを分かっていない。そんなのは慰めにもならないし、俺の傷をさらに抉るだけだ。


「だから特訓して下界に降りよう。そして力を付けて昇ってきて。その時は推薦をしてあげるから」ナギサは俺の腕を引っ張り外に出した。


そこには見たことのない神達が三人並んでいた。俺のことをまじまじと品定めするように見る神が一人。談笑を続けているのが二人。何よりも目の前にいる神達は敵対心を持っていなかった。


「今日から特訓を手伝ってくれる神達だよ。人数は少ないけど」笑いながらナギサは神達を紹介してくれた。


一人目はグロリア王国でも信仰されている戦場の神ことアレス。奇しくも先代の王がこの名前を使っていた。今思えば神の名を使うなんて不敬だな。見た目は重厚な全身を覆う鎧で背中には大剣と戦斧を担ぎ、腰には短剣と投げナイフをぶら下げている。左腕をマントで覆っていてよく見えないが、クロスボウか、魔方陣が刻まれた腕当てを付けているのだろう。傷が無い鎧はまさに連戦連勝、百戦錬磨、無敗を感じさせてくれる。


背丈は二メートルを超える巨体で鎧の大きさからも見て取れるように筋骨隆々なのが分かる。彼の能力は兵器と理解。この二つを駆使して戦場を意のままに操るそうだ。


二人目はツーフェイス。緑のマントの下に黒のライトアーマーを付けている。背丈は俺と同じくらいで武器は無し。彼の能力は二重と変装。二重は文字通りであらゆるものを二つにする。そして変装は殺した相手になることができる。この時に変装した対象が持っていたスキル能力を半分だけ引き出せる。


彼の戦闘スタイルは状況に応じて姿を変えて最適な能力を完全な状態にして戦う。今は素の状態らしいがいつでも攻撃歓迎と言わんばかりに魔方陣を描いて談笑をしている。


最後はテラー。全身が黒いヴェールで包まれていて顔が良く見えない。だが時折吹く風で見える瞳は青と赤のオッドアイ。それも不気味に光っている。俺のことを品定めしていたのはこいつ。武器は裾に隠している暗器という物らしい。それには遅効性の毒が塗られており、段々と弱らせていくそうだ。


能力は恐怖と追跡。対象者の一番の恐怖体験を引き出すことができる。またそれが事象や生物である場合同じものを引き出せる。追跡は一度能力をかけた相手をどこに居るのかを何時でも分かるという。


「以上が今後、君を特訓してくれる神達だよ」正直戦いたくねぇな。戦の神に変装の神。そして恐怖を追体験させてくる神。ナギサの水が可愛く見えるくらいだ。


「仲良くしようぜ?」差し出されたアレスの手を握る。右手には何も装着されていなくて温もりがあった。それに幾千もの古傷が重なり、岩の様な感触だ。


「僕とも仲良くしよう」ツーフェイスは笑いながらお辞儀をした。そんな言葉とは裏腹に手には魔力が渦巻いていた。


「恐怖は妄想?それとも記憶?あなたの恐怖の根源が知りたいわ。よろしくね」テラーはそんな俺たちを後ろから体を揺らしながら見ていた。はっきり言ってこの中で一番怖い。なんでナギサはこんな怖い神を連れてきたんだよ。


「よろしくお願いします」三人の神に礼をする。これから俺の師匠になってくれる神達だ。無礼の無いようにしないとな。あ、ナギサは別。あいつとは対等な関係であることを契約しているからな。


「それじゃ、今日は僕の家でご飯を食べよう。アクセルが作った昼食の余りがあるしね」この日から俺の特訓はさらに厳しさを増した。時間の感覚が無くなるくらいに。

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