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ブレイクソード  作者: 遊者
神の世界
36/97

第三十六話 神界3

「神助け?具体的には?」京に着いた俺は三人に聞いた。何をすればいいのか聞かないと俺は動けないからな。


「ん?そんなもん自分で調べな」


「私も京を修復しないといけないので」二人には軽くあしらわれ、別々の道に行ってしまった。やはり頼れるのか烏しかいないだろう。


「なぁ烏。何をやればいいんだ?」隣を飛んでいた烏は神妙な顔つきをして黙っていた。そうかい。今回ばかりは自力でやれってことか。


「自分でじっくりやるからお前も此処でゆっくりしといてくれ」俺は烏と別れ、京を探索することにした。今はまだ、スキルも魔法も使えないが、使える様なきっかけが転がっているかもしれない。


それが神助けに繋がるとしたら一石二鳥、いや一石三鳥になるだろう。とりあえずは大通りに出ないとな。町並みが綺麗で、かつ碁盤の目みたいになっているから広場を探す方がいいかもしれない。


中央に行くとしたら、端っこが見えている方の逆の方がいいだろうな。端の方は京から出てしまう恐れがある。そこからは徐々に向きを修正していって真ん中に着く。良い計画だな。


「向き的にはこっちの方か」地平線が見える方は何もないだろう。建物がある方が神も居るだろうし、万が一、迷子になったら道を聞けばいいからな。ま、話しやすい神様がいるのが前提条件だけどな。


「俺たちの世界とそこまで変わらないんだな」建物を見ながら俺は中心に向かって歩いて行く。木でできたものが大半で素材の味が生かされている。木目自体が模様として使われていたり、蔦が壁を這ってカーテンのようになっている。


「お前か?烏の暴走を止めたのは?」歩いていると、前の方から歩いてきた神に話しかけられた。見た目は俺よりも小さくて、青い髪を伸ばしていてぼさぼさ。眼帯をしていて両方の目は見えないが、微かに覗くことができる隙間から黒い瞳が見える。服装は袴の様な物で体の動きが良く見えない。


「一応。でもカムイとオーランがいなかったら無理だった」


「大したもんだな。俺の名前はサーペンティア・ウルグリム・スピアノール。仲間内じゃサウスと呼ばれている」神は自己紹介をしながら服の中に隠していた蛇を抑え込んでいた。


「お前、神に成りたいんだろ?俺も推薦しとくぜ」


「なんでそのことを?」見たことも無い俺のことを推薦するのは意味が分からない。


「ん?あぁ、烏とダチでな。お前のことは知っていたさ。他の奴らもお前に会いたいらしいからな。俺についてきてくれ」サウスはそういって歩き始めた。俺も慌ててついて行く。見た目よりもずっと早く歩く男だ。駆け足でも間に合わないレベルだ。


にしても烏とつながりがあるのか。しかし、なんで烏はサウスと連絡が取れていたんだ。神界と交信が取れる能力でもあったのだろうか。そんな素振りは見せていなかったはずだ。なら一方的な観測は出来るのだろうか。だとしたら納得がいくな。だから烏はこのことを話していなかった。強引だが、こうすれば話が合うな。


俺がサウスと行動し始めて数時間経ったころ、初めて路地裏の中に入った。今までは表立った太陽の光が当たるところだったが、影になったところに入るのはカムイと来た時以来だった。


はっきり言って気が進まない。至る所に罠が張られていて試されている感じがして嫌だ。でも進めないと推薦がもらえないから行くしかないんだが,,,


「もう少しで着く」サウスはそういうと、底の見えない穴の中に入っていった。冗談だろ?こんなところに入る勇気なんて俺には無いぞ?


「来ないなら連れてくぜ?」穴の中から無数の蛇が現れ、俺のことを覆い、穴の中に落ちた。この状態じゃ受け身なんてまともにとれないぞ。


俺は流れのまま落ちていく。長い長い間落ちた先にあったのは三人の神と、自然が織りなす不可思議な空間だった。


島は空中に浮き、木は空に向かって根を伸ばし、流れの無い水は不規則に波を作り波紋を生んでいた。そして何よりも目を引くのが鳥居の先に座っている三人の神だ。


一人目は白髪の髪を背中の真ん中あたりまで伸ばしていて糸目の女性。周りには草が多い茂り、守るように固まっていた。服装はワンピースの様な物で日差しから腕を守るようにレースの様な物が付けられていた。


二人目は黒い髪の短髪の男性。手には包帯が巻かれていて武闘家を彷彿とさせる。服装は緑色の短パンに白いシャツ。身長は俺よりもやや大きいくらい。目線は俺に合わす様にかがんでいて、見える瞳は緑ががった黒い目をしていて切れ長。


三人目は茶色い髪の中性的な顔立ち。この中で恐らく一番美しい。でも白髪の神は目が開いていないから順位が変動するかもしれない。身長はこの中で一番小さくて幼く見える。だが俺よりも歳を食っているのは間違いないだろう。それよりも見た目の話だ。アメジストが付いている小さい杖を片手に持っている。


「右から順に紹介しよう。白髪の女はローリン・オンリー。リンって呼ばれている茶髪の奴はジュベナイル・オニキシテリア・ブライントイア長いからナリアって呼んでる」紹介を受けた二人は俺に手を振ってくれている。歓迎されているのだろうか。


「最後に黒髪の男。こいつの名前は,,,」


「俺の名前はアリカ・アカバネ。よろしくな」サウスの紹介に被せるように言葉を重ね、手を出してきた。握手をすればいいのだろうか?


「俺の名前はアクセル・オーバー。よろしく」差し出された手を握り、挨拶をする。こうやってフルネームで自己紹介したのはいつ以来だろうか。ブレイクにもこうやって挨拶していないしな。


「お前のことは知ってるぜ。八咫烏を召喚したんだってな」アリカは笑いながら座っていたところに戻った。


「私たちは全員推薦をするわ。だから残りは三人ね」リンは指を折りながら数えてていた。ここにいる全員が推薦するなんて何か裏でもあるんじゃないか?


「そんなに疑わないでよ。君の活躍を烏越しにみてたんだから」ナリアは杖をペンのように手の上で回してなんで俺のことを推薦しているのかを教えてくれた。


しかしそんなんで推薦するものなのだろうか。こんなに簡単なことで推薦されるとしたらみんながみんな神に成れているはずだ。試練に関しても何回も受けられるような気がする。


理由は二つ。死んで転生を繰り返すということがこの世界のシステムであるということ。そして烏のように暴走しても今回のように止められる奴がこの神界にいるということ。


なのになぜこんなに神が少ないのだろう。やはり何かが引っかかる、オーランのあの反応、そしてカムイたちがひた隠しにする内容。本当の条件は一体なんだ?


「なんで神が少ないのかって顔してんな」サウスは俺の考えていることを分かっているように笑いながら肩に腕を回してきた。


「教えてやるよ。鳥居の中に入ってこれたら、な」サウスはそういって鳥居の中に入っていった。


刹那、鳥居が赤色から透明に変わり、そして緑色に変化して。そして力の無いものを拒むように凄まじいオーラを纏い始めた。


「なるほどな」これを渡らないと教える価値も無いってことね。それに推薦も取り消されるだろう。しかし、神力の無い俺が通れるのだろうか。


諦めだけならだれでもできる。でもそこで終わるならたかが知れている。エルザが良く言っていたな。いつも励ましてくれるのは彼の歌だった。今回も助けられてしまうな。


「絶対にそっちに行ってやるよ」体に残っている力を意識して目の前の鳥居と、神を睨みつける。向こうにいるのは渡れないと理解しているのか笑いながら談笑をしている。


舐め腐った神達を俺が驚かせてやる。人間の力を、俺の覚悟の大きさを。全てを得るために全てを手放す不屈の精神をな。


「うおおぉぉぉぉ!!!」鳥居に近づくたびに体が重くなるのが分かる。全身が痺れるように痛い、頭も脳みそのしわ一つ一つが焼き切れそうだ。


まるで泥沼。底なしの沼に両足を突っ込んでしまい抜け出せなくなったような。もう泥が喉元まで来ている。それでも俺は俺は前に進まないと。いまの俺が無くなったとしても次の俺が俺の意志を受け継いでくれるだろう。


バチバチバチバチ!!体の一部が弾け、傷を負った箇所が火傷をしたように焦げている。前に進むたびに傷が重大になっていく。鳥居まではあと数メートル。これ以上進んだら確実に魂が削れる。


「知ったことかああぁぁぁ!!!」余った力全てを使い切り俺は前に進むために思いっきり地面を蹴り飛び出す。体の四肢が飛んでいくのが見えた。腕は地面に、足は空中に飛んでいった。それでも俺は転がり前に進む。


痛みなんてものは忘れた。これ以上に痛いものを俺は知っている。大事なものを失うということを。こんなもの屁でもない。


「こっちに来れそうだな」「でも魂の損傷どうするの?」「僕が治すからいいよ。それよりアクセルの覚悟、しっかり見とかないとね」先程まで談笑していた神達はそれを止め、俺のことをまっすぐ見つめる。


もう俺のことを見てった遅いぜ。俺はもう鳥居を潜っちまうんだからな。


「これで合格だろ?」鳥居を潜ったら消滅すると追っていたが何もなかった。まぁ、手足は無くなったし、顔も半分ないし、臓器がはみ出ている。なんで生きているのかわからない。神界だからこの体は飾りみたいなものか。


「合格だ。ナリア治してやってくれ」サウスは俺に近づき、ナリアを呼んだ。声はしゃがれているし、もう喋りたくない。早く治してくれないかな。


「神力を使うからあとで補填してよ」俺の体が緑色の光に包まれていく。四肢がぐにゃりと音を立てて治っていく。音とか感触が気持ち悪いが治っていくのであれば問題は無いな。


「はいはい。しっかり治ればいいぜ」サウスたちは神力を渡すのを渋っているようだ。限りがあるのか。それとも受け渡しにロスが存在するのか。ま、神に成れば分かる話か。


「これで良し」回復が終わったナリアは元居た場所に座った。体も完全回復したし、心なしか体のキレが良くなった気がする。


「ありがとう」体に付いた埃を払い落とした感謝をする。


「それで神に成る方法だったかな。詳しくはリンに聞いてくれ」サウスはリンが座っている方向を見た。


「分かりました」花を動かして俺の方に近づいてくる。なんて言うか違和感が,,,なんだこれ。あ、分かった。根が足の様にカサカサ動いているからだ。優雅な見た目に気を取られていたがこれは気持ち悪いな。こういうのは花が浮いていて動くとかだろ。


「神に成るには相応の覚悟を持って死ぬ必要があります。貴方であれば二人を蘇らせるという強い意志が評価されたのです。これを隠す必要があるのには理由があって、これを知られてしまうと、試練の割り振りが曖昧になって邪神が生まれるからです。私たち神はそれを選別するんです」なるほど。でもそれ以外にも隠しているだろうな。こんな事なら烏が口を滑らすはずだ。


「そして大事なのが背負っている運命が左右しています。輪廻転生を繰り返し、相応しい運命を持ったものにだけ、挑戦の権利が与えられます」ふーん。俺は何とか権利を手にしたってわけね。俺の背負っている運命は大したものじゃないとは思うんだけどな。


希望がやっと見え始めたって感じだ。後は三人から推薦を貰えれば試練を受けることができるだろうな。


「俺たちが背負っている運命は全員同じ。だからこうやってグループを組んでいるってわけだ」サウスは笑いながら腰に括りつけていた酒を飲み始めた。ウイスキーかな。俺も飲みたいな。


「仲良し集団ってわけだよ。俺達、人界じゃ嫌われていたからな」アリカは酒を分けて貰って一気に飲んだ。


「そうね。私たちは世界から嫌われていましたから」


「これも全て運命のせいだな」ナリアも酒を分けて貰っている。リンは花の蜜をたしなんでる。


「その運命ってのはなんだ?」殺気立つと思っていたが、歓迎されている様で拒まれることは無かった。俺の運命を知っていて似たようなものを見つけたという感じで。


「忌子。俺たちは生まれたときから災厄を運ぶと言われてな。運命が分かったときにはもう世界の端に捨てられていた」サウスは遠い昔を思い出す様に話し始めた。


「僕たちが出会ったのは偶然。でも神に成るのは必然だった」


「私たちは強い意志と忌み嫌われて尚、生きていたから神から評価されたんです」


「そして俺たちは出会って数十年。俺たちは世界に悪意をばら撒いた」アリカは懐から一つのプレートを取り出し、俺に向かって投げた。受け取ってみると陽炎と書いてあった。もしかしてこの四人は神に成る前は___


「お前の想像通り。俺達は陽炎の創設メンバー。体に彫ったナンバーはここに来るときに無くしたからな。こうやってプレートを持って忘れないようにしているんだ」アリカ達は俺のことを見て笑った。やはり俺の運命と似通ったところがあるな。


「国を滅ぼし、世界中に敵を回した。でも僕たちに追ってそんな些細なことはどうでもよかった」ナリアは腰につけていたプレートを見ながら言った。


「私たちの絆が確かめられたような気がして、居心地が良かったんです」リンもまた隠し持っていたプレートを見て言った。


全員が全員持っていて尚且つ番号がしっかりと書かれていた。ただ気にかかるのがリーダーがいないということだ。


「リーダーは,,,」


「リーダーはまだ死んじゃいない!!」俺の疑問をサウスが答えてくれた。だが様子がおかしい。


「あいつは、あいつは,,,,,,!!」思い出したくない記憶を呼び出しているのか、頭を抱え叫び始めた。そして周りが黒い影で覆われていく。空を見上げると空を食い荒らす大蛇が見えた。


「サウス!思い出さなくていい!アクセル、このことは他言無用で頼むよ」ナリアはサウスに駆け寄り、落ち着くように声をかけていた。


「出口は向こうです。またどこかで逢いましょう」リンは植物で俺をこの空間から出るように促した。


「悪いなアクセル。俺たち陽炎の創設メンバーは一蓮托生だったからな」アリカもここからは聞かないでくれといった様子だ。


「分かった。またどこかで逢おう」示された方向に向かって歩く。出口は落ちてきた穴ではなく、鳥居が何本も突き刺さっている道だった。赤い鳥居もあれば、朽ちている鳥居もあった。


「大和国に似ているな」文献でしか見たことが無いが、大和国ではこのような建造物が無数に建てられていてその奥には神が祀られているというのが書いてあった。もっとも昔の話だから文化の波にのまれて姿を消しているかもしれないが。


幾千もの鳥居をくぐっていると様々なものがあって足が止まってしまう。カラフルな塗装が施されたものや、小さすぎる鳥居。逆に大きすぎて見上げてしまう物もあった。


そんな中、何よりも目を引くのが鳥居に彫られていた名前だった。そこには見覚えのある名前もあった。ブレイク。そしてアクセル・オーバー。俺の名前だ。ここは死後の世界。誰もが来るとされている場所。


「なんでこんなところに俺の名前が」鳥居をなぞり、思考を巡らせる。俺が陽炎の仲間になることを暗示しているのか?それとも死んでいるから名前が書かれているのか?


後者はありえないだろう。ブレイクはまだ生きているはずだから。前者も考えにくい。俺が特級盗賊団の傘下に加わる事なんてよほどのことが無い限りは無いだろう。二人を蘇らせることができるのならそうするだろうけど。

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