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ブレイクソード  作者: 遊者
グロリア編
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第十話 王国 3

「着きましたよ。それではまた」レンは俺を王宮前の丘の上で下ろして、戻っていった。地面の感触が心地いい。絶対にあんなものは乗らない。


さてさて、王宮の前に着いたはいいが、どうやって中に入ろうかな。正面から言っても無理だよな。リズレット様の知り合いで,,,は無理だな。


俺は大きな城を囲むように四つの塔がそびえ立っているところを見下ろしながら、リズレットに会う方法を考えていた。


隠密で中に入っても、見つかるだろうからな。なんたってこの国の一番偉い人間がいるんだからな。


「ここもまた強行突破,,,か」いまだに回復の予兆を見せない左腕を見ながら呟く。大剣は思うように振ることはできないからな。どうしたものか。


あ、じいちゃんに貰った魔剣というものがあったな。なんでも振れば山は崩れ、天は割れ、海が干上がるという。冗談交じりに聞いていたが、ここは頼りにしてみよう。


魔法空間から魔剣を取り出す。持ち手は白い包帯で巻かれていて、刀身は燃えるように赤い。恐らく炎を出力する剣なのだろう。


魔剣の解放条件ってなんだっけな,,,,,,,,,,,思い出した、名前を叫んで振るんだ。早速実行してみるか。


「魔剣デュランダル!!」俺は叫んで片手剣を振った。が、何起こらなかった。やっぱり冗談だったんだな。俺は少し肩を落として、魔剣を収納した。


瞬間四つの塔が爆発した、何事なんだ?俺はスキル千里眼を使って確認をする。魔法使いたちが黒焦げになっている。


これ、もしかして魔力とかに反応するやつなのか?見たところ騎士たちは無傷だ。もしそうだとしたら魔法使いに対しても対策が出来る。


俺は丘を下りながら、城を目指す。今は城内が混乱に陥っている。中に行くなら今しかないだろう。俺は青い細い線を出しながら進む。


「とうっ!」高い城壁を飛び越えて、中に進んでいく。思っていたよりも悲惨な光景になっていた。黒焦げの人間たちに燃え広がる黒炎。消火に努める人間と、救助に努める人間とで、二極化していた。


俺のせいで酷いことになってんな。惨状から目を背けて、城の中に入る。


「誰だお前は!?」数人に槍を向けられて、後ずさりをしてしまう。おっと、まだ中に騎士が残っていたのか。王を守らないといけないから、数人は残るか。頭が足りないな。


「名乗っても通してくれないだろ?強引に行かせてもらうぜ」もう少し下がれれば引っかかってくれる。


「その割には腰が引けているようだが?」槍を向けて、俺のことを笑っている。痛い目を見るのはどっちかな。


「うわっ!」階段に躓いて転んでしまった。やっちまった。


「お前の命はここまでだっ!?」俺のことを追い詰めたと思っていた騎士たちは宙吊りにされていた。


「なんてな。こんなにうまくいくとは。先に行かせてもらうぜ」俺は騎士たちを置き去りにして、城の中を進んでいく。


俺が何をしていたかって?丘から細い糸を出しまくって絡めとっただけだ。調整が難しかったけどな。ていうかこのレーザーめっちゃ使い勝手良いな。蒼って呼ぶことにするか。レーザー状以外にも変えれるしな。


ある程度進んだところで、足が止まってしまった。なんでかって?迷子だからだよ!この城広すぎるだろ!あと光景が同じすぎるわ!なんで赤のカーペットが端っこまで続いてんだよ!ノイローゼになるわ!


取り乱してしまったな。まじでどうすっかな。王の間に行くか。でも不敬罪で処刑されたらどうしよ。あ、俺人何人も殺してるからどっちみち処刑だ。なら行ってもいいか。


決まれば急ぐか。俺は城の中心に向かって穴を空けていく。真ん中はどうやって分かったかって?廊下の中央から内側に穴を空けてるからだよ!絶対間違えてる。


分かってる。でも俺にはこれしかできないんだ。頭、悪いからよ。どでかい音を立てながら俺は掘削をしていく。オーラを纏った拳はそこら辺の道具よりもはるかに優れていた。


ある程度掘っていったところで、広い空間に落ちた。ほかの部屋には無かった、豪華な金の装飾に、大勢の騎士。極めつけは大きな椅子に鎮座している王冠を被っている二人だ。


これ王の間や。しかもがっつり騎士がおる。百人近くいる。これ、詰んだんじゃね?ここでガメオベラ?まじかよ。受け入れられないって。


「君がブレイクかな?」厳かな声が響き渡る。圧倒的カリスマに強者の気配を感じる。この国の王、グロリア・ホープ・レオグレイブだ。


「その通りです」俺は頭を垂れることもしないで肯定をした。ここまで来たら、無礼な人間で行こう。


「王族を前に頭を下げることもできないなんて飛んだ愚民ね」王の隣に座っていた人間が言った。この国の王妃だ。名前までは思い出せないが、とんでもない美貌だ。見る者全てを魅了するような,,,まるでサキュバスだ。


「よいよい、この革命の鍵なのだからな」こちらを見ながら、王妃を諫めている。リズレットが話をしてくれていたのか。それなら先に言ってほしかったな。そしたら、無駄に城を荒らさなくて済んだのに。


「どこまで話を聞いているのですか?」


「全部見ているからな。状況は把握しておる」まじか、今までの全部見られていたのか。なんかエッチ!!この国の王様は変態です!!


「何か,,,変なことを考えているのではないか?」


「そ、そんなこと,,,ないですよ?」なんで心読めるんだよ!!


「何故本人が疑問形なのだ,,,まぁいい。大事なのはこんな戯言ではない。今すぐ裏切者のダリア家を始末してくれ。そしてオーバー家の人間も始末してくれ」王は邪魔者を早く消したいようだ。それほど、革命を成功させたいのだろう。


「分かりました」王の言葉は何故か、説得力のようなものがあって、頷かずにはいられなかった。


「ダリア家は今どこに?」オーバー家の場所は分かるが、ダリア家の場所は知らない。リストに載っていなかったからな。革命派として活動してたし。


「大通りで交戦をしている」あー、ロー以外は、市街地で戦っているって聞いたな。


「行ってくる」場所が分かった俺は、城から飛び出した。このころには城内も落ち着いてきていた。まじですまん。


そういえばリズレットを見なかったな。どこに居るんだ?後ろを振り返ろうとしたが,,,,,,,,,,,やめて俺は前へ前へ進んでいく。


城壁を超えて、大通りに出る。奥の方で煙が上がっているのが見える。あそこで戦っているのか。裏切りがどれほど最低な行為か教えてやるよ。


動き始めた左手を見ながら、戦場へ向かう。蒼を纏いながら。


「なんだ,,,これは?」俺が見たのは見たことのない光景だった。人間が人間の形を保っていないのに、動いていたのだ。肉の固まるが動いていた。革命派の人間を殺そうと、遅いながらも魔の手を伸ばしていた。


ローが動かせていたのは、原形を留めていたものだけだったから、衝撃が凄かった。ネクロマンサーはどこまで外道なことが出来るのだろうか。好奇心が刺激されたが、理性がそれを抑え怒りが湧きあがった。


「ダリア家!!どこに隠れているんだ!!」絶叫とうめき声が混じる戦場の中で、叫ぶ。だが、俺の声は人々の中に吸い込まれて消えてしまった。


「そんなに叫んでも意味がないですよ」聞き覚えのある声に振り返る。この惨状を生み出した人間たちがいた。


「お前らか。こんな人道からかけ離れたことをしているのは」蒼を散らしながら七人に問う。


「そう、僕がこんな楽しい劇場を,,,」紫の髪をしたガキが何かを喋ろうとしたのが分かった。


「黙っとけ」俺はガキの頭を蒼で貫き爆発させた。散らばった肉片が動いているのが分かる。もっと細かくしないと駄目か。


再度、蒼を当てて細かくしていく。全てが一ミリの大きさになったところで動かなくなった。ここまで小さくすれば完全に死ぬのか。ほかの奴らもこうやって殺していくか。


それよりも誰もこいつを助けようとしないんだな。人の心というものが完全に無いな。後ろでただ見ているダリア家を睨む。


「俺らの家族を殺すなんて酷いな」緑の髪をした男が笑いながら言った。心からの言葉で無いのがはっきりと感じ取れる。先にこいつも殺しとくか。


「思ってないことを言ってんじゃねぇよ!」蒼を剣に見立てて男を切り刻む。最初に殺した奴よりも、上手く殺しことが出来た。


切り刻まれていく中、男はずっと笑って俺のことを見ていた。何か隠し玉を持っているんじゃないかと警戒をしていたが、何もしてこなかった。なんだったんだ、あの悪意に満ちていた笑顔は。


この時の俺はダリア家がどれほどまでの脅威だったのかを測り切れていなかった。


七人のうち、二人を殺したところでダリア家が動き出した。


「あんまり調子に乗るなよ」赤髪の男が俺の後ろを見ながら言った。後ろからはアンデッドになった人間たちが迫っていた。


「性根が腐ってんな」今は余裕かもしれないが、持久戦になれば圧倒的に不利だ。アンデッドを細切れにしなければならないし、蒼も無限で発動わけじゃない。


どうすっかな。とりあえずダリア家のほうを殺していくか。間合いを詰めて切り伏せようする。しかし、寸前のところで地面の中に逃げられてしまった。


最後に「応援しています」という意味の分からない言葉を残して。


こうなったら、この一万近くのアンデットを相手にしなきゃならないといけないのか。振り返って剣を構える。


アンデッドは生前の人間の身体能力を数倍に引き上げられているから、単身で大勢と戦うのは厳しいんだよな。普通の人間だったら余裕なんだが。


「困っているのか?」聞いたことのある声が上から聞こえた。上を見ると、ワイバーンに乗っていた青年が見えた。


「レン!どうして ここに居るんだ?」そう言うと、レンは俺の目の前に飛び降りてきた。流石極東の人間、身体能力が高いな。


「言っただろ、ギルガ家は革命派だって」彼は笑いながら、太刀に手を伸ばす。こいつも国王に命じられてきたんだろうか。


「そうだったな。共闘してこいつらを始末しようか」俺も大剣にオーラを纏わせる。


「オーラを纏わせられるのか。凄いな」俺が大剣に蒼を纏わせているのを見て、レンが驚いた表情を見せた。


「お前もできるくせによく言うよ」俺は笑いながら、アンデットのほうを見る。


「こいつらはどうすれば死ぬんだ?」


「一ミリくらいまで切り刻むか、炎で燃やすかのどっちかだな」


「了解した。ちょっとだけ抑えてくれ。俺が一掃する」そう言うとレンは、太刀に赤色のオーラを纏わせた。こいつの属性は炎だな。


「オーケー、任せとけ」俺はアンデットに向かって蒼の槍を足に向かって飛ばす。足止めのなるし、攻撃が当てやすくなるだろう。


「おらぁ!」足が止まったアンデットたちに横薙ぎをお見舞いする。思ったより硬いな。体を半分にしたと思ったが、刃が途中で止まってしまっている。


「ブレイク、離脱してくれ」後ろから声が聞こえた。俺はすぐさま後ろに跳躍をする。


「紅一閃」刹那、極限まで赤く染まった刀身から炎が横一文字で目の前のアンデットに向かって驀進していく。その炎はすべてを拒絶するかの如く、触れたもの全てを悉く燃やし尽くしていった。


「剣聖の名に恥じない威力だな」何も残っていない大通りを見てレンを褒める。


「まだまだ未熟さ」謙遜するように太刀を鞘に納めながらレンが笑う。


「どこが未熟なんだよ?」ここまでの威力をもって未熟だなんて、向上心が高いのか、本当に駄目だと思っているのかわからん。


「抜刀術以外がな,,,」頬を掻きながら教えてくれた。


「確かに決闘した時、抜刀以外が甘かったな」


「今度は勝たせてもらうぞ。約束はしっかり守れよ?」トンと俺の胸を叩きながら言ってきた。


「何回やっても負けるわけねぇよ。それよりダリア家を始末しようぜ」


「そうだな。あいつらの本拠地は抑えてある。こっちだ」レンの後ろをついていく。


「お前はどこまで俺のことを知っているんだ?」興味本位で聞いてみる。


「名前と強さ、リズレットと仲がいいことくらいだな。あとは自由のために戦っているってことくらいだ」路地に残っていたアンデットを倒しながら、談笑をする。


「リズレットとは仲良くねぇよ。あとなんか嫌だな。お前は俺のことは知ってて、俺はお前のこと知らないの」


「そうなのか。リズレットはお前のことを話す時楽しそうにしていたぞ。あと俺のことは革命が終わったらゆっくり教えてやるよ」歩きながら、会話を重ねていく。


「こんなにゆっくりでいいのか?」大通りの真ん中を歩いている。もちろん人影は見えない。死んだか、家の中に居るかだ。


「あぁ、アイツらを完全に殺すには手順を踏まないといけないからな」レンは遠くを見つめながら言った。


「その手順っていうのはなんだ?」


「昔ダリア家の親友から聞いた方法さ。一家が禁断の魔法によって肉体が一つになったときに、本体の心臓を潰せばいいって。そいつはこのことを漏らして死んだんだがな」さっきの遠い目は親友を思い出していたんだな。


「悪いことを聞いたな」


「いいさ。どうせ教えなければならないんだからな」レンは寂しそうに言った。


互いに無言になる。聞こえてくるのは国が燃えていく音。互いの拍動と呼吸の音。本能が警鐘を鳴らし始めている。ここに居るのは危険だ、逃げろと。抗えない運命が待っている。と。レンも気が付いているようだ。


「レン!!逃げるぞ!!」俺は後ろに走り出す。しかし、レンはその場から動かないで、呆然と空を眺めていた。


「何してんだ!」俺は咄嗟に腕を掴んでレンのことを引っ張って走る。レンの体は羽が生えているかの様に軽かった。


後ろから影が伸びてくる。命が吹き込まれているかのように形状を変えながら、俺たちに被さろうとしていた。


やばい。やばいやばいやばい!!今までにないくらいに汗をかいている。本能が頭が割れるくらいに警鐘を鳴らしている。呼吸がどんどんと乱れていく。


「もう、駄目かもな」体が、脳が諦めている。生きるということを。だけど、与えられた宿命がそれを許さなかった。


「弱音を吐いてんじゃねぇよ!!俺!!」自分に向かって叫ぶ。今まで何回ビビってチャンスをの尾がしてきたんだ。変わるなら今しかない!!


「レン、ここでお別れだ」城のほうに向かって力のを限界まで込めて投げる。風魔法で覆っているから死にはしないだろう。


「さぁ、戦おうか」後ろを振り返って空から降ってきた。『それ』と対峙する。異形、その言葉を形容するかのような見た目の怪物がいた。


龍の頭に魚のえらのような器官。胴は金と銀の体毛で包まれていた、下には逆鱗が生えているのが見えている。左腕はサソリの尾に、あらゆるものを両断するかのようなハサミが肩から生えていた。右腕には鎌を持っていて、肩からは剣を持った手が生えていた。足は馬のような形をしていた。


「エイヨハ,,,,ワガモノニ」怪物はそう発すると、鎌で攻撃をしてきた。紙一重で避ける。だが、この判断は間違いだった。二撃目の剣の攻撃をいなせなかったのだ。


遥か後方へと吹き飛ばされる。家の壁にぶつかっても勢いは止まらない。家を貫通して、やっと勢いが止まった。無人の家でよかった。ぐらつく思考と視界で状況を把握する。


目の前まで異形が来ている。また鎌を振り下ろす。今度は完璧にいなす。窯は地面に深く刺さっている。二撃目の剣の薙ぎも跳躍して回避する。このまま一撃を,,,,


剣を脳天に突き刺そうとしたときに、龍が口を開き炎を吐いてきた。視界が真っ赤になる。


「ぐあああぁぁ!!」あまりの熱さに地面を転がる。即座に魔法を使って回復をするが、俺の実力じゃ重度の火傷を、中度の火傷にするくらいのことしかできない。


何とか立って、その場から離脱をしようとする。しかしサソリの毒が当たっていたのか、体が思うように動かない。クソが。


「コンナノ,,,アマリニモ,,,」異形が何かを発しようとしている。自我が上手く保てていないのか?なんなんだこの怪物は。


「モロイ」ハサミが俺を挟むように突き刺さる。このままじゃ死ぬ!


「蒼!!」自らのことを吹き飛ばして離脱をする。


これが絶望か。目の前に佇む異形の怪物を目にしながらそう思った。

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