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ふと、キーボードを叩く手が止まった。僕はしばらくディスプレイを眺め、おもむろに背後を振り返った。
僕の集中を途切れさせたものはなんだったのだろう。何も物音はしなかったし、パソコンは正常に作動している。この報告書を書きはじめてまだ十分しか経っていない。
僕は唐突にスマートフォンへ手を延ばした。机の端に置かれていたそれを手に取り、着信が来ていないか確認する。電話も、メッセージも、その他様々な連絡手段も、ついさっき来た知らせは何もなかった。
僕はスマホを元の位置に置き直すと、再びディスプレイと睨みあった。どこまで書いたかすっかり忘れてしまった。
姉から「すぐ帰ってこい」とメッセージが来たのはそのわずか数十秒後だった。僕はその短い文章を三度読み直し、少しの間物思いに耽った。台所の方からした戸棚を閉める音で我に返り、急いで帰り支度を済ますと部屋を飛び出した。




