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「あっ、瀬川君!おはよう」
バイトへ向かうため店への道を歩いていたら、背後から荒木さんの声が聞こえた。振り返るとこちらに駆けてくる彼女の姿があった。
「今からバイト?」
僕の隣に立ち、少しだけ上がった息を整えながら荒木さんはそう尋ねた。僕はそれに「うん」と答える。
「荒木さんはどうしたの。いつもより早いけど」
「授業一つ無くなったからさ、早く来れたの。教授が風邪だって」
僕と荒木さんは並んで店へと向かった。この場所からなら五分程で店につくだろう。
「そういえば瀬川君、今日自転車は?」
「昨日盗まれた」
「盗まれた!?盗難届けは出したの?」
「出してない。どうせ生徒の誰かの仕業だろうから、そのうち返ってくると思う」
僕の答えに荒木さんは納得していないようだった。彼女の高校は僕が通っている高校より偏差値の高いところだっただろうから、この素行の悪さは受け入れがたいのだろう。だがいわゆる不良高であるうちの学校では、自転車に鍵をかけ忘れた僕が悪いのだ。
そのうち荒木さんは「今日はお客さん来るといいね」という話題に変えてきた。僕は「そうだね」と嘘でも本心でもない相槌を打つ。店の看板はもうすぐ目の前だった。




