19 気づいたら寝てた
パジャマパーティーとやらはそれからもしばらく続いた。
おいしいもの食って、どうでも良いこと喋って、明日の事を話す。
なんでもない時間だ。
だけど、誰かを警戒したりしなくていいし、利用したりされたりなんてことはない。
あたしがまだチビで、孤児院で育てられていた時みたいな感じだった。
そんなものだから、気が緩んだんだろう。
気が付いたら眠っていた。
「ふぁ……。まだ夜か」
室内は暗くなっていて、タバサがシェフィを抱きしめながら眠っている。
シェフィは苦しそにしていて、ちょっと迷惑そうだけどな。
城のベッドは広いけど、3人並んで眠るのはやっぱり狭い。
あたしは音を立てないようにベッドから出て、ソファーにでも移動するかと考えた。
とりあえず、喉が渇いた事に気づいて、コップに入ったままになっているジュースを飲む。
甘いもの飲んだら目が覚めちまった。
このまま横になる気分ではなくなったため、外に出ると散歩に出していたチャイが戻って来る。
その足には紙がくくりつけられていた。
手紙にはエルと書かれている。
長いこと待ったがやっと、依頼料をはらってもらえる。
へっぽこ貴族とご令嬢サマはそこそこ元気に暮らしているようで何よりだ。
死にそうな目にあったかいがあるというものだ。
あの頃の自分が今のあたしを見たら、きっと信じられない顔をするだろうな。
そのまま城の廊下でぼうっとしていたら、会いたくない野郎に出くわしてしまった。
クランだ。
今まで起きていたのか、クソ王子は少し眠たげな様子だった。
「手紙かい?」
「まーな」
あたしの手元を見たクランは、何が面白いのか微笑んでいる。
「今まで少し、昔のことを思いだしていた」
あたしもだいたい同じ事をしていたが、それを言ったら調子に乗りそうなので口にしない。
「過去の自分が今の自分を見つめたらきっと驚く」
クランはなぜなのか、少し元気がなさそうだった。
思い返したのはあまり楽しい思い出ではなかったみたいだ。
なんかむしゃくしゃしてきたので、クランの頬を引っ張ってやる。
「そーかよ。でもあんま不幸面してんじゃねーって。こっちまで辛気臭くなる」
「そうだね」
これは心配したとかそういうのじゃない。
ただ気に食わなかっただけだ。
「まったくお前はそういうとこ変に辛気臭いよな」
しょうがないから眠くなるまで、つきやってやるとしよう。
だって、この短い期間で色々と変わりすぎた。
過去の自分に思いをはせてしまうその気持はわからなくはないのだから。




