17 布切れ一枚
馬車で地元に帰る中、あたしは懐を探っていた。
今回使った装備品の状態を確認するためだ。
すると、サンドイッチをもらった時に、返しそびれていた布がある事に気付いた。
かなり上質な布で、施されている刺繍も凝っている。
うっぱらえば、そこそこの値段にはなるだろう。
それを考えても出費が大きいが、ないよりはかなりマシだ。
「今回の依頼料もらっとくぜ。ったく、次顔を合わせたらふんだくってやるからな」
こうして踏んだり蹴ったりの苦労の連続だった、今回の依頼は終了した。
これはあたしがまだ馬鹿王子と出会う前の話だ。
盗賊として活動していた頃の。
城にある竜騎士舞台の控室。
あたしはそこで、昔の事を話していた。
なんでか最近になるまでドラゴンに出会った時の記憶が消えていたが、そんな事はどうでも良い。
あたしは今、ちょっとした危機にいる。
「なるほどなるほど、アメリアちんは今まで苦労してきたんだね。じゃあ、お着替えしよっか」
「嫌に決まってんだろ。なんだよ、このひらひらふりふりした服」
「何ってパジャマパーティーの服だよ」
「パジャマっていう感じの服じゃねぇ!」
アタシは、タバサとシェフィと共にパジャマパーティーとやらに参加していた。
時刻はもう深夜になる頃。
シェフィはそろそろ眠らなくちゃいけない時間なんだが、目がさえてしまっているようだ。
ワクワクした表情で、アタシに拷問……ではなく着替えをさせようとしている。
「なんでこんな服着せようとするんだ。アタシには似合わねーって」
すると、タバサとシェフィが互いの顔を見合わせて「だって」と続ける。
「アメリアちんってすっごく可愛いもん。あれ?気づいてないの?結構美人さんだよ」
「アメリアさんは素敵なお姉さんです。ですからもっと素敵になってもらいたいんです」
はぁ、アタシが美人?
そんなわけねーだろ。
盗賊の仕事をやってきてうんぬん。
顔をさらす事はたまにあったけど、言い寄られた事なんて一度もないんだぞ。
「そりゃまあ、昔のアメリアちんってなんだかとがってたみたいだからね。でも、今のアメリアちんはちょっとつんつんしてるだけって感じで、結構可愛いと思うよ」
「意味わかんねー事言って服きせようとすんな。こら、やめろ」
すったもんだのどたばたを繰り返していたが、シェフィのお願いには抵抗できなかった。
疲れてしまったアタシはしぶしぶその、ふりふりしたパジャマを着る事に。
すっげえ脱ぎたい!
なんか体のあちこちがかゆくなってくるな!
蕁麻疹とかでてそうだ。
はぁ。こういう服って着慣れないんだよな。
アタシにはふさわしくないっていうか。
似合う、似合わない以前の問題で、裏社会で生きていたアタシにはさ。




