16 エルエリーデの剣
襲い掛かる竜。
シェザードは当然燃える炎を構えて戦うが、相手が悪かった。
正気を失った竜は、ブレスを吐いた。
「よけろ!」
あたしはぼうっとしているエルエリーデとお嬢様を引っ張って、ブレスを避ける。
でも、腕を怪我してしまった。
これでは攻撃できない。
あたしはエルエリーデに逃げるように言う。
さっきとは違って退路をふさがれているわけではないので、護衛対象になる人間はこの場にはいない方が良い。
貴族のおぼっちゃまたちも、さすがにドラゴンの鳴き声がする方へは近づいてはくるまい。
騎士団の連中がいるらしいから、うまくすれば保護してもらえるはずだ。
「くそ。本当にやな事ばっかだな。おい、エルエリーデ。そこのご令嬢サマを連れて逃げろ」
「ですが」
「あんたらがいても足手まといなだけなんだよ。気が散るからいけって」
あたしは返事を待たずに、ドラゴンの背後へ。
せめて隙をついて一撃でもくらわせる事ができれば、シェザードの腕で何とか倒せるはずだ。
あたしは機会を窺う。
やがて、隙を見せたドラゴン。
やつの羽の付け根を短剣で刺した。
「うらあ。くらいやがれ!」
せなかに取りついたあたしはすぐにドラゴンに振り払われる。
受け身をとって地面に転がったが、かなり痛い。
起き上がれないでいると、そこにドラゴンが鋭い爪を振り下ろしてきた。
シェザードは何やってんだよ、と思ったが、知らない間に怪我をしていたようで足から血を流している。
あ、これ死ぬかも。
そう思ったとたん、これまでの人生が走馬灯の様に脳裏に流れる。
なんでこんな人生になったんだか。
自嘲気味に内心で呟いていたら、エルエリーデがアタシの前に立った。
「アメリアさん!」
「ばっ」
馬鹿が、と思ったが言葉に出しているほどの時間はなかった。
付け焼刃の剣術で剣を構えたエルエリーデは、肝心なところで天が見方をしたのだろうか。
するどい爪の攻撃をうまく剣先ではじいたようだ。
そこで、シェザードが燃える剣で一撃をくらわせる。
ドラゴンはきっちりと灰になっていった。
もう3匹目がいるとは言わないよな。
なんか、すごく疲れた。
その後、あたしは機会を見てその場から逃走。
シェザードには気づかれたようだが、奴はあたしを見逃す事にしたらしい。
ドラゴン2匹の後始末と、小悪党1人の対処。
どちらを優先するかと聞かれたら当然前者だろう。
その点は不幸中の幸いであったが、依頼料が入らないのはかなりのマイナスだ。
今回の仕事はかなり準備に金がかかったというのに、本当についていない。
孤児院のチビ達や古びた施設を何とかするために、まとまった金が入ると期待していただけ、落胆が大きかった。




