12 狩りとご令嬢
目的地到着。
秘境の温泉とやらまでは、馬車で数分の距離だ。
そこで、他の貴族のお坊ちゃんたちと合流。
やつらは、自分の武器を自慢しながらにやついている。
「親父にやってもらった弓だ。すげぇだろ?最新型なんだぜ」
「こっちは家宝の剣。本当はいけないんだけどよ、楽しみすぎてくすねてきちまった」
聞いているだけで耳がくさりそうだぜ。
そんな中でもシェザードだけは静かにしていたが、何を考えているんだか。
むかむかした気持ちを抱えたまま、数分。
茂みがガサガサとなった。
誰かいるのかと思ったら、小さな鹿の子供だ。
鹿の子供はあたし達を見てから、びくっとして遠くへ走り去っていく。
馬鹿なお坊ちゃんの一人が、弓を射たけど、逃げていく。
「ちっ、外しちまった」
「へたくそ、きちんと狙わないからだぞ」
やいのやいの騒いでいる連中は、鹿が人間になっても同じことを言うんだろう。
へどが出そうだ。
なんて、考えている内に馬車が近づいてくる音が聞こえてきた。
シェザードが、他のお坊ちゃまたちに「静かに」と合図を送る。
そして、馬車がはっきりと視認できる距離まで近づいてきた。
「いまだ」
シェザードの言葉と共に、お坊ちゃまたちが飛び出す。
馬を攻撃して、御者を狙い撃ち、馬車が横転。
暴れ狂った馬が逃げていくが、お坊ちゃまたちはそれよりご令嬢サマにご執心らしい。
中から引っ張り出した女性を前に、舌なめずりしていた。
「……」
話に聞いていた通り、ご令嬢は話せないらしい。
家族からも冷遇されているのか、身に纏っている服は思ったより質素だ。
青ざめた顔で、自分を取り囲んでいる者達を見つめる彼女は、今何を思っているんだろうか。
あたしは、心の中でうずく両親を抑えて、エルエリーデの様子を見た。
拳を震わせて、必死に何かを我慢しているようだ。
余計なことをしでかさないように、見張っていなければ、と思ったら。
まさかの状況に陥った。
「ドラゴンだ?」
「は?」
「嘘だろ?」
頭上を見上げると、そこに巨大な竜が飛んでいたのだ。
竜はなぜかこちらに降りてくる。
お坊ちゃまたちは青ざめて、その場から逃げ出してしまう。
シェアードも冷静さを装いながら、木の陰へ。
あたしもエルエリーデを掴んで、逃げようかと思ったのだが、「おい!」肝心のクライアントがいない。
慌てて周囲を見回したら、ご令嬢の手を引いて走っていく奴の姿が。
まじかよ!
あいつ、やりやがった!
「くそ、死んだら文句言ってやる。結局勝手な事すんのかよ」
あのへたれ貴族は、あたしが思っていたより我儘で向こう見ずで、お人好しでどうしようもない奴だったようだ。




