11 エルエリーデの人生
「待っていても誰もご飯を作ってくれませんし。それに家族と一緒の食卓にはいられませんでしたから」
やめろ。そんな暗い話をするな。
同情しそうになるだろ。
あたしは必要以上に依頼人に入れこまないって決めてんだよ。
「兄弟たちからは虐められ、親からは期待されず透明人間扱い、使用人たちからもいない人間としてて扱われていました」
俯くエルエリーデは情けない顔をしながら、話を続ける。
「こんな僕でも何かできる事はないか、何もできない人間でいたくない。そう思って、少しだけ得意だった料理を磨いてきたんです」
こいつが変な所で頑固になったり、自分の意思を出すのはそういう人生を送って来たからなのかもな。
孤児院にも訳ありのチビが何人いるけど、大人しそうに見えて以外に頑固なところを出す奴がいたんだよな。
確か家族に捨てられたって話だったけど、今なにやってんだろうな。
「僕の料理の腕、貴族でなくなった時に、役に立つといいんですけどね」
「知るかよ、あたしがそんな事」
あたしはエルエリーデから視線をそらしながら、声をとがらせる。
本当に他人の人生なんて、気にしている余裕はないのだ。
こっちは自分と孤児院のチビ、そしてマザーの事で手一杯なのだから。
「そ、そうですよね。すいません」
しばらく無言の空気が馬車の中に流れる。
ため息一つつくのも面倒くさい気持ちになりそうだ。
「お前、狩りはどうすんだ?参加するってわけじゃないんだろ?」
「え?はい、できるだけ存在感を消して、大人しくしているつもりです」
「くれぐれも、変な気持ち起こして、ご令嬢サマを助けようなんて思わねーこった」
「……はい、わかってます」
一応釘をさしてみたが、果たしてわかっているのかどうか。
先ほどの話を聞いた後だと、不安がぬぐえない。
二時間後。
馬車は山のふもとの村に到着。
あたしたちは村の人間に金を渡して馬車を置いて、山を登っていく。
他の連中は今頃どうしているのだか。
知った事じゃないが、合流地点まではまだ時間がある。
あたしは特訓のおさらいをする事にした。
「エルエリーデ、あたしが教えた事きちんと覚えてるよな」
「あ、はい。へたに攻撃せず、防御と回避に専念。ですよね」
「そうだ。素人の付け焼刃で敵を倒そうなんざ一億年早ぇんだよ。だからお前は極力何もすんな。いいな」
「はい……」
別にこれはエルエリーデを隠したに見ているとか、馬鹿にしているわけじゃない。
素人なら当然の事だ。
付け焼刃の知識や技術が役に立つ状況なんて本当にまれだ。
大抵の場合は、それらを振り回して痛い目を見る事が多いのだから、できるだけそうならないように大人しくするのが一番なのだ。




