09 貴族達の狩り
シェザードは口を開く。
「今日集まってもらったのは、楽しい催しを伝えるためだ。ちょっとした狩りをみんなで楽しもうと思ってね」
エルエリーデ以外の連中はその内容を知っている、または気づいているという様子だ。
特にシェザードの提案に疑問を持ったり、質問をしたりはしない。
「ちょっとしたミスで俺達の秘密の小遣い稼ぎが、ばれてしまってな。だからその目撃者に消えてもらおうと思っている。対象はハルル・フローレンスというご令嬢だ。
口のきけない淑女に乱暴な事をするのは気が進まないが、念には念を入れて」
肩をすくめたシェザードは、あたし達の方を見つめる。
この説明は、事態を把握していないあたし達に向けられたものだ。
「加入仕立ての君には悪いが、少し荷が重いかもしれない。しかしこなせれば、君は晴れて俺達の仲間だ。できるかな? エルエリーデ」
エルエリーデは震えながら「も、もちろん」と小さく呟く。
もう少し演技しろと思ったが、小心者のへっぽこにしては返事できただけでも上出来と考えるべきか。
シェザードはそれ以降、エリエリーデに話しかけてくる事なく、可哀想な淑女様を狩るための計画を話しはじめた。
一時間後、屋敷から出たあたしは深いため息をついた。
肩が凝った。
足腰も、かなり。
緊張のあまり筋肉痛になるんじゃないかと思った。
胃の中はむかついていて、胸やけしそうになっている。
あんな連中を行動しなけりゃならないのか。
気が重い。
憂鬱な気持ちになっていると、エルエリーデが話しかけてきた。
「ハルル・フローレンスさんを助ける事はできないでしょうか」
「はぁ? 何言ってんだ。無理に決まってんだろ」
あたしの実力じゃ、エリエリーデ一人満足に守り切れるかどうかわからない。
引き受けたからにはやりきる覚悟を持ってはいるが、専門外であるためどうしても失敗の可能性が大きくなる。
そんな状況で守るべき対象を増やすわけにはいかなかった。
じっとしてろ、お坊ちゃまは。
「お前はあたしを殺す気か? 護衛対象が2人なんて御免だ。今度こそ依頼解消すんぞ」
「そうですよね。すいません。あの、なら少しだけ稽古をつけてもらえませんか?」
「はぁ?」
「貴族ともなると、いつもアメリアさんに守ってもらえるとは限らないですから」
身分の確かでないあたしをつれていける場所は限られている。
その時に何かある可能性を考えての事だろう。
「わーったよ。でも、暇な時だけだからな」
あたしは頭を掻きながらその頼みを承諾した。
誰かにものを教えるなんて、家事以外ではした事がない。
だから、うまくできるかどうか分からなかったが、今の状況は正直きつい。
できる事はなるべくしておくべきだろう。
シェザードの説明通りなら、狩りは3日後だ。
山奥の温泉に療養しに行くところを襲撃するらしい。
それまでにエルエリーデが、護身術の一つや二つくらいは習得してくれると、たぶん助かる。




