07 正義感のあるへたれ
「や、やめてください! 怖がってるじゃないですか!」
信じられない事にエルエリーデが声を荒げていた。
あのへたれが、という意味と。
お前自分の状況分かってんのか、という二重の意味で。
「あ? なんだてめぇ?」
男に睨まれたエルエリーデはうっと声を上げる、しかし前言撤回はしなかったらしい。
「相手は子供です。で、ですからやめましょう、ね?」
言葉はじゃっかんへたれているが。
あたしは、思わず頭を掻きむしる。
どうやってこの状況の収集をつければいい。
周囲の人間がみな、こちらを見ている。
このまま目立ち続けるとやばいぞ。かなり。
しかも男は、エルエリーデを殴ろうとした。
覚悟を決めたあたしは、すうっと息を吸い込んで、思いっきり叫んだ。
「きゃああああ! 衛兵さん! 噴水広場に来てください! 悪い人に絡まれてます!」
すると、さっきまで威勢が良かった男は「はぁ?!」と驚いた顔になる。
あたしは、素早くエルエリーデの腕を掴んで、その場から逃げた。
あんなに注目されてるなら、さすがに女の子に手出しはしないだろう。
衛兵も運が良かったら来るはずだし、大丈夫なはずだ。
適当な裏路地に逃げ込んだあたしは、エルエリーデに怒鳴る。
「お前、自分の立場分かってんのか!?」
「す、すいません! でも!」
「でもじゃない。あんな事されたら、あたしまで危険に晒されるんだぞ!」
「それは分かっていますけど」
エルエリーデは泣きそうな顔で、言い訳を口にした。
「何もしてない人が不当な扱いを受けるのは嫌なんです。あの子は何もしてないわけじゃなかったけど、まだ子供ですし」
「気持ちは分かるけど、それで自分が死んだらどうすんだよ」
「それは……」
エルエリーデの考えているそれはただの絵空事だ。
弱者は全部は守れない。
何かを切り捨てないと生きてはいけないのだ。
色々言いたい事はあるが、時間がない。
「過ぎ勝手なことをやったら見捨てるからな。忘れんなよ」
「は、はい」
あたしはそれだけを言って、エルエリーデを連れて歩く。
目指すのはバッククロウドの拠点の一つだ。
今回は、前回とは違ってお貴族様のお屋敷で集まるらしい。
大切な話をするとかなんとか。
ったく、あんまり貴族には近づきたくねーのにな。
まあ、あたしは護衛って話だから、着飾る必要性とか言動を気にする必要性がないだけましだけど。
今からでも、この以来なかったことにできないかな。
無理か。
もう結構かかわっちまってるし、話しかけられた時点で詰んでる。




