表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トワイライト・ドラゴン 頭のおかしい王子様に心臓を人質にとられながら働かされてます  作者: リィズ・ブランディシュカ
第1章 女盗賊の出会い
6/73

06 ザーフィス逃走



 視線の先で、王子が戦っているという異常事態。


 よく考えなくても、かなり一大事だ。


(他の兵士とか護衛はいないのかよ!)


 あたりに気を配ってみるが、それらしい人の気配がまったく感じられなかった。


 驚くべき事にこの場にいるのは、盗賊のあたし、よくわからない不審者、王子の三人だけ。


 そんな状況の中で王子は、不審者と互角の戦いをしている。


「これはお前なんかに渡すわけにはいかないんだ。大勢の命がかかっている。僕の命に代えても、ここから持ち出させるわけにはいかない!」


 クランは懸命に戦っていた。


 本気、なのだろう。


(おいおい、どういう状況だよ)


 クランの体の使い方をみて、緊張した様子を感じる。


 一世一代の大舞台かってくらいに、がちがちだった。


 相手に向かってふるった剣の先が、かすかにふるえている。


(無理もねーか、王子だし、でも箱入りってわけじゃねーみたいだ……)


 兵士としても通用する腕だ。

 剣術はよくできているようだ。


 流れるような軌跡を描いて、相手の急所へ技を叩きこんでいく。


 その様は、一般兵よりもかなり上。


 めっちゃくちゃ強かった。

 鍛えてるのだろうか?王子なのに。


 うまくすれば、漁夫の利を狙える。そう思って、しばらく観察していたのだが、王子サマがあまりに必死こいて大剣振り回してるものだから、つい手を出してしまった。


「くっ」


 相手の一撃を受けて、後ろへ下がるクラン。

 見れば、腕に切り裂かれた後。


 あたしは、その前に立った。


「ったく、危なっかしったらねーぜ」

「アメリア!?」


 腕に怪我を負ったクランを見かねて、助太刀に入る。


 王子は驚いたみたいだ。


 あたしは振り返る事なく勘違いするなと、クランに告げる。


 割って入ったのは、目の前のコソ泥に宝物を持っていかれたら大変だからだ。


「その宝はアタシの獲物だ! 横取りさせやしねーよ! それもって、さっさとこの都からとんずらするんだからな!」


 持ち主に顔を見られ、正体を看破されてしまった。

 こうなったら、孤児院にはいられない。


 あっちに迷惑が掛からないように、偽装工作してさっさと目当てのブツと共に、おさらばしなければならない。


 けれど、そのコソ泥はアタシをスルー。クランを見つめて嘲笑した。


「女の背中に隠れて、何もできないとはさすが王族だ。少しは骨があるかと思ったが、豪華なイスにふんぞり返ってるばかりのノロマだったようだな!」


 あらかさまな挑発行為。

 けれどクランはのってしまったようだ。


「なめるな!」

「おい、クラン!」


 ムキになったクランは双剣をふりまわし、得意の剣術で盗賊の相手をするんだが、残念な事に敵の方が圧倒的に強かった。


「僕は守られなければならない程、弱くない!」

「はっ」


 鼻で笑うザーフィスは近くにあった宝を掴んで、クランに放り投げる。

 クランはそれを腕で防ぐが、その宝は鎖のついた魔道具だったらしい。


 とっさに身を引こうとしたクランの、剣を持った方の腕に絡みついてしまう。


 これでは攻撃できない。


「くっ」


 クランは急いでそれを引きはがそうとするが、致命的なロスだ。


 その隙を見逃す相手ではなかった。


「俺の名前は、ザーフィスだ。またな、お坊ちゃん」


 そいつ。コソ泥盗賊ザーフィスは、隙を見て宝物庫の窓(鉄格子つき)を力ずくで砕いて、すたこらさっさと逃げていってしまった。


(人間技じゃねーな。どんな力してんだよ)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ