03 危険な話
ポンコツ貴族の青年が、使われていない家屋の中に入り込んで、危ない人たちがたむろしていたとこに、こんにちはしてしまった。
そこまで把握したあたしは、最後の肉を口の中に入れて天を仰ぐ。
汚い酒場の屋根しか見えなかったけど、思考は少し切り替えられた。
「確認しなくちゃいけない事があんだけどよ。相手はどんくらいやばい奴なんだ?つーか、お前も知っている奴か? 情報は?」
エルエリーデはさらに暗い表情になりながら、口を開く。
「僕と同じ貴族なんです。組織はそこそこ有名ですね。バッドクロウドという名前の」
周囲を気にしながら、小声でひそひそするが。
あたしは周りを気にする余裕が完全になくなった。
「まじかよ」
その名前は聞いたことがある。
バッドクロウドは、危ない薬を売りさばく危険な連中だ。
人の精神を錯乱させる。バズという薬を高値で売りつけて、金儲けしている。
改めて思うが、これは盗賊の端くれが足突っ込んでいい案件じゃないだろ。
いっそ全部打ち明けて、騎士団とか相応の連中に保護してもらった方が良いんじゃないか?
「あたしには手に負えねー。専門外だ他あたれ」
「む、無理ですよ。賄賂を渡して見逃してもらっているような連中なので、騎士団たちに訴えても無駄なんです」
「腐ってんなぁ」
ますます手に負えないじゃねーか。
「じゃあ、あたしの驕りで会計払っとくわ」
「見捨てないでください」
財布取り出して、席を立とうとしたら、けどみっともなく泣きわめいてすがりつかれた。
そのままエルエリーデは、おいおい泣き続ける。
このままだと目立つ。
放っておいて自滅するのは勝手だが、その結果こいつからあたしに飛び火したらどうすんだ。
「ったくしゃーねーな。続きはなせ」
こんな面倒ごとに首を突っ込みたくなかったが、中途半端なところで離脱するのは危険だ。
結局、席についてなだめるしかなかった。
今週は依頼がんがん受けて、孤児院のチビ達にうまいもん食わせようと思ってたんだけどな。
あと、孤児院の壁に穴があいてるから、それも直さなくちゃなんねーし。
先々週ちょっとした事で、怪我しちまったから、ここ数日稼げてなかったんだよ。
チャイも、ちょっと風邪ひいてるみたいで、獣医に預けっぱなしだし。
くそっ、ついてねー。
エルエリーデはちょっと落ち着いたのか、上質なハンカチで汗と涙をぬぐった後話を続ける。
「本当に申し訳ないと思っています。でもあなたしか頼れる人がいないんです。関係のない人を巻き込むのは気が引けますが」
けど、意外な言葉を耳にしてしまう。
「あたしは平民の盗賊だぞ。そんな事言うやつ初めて見た」
「それでも、貴族であろうと平民であろうと、他の職業であろうと嫌な事には巻き込まれたくないですよね。本当にすいません」
こいつ、泣き虫で意気地なしだけど、結構いいやつなんだな。




