02 エルエリーデの話
肉はしっかり火が通っている方がうまいに決まっている。
金持ち連中は、生焼けの新鮮な肉を食ってうまいとか言うらしいけど、あたしには分からん世界だな。
あたしは、はこばれてきた肉を頬張る。
焦げ目がついたところがうまい。
たれにつけこんだ肉は、しっかり噛み応えがあるし、味も染みてる。
弾力のある肉の塊に歯を立てながら、相手の顔を観察する。
エルエリーデと名乗った男は、この世の終わりみたいな顔をしていた。
血の気が失せていて、今にもどこかの橋から川に飛び降りそうに見える。
来ている服は安物の服のように見えるが、立ち振る舞いが浮いて見える。
あたしらの世界とは別の、富めるもの特有な、優雅な所作を感じた。
観察し終わった頃に、エルエリーデが重い口を開いた。
「実は、つい先日。とある犯罪組織の一員と間違えられて、その組織のアジトにつれていかれてしまったんです」
エルエリーデは今にも泣きだしそうな様子で、話した後、自分の目の前に置かれたコップを見つめる。
他の地域では水が出ないところもあるが、あたしのいるところこは、そこそこ土地が恵まれている。
水に代金を払うような事などないから、有り難い。
考えがそれた。
「ちょっと、まて。あんた隠してるけど、貴族だろ。なのになんでそんな。犯罪組織?ーーと関わってんだよ」
いきなりつっこみどころのある話をするな。
なんでそんな事になったのか、まずは普通そこから話すもんだろうが。
この貴族のお坊ちゃまは天然なのか、それともよっぽど追いつめられてるのか。
すると、エルエリーデはすいませんと消え入りそうな声で誤った。
「実は、あまり褒められた事ではないのですが、貴族の礼儀作法の勉強があったんですけど、教師が厳しくてーーそれで嫌になって、逃げだしていたら。そういう人たちが集まる場所に紛れ込んでしまったんですよ」
今度は個人的な情報もしゃべりすぎた。
明らかに要らない情報を端折って、あたしは今聞いた話を頭の中で整理していく。
「息抜きがてらそんなところに迷い込めるもんかよ」
お坊ちゃまが迷い込むには、難易度の高すぎる場所だと思うんだけど。
どうしてそうなった。
「ですよね。何も考えずに走っていたら、そうなっていたとしか」
「はぁ」
呆れてため息しか出なくなった。
運が悪すぎるだろ。
不良するにしても、うろつくなら道を選べよ。
頭を掻いていると、近くで飲み食いしていた野郎が下品な声で「がはは」と笑い散らす声が耳に入った。
依頼人を騙したとか、報酬を余分にもらったとか、気分の良い話じゃない。
ますますこうしてみると、貴族のお坊ちゃまがいるべき場所じゃないな。
この酒場も適当にうろついて入り込んだんだろうか。
「あんたひょっとして、運悪いのか?」
「そうですね。そうかもしれません」
小さい頃から何かと、失敗したり、面倒ごとを押し付けられたりと言う。
それはお前が、人からの押しに弱いからだろ。




