01 おかしな依頼
放り投げ捨てたい悪縁があるのは、仕方がない。
非合法な仕事をしていると、たまにある事だ。
変な輩に粘着されたり、因縁をつけられた事は片手の指では数えきれない。
しかし、ここまで悪い縁とは出会った事がなかった。
幸いなのはただ働きしなかった事だけだろうか。
しかし、本当に予想外の事が多かったし、命の危険もあった。
専門外の事をやらされて大変だった。
変な王子に心臓盗まれたり、変な舞台に入れられたりするあたしはひょっとして、運が悪いのだろうか。
それは頭のおかしい王子と出会う、少し前の出来事だった。
たまにはなじみのない酒場で食い物を食おうと思った。
そんな思いつきが、面倒ごとを引き寄せる事になるとは、この時のあたしは思ってもいなかった。
バケツをひっくり返したような土砂降りの雨の中。
しっけた酒場に立ちよったあたしは、肉のステーキを注文してまっている所だった。
そんな時に、誰かが声を掛けてきたのだ。
いかにも酒場に不慣れといったその男は、あたしとおなじくらいの歳だろうか。
きょろきょろ周囲を見回したあと、なぜかあたしが座っている席に近寄ってきた。
女であることは隠しているし、フードもかぶっているから顔もわからない。
ならなぜ声をかけてきたのかと後に聞いたら、自分と体格が似ていたから。
と言われた。
そんな理由で声をかけられるこっちは、たまったものではない。
まあ、未来の事は置いておいて。
その時のあたしは機嫌が悪かった。
だから人睨みしながら「なんだよ」とドスの効いた声を発した。
しかし相手は、何かしら事情があるのか、びくびくしつつも話を切り出してきたのだ。
「酒場って、お仕事を探している人が集まっている場所なんですよね。ならあの、依頼してもいいですか?」
「はぁ?」
間違ってはいないが、そうではない人もいる。
目につく人間全員がそうではないと分かっているのかいないのか。
何かんがえているんだかわからないそいつは、声を潜めて、要件を伝えてきた。
それは、
「あたしに護衛してほしいだぁ?」
盗賊のあたしには不慣れな、護衛の仕事だった。
あたしは、対面の席に座っているお貴族様、エルエリーデという名前の男の顔を見る。
髪はつやつや。
肌も真っ白。
服も情実。
どこからどう見てもこんな酒場には似合わないその男を。
対面の席に座っているのは、貴族のお坊ちゃま。
普通なら縁を結ぶはずのない男だ。
一体全体どうしてそんな依頼をあたしに寄こすのか分からない。
「とにかく、内容はなせ、受けるかどうかは聞いてからだ」
うっかり足を踏み込んではいけない、地雷の匂いがした。




