03 火の石回収任務
っていっても、きちんと準備はしないとだめだもんな。
あたし達は各自武器を調達したり、傷んだ装備を慎重したり、探索地や探索メンバーの件で話し合った。
その際に、役にたったのが例の煩い商人クックだ。
各地を渡り歩いて商売してきたクックは、色々なところを見てきたらしく……。
「なるほどなるほど、そのあたりなら知ってますよーう。くわしい場所とか環境をお教えしましょうかっ。もちろん有料でっ!」
と、勝手に王宮にやってきては、部屋の一つを占拠して、商魂たくましく商売しはじめた。
基本煩いしか感想もたないけど、売れるもんを売れるときに売るっていうスタンス事態は嫌いじゃない。
けど、こいつこの間、食いにげしてあたし達に料金をツケやがったんだよな。
あたしはクックの頭をがっとつかんだ。
「おい、なくした財布は見つかったのかよ。食い逃げやろー。あたし達が金払ってやったこと忘れてんじゃねーだろーな?」
「ひ、ひええええ。ももも、もちろんっ。忘れてなんていませんにょっ。はははは」
笑ってごまかそうとしているけど、目が泳いでる。
こいつまさか本気で忘れてたとかじゃねーよな。
「そっ、それでしたら定価の2割、いえ、3割引きでどうでしょーか」
クックはがくがくと震えながら上づかいになる。
しかし、あたしは無言。
今回あつまったメンバーはヒューズとタバサ。
こういうのに、甘いシェフィはいないので、助けを求めても無駄だ。
タバサですら「あはは、ごめんねー。でも、犯罪は良くないと思うな―」とのことなので、四面楚歌だ。
ヒューズも「僕たちが対応しなかったら、前科が付くところだったんですよ。そこのところ分かっているんですか? 商人なら、信用問題にかかわるのでは?」こう言って、ごらんのとおり。
やがてクックはがっくりと肩をおとし、めそめそしながら「どれでもお好きなの、一つだけ無料にさせていただきますう」とつぶやいた。
なんて一幕があったが、それ以外は順調に準備が進んでいった。
数日かけて、武器と装備などを整えて、それぞれが目的地へと出発だ。
そういうわけで、トワイライト村の住人が隠したとかいう封印石の一つ。
火の石を回収する事になった。
紅蓮の荒野という場所にあるらしい。
この石を隠した村の住人は、その後悪魔教の信者に見つかって、命を絶ったそうだ。
悪魔教の連中に石の事は教えなかったようで、後日クランの部下が遺体に隠されたメッセージを読み解き、紅蓮の荒野の隠し場所が明らかになった。
(自分から死ぬ奴の気持ちなんて分かんねー)
指をさして笑うつもりはないが、あたしだったら情報を売ってしまうだろう。
ただ思うのは、シェフィが悲しむだろうなという事だけだった。
今回の任務はタバサと二人で行動だ。
二人でドラゴンに乗って、紅蓮の荒野に向かう。
一応子供ドラゴン(あたし命名:ムース)も飛ぶ練習しているけど、もうちょっとがんばりが必要だからな。
「空飛ぶのってきもちーねー」
「まあ、気分悪くはねーな」
初めて飛んだ時からそれはずっと思ってる事だ。
竜騎士部隊に配属されて良かったことの一つだよな。
「竜騎士部隊になった事の大きな特権の一つだよー」
「そうだな。景色が良いのと風を感じるのは、悪い事じゃねーし」
タバサの言う通り空の上から眺める景色は気分がいい。
普段見ない町の全容が見れたり、地平線まで見たりするのはわくわくする。
チビ達にも見せてやりたいけれど、あいつらじゃ飛ばされちまいそうだな。
いつか、乗せてやる事できないだろうか。
この任務が終わったら、ちょっとクランに話してみるかな。
考え事してたせいか、久しぶりに孤児院のチビ達に会いたくなった。
あいつら元気でやってるかな。
しばらく会えてないんだよな。
マザーを困らせてないといいけど。
「アメリアちんは孤児院出身なんだよね」
「ん? そうだけど」
「うーん。あたしね、子供の頃アメリアちんを貧民街で見た事あるような気がするんだ」
「えっ?」
タバサは幼い頃、住んでいたところを離れて、城の周りにやってきた事があるらしい。
その時にあたしによく似た少女を、見つけたという。
「アメリアちんに似た女の子が、クラン王子とヒューズくんに似た男の子と一緒に遊んでるの」
どんな確率だ。
王族兄弟二人とあたしのそっくりに遭遇って。
「そっくりさんが三人てすげー偶然だな」
「偶然なのかなー? アメリアちん記憶にない?」
けれど、タバサは偶然否定派だったらしい。
けど、そう疑われてもな。
タバサには悪いが、記憶に引っかかるようなものはない。
「ねーよ。つーか子供の頃の記憶なんておぼえてねーし。昔大火事があったらしくて、そのショックで記憶がぬけたとか言われてるからさ」
「そっか、悲しい事きいちゃってごめんね」
「いや、別に覚えてねーから、悲しくなんて……。タバサは悪くないだろ」
過去の話をしたせいで、ちょっと空気が気まずくなった。
過去の事、知りたいかって言われたら、まあ知りたいけど。
苦労して知りたいほどかと言われるとそうでもない。
もしかしたら、ほんとうにクランたちと知り合ってたなんて事があるかもしれないけど。
(それはそれだし。幼い頃の事なんて、きっと大した事じゃないだろうしな)




