ヒューズの過去
――あなたにとっての過去とは、何ですか?
僕にとっての過去は苦い味を呼び起こさせるものだ。
僕は昔、兄さんに連れられてとある孤児院に遊びに行っていた事があった。
その時間は嫌いではなかった。
貧乏くさいところだなとは思ったけど、同い年の子供達と遊ぶ経験にくらべれば、嫌な所だなんて事はなかった。
その孤児院で、僕達はリリスという少女と知り合って、仲良くなる事になった。
兄さんはリリスの事がお気に入りだったみたいだ。
いつも、楽しそうに彼女と話をしていた。
兄さんは第一王子としての責務に疲れていたから。
何気ない日常こそが大事だったんだと思う。
おてんばばかりだったから、あの孤児院での日常が何気ないかどうかは分からないけれど。
けれど、ある日。
僕がそんな日を終わらせてしまった。
迷っていた人を孤児院に案内したら、その人が孤児院を燃やしてしまったからだ。
「お前のせいだ」
と兄に怒鳴られた。
恨み言はそれ以来聞いた事がないけれど。
おそらく僕は、兄に恨まれているのだろう。
だから、兄の頼みを断れずに、竜騎士部隊なんてものをやっている。
僕にとっての過去は、無知から生まれた罪をまざまざと見せつけてくる。
そういう苦い物だ。




