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トワイライト・ドラゴン 頭のおかしい王子様に心臓を人質にとられながら働かされてます  作者: リィズ・ブランディシュカ
第3章 同僚との仕事

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04 竜退治



 突発的な戦闘は、第二王子の活躍によって安全に終了。

 あたしはほとんどする事がなかった。

 これ、立場が普通逆じゃねーのか?


 すると離れて見ていたタバサが声をかけてきた。


 自分の愛竜の元に行って、何かを持ってきていたようだ。


「ヒューズ君、おわったー? じゃ、お仕事しなくちゃね。竜退治」


 彼女が手にしていたのは、竜に乗る時に一緒に運んできていた大きな道具袋だ。

 その袋からがさごそ、何かを取り出す。

 巣に近づいたタバサは、大きなホースのようなものをとりだした。


(一体何をするつもりなんだ?)


 眺めていると、準備が完了したようだ。


「じゃぱぱっとやっちゃうよ! ぶしゃー」


 威勢のいい掛け声とともに、カチッという音がして、ホースから何かの液体が辺りにまき散らされた。


 粉のようなものだ。


 風が吹いてたらむせそうなやつ。


「っておい、戦闘じゃねぇのかよ」

「え? 何で? 竜なんかと戦ったらへたしたら人間死んじゃうよ」


 いや、それは分かるけどさ。


(部隊の名前が名前だけに、竜と戦わされるって思うじゃんか)


 しかも、仕事が竜退治だし。


(これでも、さっきまで割と悲壮な覚悟してきたんだけど)


 するとヒューズもなんか、丸い肥料みたいなものをばらまき始めた。いつの間に。


「さ、竜嫌いの粉を撒き終えたら、とっとと撤収しますよ。一度は竜が戻ってくるんですから、はちあわせたりしたら危険です」


 それで良いのかよ。


(なんだかなぁ。拍子抜けしちまった。楽するのが嫌ってわけじゃないけどさ)


 順調に仕事は終了。

 後は帰るだけとなった。


 待たせている竜達の元へ向かう。

 しかし、ヒューズは浮かない様子だった。


「それより、帰った後の事を考えた方が良いです」

「帰った後?」

「兄は人の心臓を人質にとるような人間なので」


 嫌な事を思い出してしまった。






 また小一時間かけて、戻ってきた時。

 竜舎の前に人影がいた。

 竜に乗るのも慣れてきたな、なんて思っていた矢先の地雷だ。


 そこに、にっこにこの王子サマが立っていた。


 嫌な予感はしていた。

 けれど、あえて無視していたのだが……。


 現実になってしまったようだ。


「さて、今日は君たちでどうやって遊ぼうかな」


 王子サマがすっと取り出したのは、鉄の輪っかだ。


 呆然としているうちにガチャリ。


 首元に光るそれは首輪だった。


「んなっ」


 絶句。


(どういう状況だこれ!? ニコニコ笑顔の王子サマに、首輪をつけられてるんだけど!! 夢か! 眠ってんのかまだ!!)


 首輪というのは何らかの比喩じゃない。


 本物だ。


 本物の首輪つけられて、王子様にリードを握られている。


 リアルな重みと質感を首に感じる。


「さて、僕の部屋においで」


 呆然としているあたしはひっぱられるまま、だ。


 クランの手元につながる首輪の鎖がじゃらじゃら言ってて大変にぎやかしい。


 なんだこれ。なんだこれ。なんだこれ。


 背後にはにこにこのタバサと、真っ青なヒューズがついてくる。


(何だこれ、何が起こってるんだよ。説明してくれよ! いきなりこんな目にあったら怖ぇだろーが!! 仕事してる時より、こっちの方がよっぽど命の危険を感じる!!)


 そして、私室に連行されたあたし達は、ニコニコ状態の王子サマとお遊びすることになった。


「とりあえず、君にはおかえりなさいご主人様って言ってもらおうかな(笑顔)」


 即座に行動にうつした。

 命令を聞く方ではなく逃亡する方に。


 あたしは、扉に向かって猛ダッシュ。


「ぐえ!」


 しかし、首輪の鎖が短すぎて逃げられない。


「逃げたね。そんな悪い子には罰だ」


 じゃりっとなった鎖の音が、ジゴクこんにちはの音楽を奏でている。


 にこにこの王子降臨。ただし王子ポイのは見た目だけ。


 あたしは冷や汗を掻きながら、助けを求めて、タバサとヒューズに目を向けた。


 すると、わりとノリノリで猫耳メイドをしているタバサと目が合った。


 何か誤解したタバサにウインクされて、励まされた。


(要らない! そんなの要らないから!)


 必死に首をふるけど、伝わらない。


 次に、子供服を着せられて室内持久走をさせられているヒューズと視線が合った。

 死んだ目をしていたので、ハイライトがなくなっていた。


 何も語りかけてこない。

 というかこっちが見ている事に気づいちゃいない。


(いつの間にそんな悲惨な目に!)


 あの真面目そうな第二王子がそんな意味不明な行為を大人しく強いられているなんて。


(この部屋だけ常識死んでんのかよ!?)


 状況は、絶望的だった。


 逃げようともがいて、部屋の隅へ。

 そこにクランがゆったりとやってくる。

 

 部屋の隅で、何かに当たったと思ったら。ミイラ造形の杖がこんにちは。

 この部屋の雰囲気に合わないそれは、妙な自己主張をしていて、あたしの未来を暗示しているかのようだった。


(シェフィが優しいとか言ってたけど、絶対嘘だ! もしくはシェフィにだけ猫の皮をかぶってたんだ!)


 アタシががくがく震えていると、クランが近づいてくる。

 右ににげようとしたら、クランの腕がとおせんぼ。

 左ににげようとしたら、またクランの腕がとおせんぼ。


 そのまま両手で肩をつかまれて、優しく抱きしめられた。

 けれど、ときめきはまったくない。


 死神に抱擁されているような気分だった。


「逃がしはしないよ」

「ひっ」


 滅多に出ない悲鳴がのどからこんにちは。


 あたしは今、絶望した。


(これ、なんのホラーだよぉぉぉ!)


 夢であってほしかった。


 しかしこれは、まごう事なき現実の光景である。


「さて、逃亡しようとした罰は、何にしようかな!」

「まっ、まてくら……」

「お姫様の恰好でもしてもらおうかな」

「聞いちゃいねぇ!」


 孤児院によくやってくる男性は、王子サマだった。


 しかも、腹黒だし、正確悪いし、人の心臓人質にとってくる正気じゃない人間だった。


 明日、どうなってるんだろう。この自分。



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