第6話
自慢ではないがおれは朝が苦手だ。
記憶というのは寝てる間に脳が情報整理をし、定着させておこる。おれは基本意識した物全てを記憶してしまうので、睡眠時間が長くなるのだ。
ちなみに睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠があり、前者は身体を休める睡眠。
後者は脳を休める睡眠だ。ここで気づくと思うが、記憶はレム睡眠時におこる。
そしておれは多分だが、レム睡眠の割合が多いのではないかと勝手に思っている。
だってほぼ毎日夢みるし。
今日の夢は学校で授業中に全身ピンクコーディネートのおじちゃんおばちゃんが
キャハーキャハー言いながら隣の席でおれの写真を撮っていていいかげんうざくなり、
注意しようとしたところで起きた。まじ頭パーだったなあいつら。
「ういーす」
「おー、麗。やっときたな。」
「おはよ、高城くん。」
「はよー。二人とも。つーか智也どけよ。なんでおれの席にいんだよ。」
「そりゃおまえ、麗が座るところを暖めてやってたんだよ。」
「ふふ。豊臣秀吉だね。」
「気持ち悪いわ!そう言われるとケツに意識がいっちゃうだろ。」
「麗くん・・私のぬくもりを受け止めて・・うっふん。」
・・・オエー。
おれが嗚咽を吐いて、武が困ったように笑って、智也がなにやら奇怪なポーズでウィンクをしきりにやっているところにチャイムが鳴る。
朝からおもしろいやつらだ。
授業が進み、残すところあと1教科でお昼休憩。
4限目は世界史だ。世界史の先生は教育実習が終わったばかりの山中先生。
すごくサバサバしていて男っぽい彼氏募集中な女教師だ。
少し赤っぽい茶色の髪で胸のところまである髪をポニーテールにしている。
邪魔なんだそうだ。
しかし年齢も近く、親しみやすいので相性は山ちゃんで生徒から人気がある。
「よーし、おまえら席につけー。楽しい楽しい世界史の時間だぞー。その前に私と付き合いたいやつ挙手!」
シュバ
クラスのほとんどのやつが手を挙げる。女子ももれなくだ。
ちなみにおれは挙げない。理由はたばこくさいからだ。
「そーかそーか。みんな私の彼氏・彼女にしてやる!ありがとなー。じゃあ手を挙げなかった高城くん。教科書の1ページからの最後まで立って朗読して。」
「え、山ちゃんひどくない!?」
「ひどいのはおまえだ。毎回手を挙げないのはおまえくらいだ。泣くぞ?」
山ちゃんが泣きまねをし、クラスのみんなからブーイングが巻き起こる。
どこの世界に生徒に自分と交際したいやつ?なんて聞く教師がいるんだこの女・・。
というかこのクラス山ちゃんのこと好きすぎない!?
きっと山ちゃんは私生活ずぼらだし、汚部屋だろうし、たばこスパスパなんだぞ?
それでもいいの?いいんだろーね。うちのクラスのやつらは。
というかおれ以外も挙げてないやついるじゃん。武とか!智也なんか前の授業から寝っぱなしだし!
「とまー、冗談はこれくらいにして。今日は先週やったところを復習の意味で小テストをするぞー。別に成績に響かないから軽い気持ちで受けろー。ちなみに高城は成績に影響させてやるから気合いれろー。」
「おれだけ!?横暴だ!」
「はい、プリント後ろに回せー。時間は20分なー。・・じゃあ始め。」
おれだけに塩対応な山ちゃんに不満を持ちつつ、本気でやってやろうと思うおれだった。
「はい、終了―。隣のやつと交換して採点しろー。あ、これ答えのプリントね。回してくれー。」
「高城くん、よろしくお願いします。」
となりの高木さんがプリントを渡してくる。
高木さんはボブっぽい髪形でとてもおとなしい、いい子だった。身長も150cmくらいか。なんというか守りたくなるような印象の女の子である。妹にほしい。
「え、高城くんすごいね。」
採点が終わったのか、高木さんがつぶやく。
「採点が終わったら答案用紙だけ前に回せー。答えのプリントで復習するからなー。」
「高木さん、どうしたの?」
「高城くん、全問正解。文章も一言一句あってたよ。勉強してたの?」
「あー、歴史系は得意なんだよねー。」
「それにしてもすごいと思うけど。今度勉強の仕方教えてくれる?」
「機会があったら、もちろんいいよ。」
「約束ね。」
そう言ってニコっと笑う高木さんをみて、こういう子が彼女になってくれたら穏やかに過ごせるんだろうなぁと思った。
更新不定期ですが、ちょこちょこやっていきます。