第3話
愛徳結衣とは学校1の美少女と名高い同い年の女の子だ。ちなみに同じクラスだったりする。茶髪のロングで女性にしてはすこし身長が高め、体型はすらっとしているのでどこかのモデルと言われてもなんら不思議ではない。
性格も明るく、自分でガンガン話かけて交友を広げていくタイプだからクラス内でも当然上位カーストだ。
え?おれはって?おれは基本男子としか話さないので、そういうグループには入れない。
ただ内心ではそういう性格に少し憧れてたりする。いや、少しじゃないなけっこう憧れてる。文句あっかちくしょー。
これはまったく自覚がないのだが、女子からは話かけづらいとよく言われているらしい。
目下女子との仲良くなり方を雑誌で勉強中だ。
今日も朝から愛徳の席には仲良しグループが集まっている。
「結衣、本当のところ白石先輩とはどうなの?付き合っているの?」
「あ、それ璃々(りり)も気になってたー!どうなのどうなの?」
黒髪のショートの切れ目で気が強そうな悪魔・・もとい学級委員長の佐中紗季が話かけている。
ちなみに璃々と自分のことを名前呼びしているのは長谷川璃々子。
150cmくらいだろうか。低身長にポニーテールが印象的なかわいらしい女子である。
「だからー、それすごい聞かれるけど、昇とは幼馴染なの!恋愛的な付き合いはありません!」
「またまたー!幼馴染から始まった恋でしょ?素敵じゃん-!」
「私もそういうの憧れるわね。」
「紗季も璃々もちがうって言ってるのにー!」
もー!と三人でキャッキャしている。
ちなみにおれは愛徳に惚れている。
経緯はまぁ機会があった時に話そうかと思うが、めったに女子から話かけられないおれにも分け隔てなく話かけてくれるところや誰と話す時も態度を変えない人となりに惹かれた。
なのでこうやって聞こえてきている話はもれなく記憶されてしまっているわけで、はたから見たらおれってストーカーみたいだなと自分で自分を卑下する。
そうして1時限目の予鈴がなったところでおれは机にふせるのであった。
・・・しろ
・・・かしろ
「高城!教科書の35ページ10行目だ!早く読め!」
運が悪いことに1時間目は現国の原田の授業だったらしい。
この教師はとても性格が悪く、生徒をいびることに生きがいを感じていそうな人だった。
まだボーっとする頭で現国の35ページの内容を思い出す。
たしか・・・
「その笑顔は私が見た中で太陽よりもまぶしく輝いてみえた」
・
・・
・・・
あれ、反応がない。
「高城、おまえ・・教科書はどうした?」
「え」
しまった。ケアレスミス。教科書を出していなかった。
「教科書はどうしたか聞いている!なぜ教科書もないのに読める?」
ハゲあがった頭を赤く染めながら原田が怒っている。
こうなったら・・
「先生、僕はずっと教科書を開いてるじゃないですか。」
ポン ポン ポン
「そうか~、ついに筋肉にしか栄養がいかなくなって脳がいかれちまったか~?どこに教科書があるって言うんだ。」
「いや、だから。ほら、ここ!あー、先生は心が清くないから見えないんですねー。それに先生こそ頭皮が栄養失調になっていますよ。」
いかんイラっとしてつい余計なことを言ってしまった。
仕方ないよな、筋肉をバカにするのがいけない。ヴィバきんにくん。
周りからクスクス聞こえてくる。
智也なんか教科書に顔をうずめて肩ふるわせてやがる。助けろください。
原田の頭がタコのように赤くなり、湯気がでてくる。
人って本当に怒ると湯気がでるもんなんだなー。とくだらないことを考える。
ここで天気予報です。本日千葉県は日中は晴れでしょう。しかし10時頃、麗澤高校1年B組のみ急な落雷が発生するでしょう。避雷針はちょっぴり女性付き合いが苦手な男子高校生、高城麗くんです。周辺の人は席を遠ざけ、避難しましょう。
脳内に人気お天気アナウンサーの予報が流れ、落雷に備え、耳に手を添えようと上げたところで。
「高城くんは先生の授業が楽しみで予習してたって言ってたもんね。ちょうど高城くんが好きって言ってたところでよかったね。」
「え、お、おう。そうなんだよー。マジ楽しみで昨日はあんまり眠れなかったー。」
「もう!だからって授業中寝ちゃったら本末転倒じゃない。ほら先生に謝って!」
「あ、はい。すんませんでした。」
「おう、そうか。・・・次から気をつけろよ。」
出鼻をくじかれた原田はそう言って授業を再開した。
席に着席し、ちらっと左前の席を見ると愛徳が笑いながら舌を少し出してこちらを見ていた。
・・・え、なに。かわいすぎるんだけど。なにあれ天使?
顔の温度が急激に上がるのを感じながら、しかしどんな顔をしていいかわからなったので、とりあえず助けてもらったから、合掌してお祈りを捧げておいた。
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