冒険者になる
小舟は、誰にも目撃されずに砂浜へたどり着いた。
背嚢に詰め込めるだけ詰め込み、フレイフレイは上陸した。
食糧と水、それに、換金したり交渉材料にする為に、宝も少々。
漁村を見つけ、街への道を聞いた。
小舟のことは言わなかった。
すぐに見つかるだおうが、わざわざこちらから知らせることもない。
そうして、ある程度の大きさの街に着くと、フレイフレイは冒険者になった。
金もないから、日銭を稼がなくてはならない。
名前は、そのまま名乗るのはやめておき、レイと名乗ることにした。
しばらく地道に依頼をこなし、小金も貯まってきたある夜のこと、フレイフレイは宿で首元のロケットを外し、眺めていた。
海賊島の噂は、この街までまで聞こえてきた。
海賊どもは激しく抵抗し、女首領を始め、ほぼ全ての海賊を討ち果たした、とのことだった。
それは確かに、事実の一部ではあった。
ただ、投稿をした海賊を討伐隊が海に放り投げ、他の選択肢をなくした海賊が、やむなく抵抗した、というくだりは省略されていた。
フレイフレイに、そんなことは知る由もなかったが、母が亡くなったらしいことはよく分かった。
詳しい顛末を知りたいところだが、どこに海賊の生き残りが潜んでいるか分からない。
母に似た赤髪をいじりながら、フレイフレイは、しばらく大きな街にいるのは避けた方が良いと判断した。
壊滅した海賊団の首領に娘がいたという事実が、いつ知れるとも限らない。
これほどの大事件、少々身を隠しても、手がかりがなくなることもないだろう。
そう、焦る気持ちをおさえながら、フレイフレイは考えた。
ロケットを開き、母の肖像を見つめる。
亡き母を想い、肖像を撫でていると、凹凸を感じた。
肖像を取り外すと、折りたたまれた、一枚の紙切れが出てくる。
そこには、一つの村と、三人の名前が記されてあった。