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海賊島の娘  作者: たつたろう
海賊島の終焉
6/14

因縁の対決

 フレイフレイが脱出しようと奮戦していた頃。



 フレイは、船に乗り、討伐船団に乗り込んでいた。


 今回の戦いは、今までの襲撃とは違って、時間稼ぎをしなければならない。

 乱戦になっていた。


 乱戦の中でも、フレイを止められる者は討伐隊にはおらず。

『海賊殺し』マルティスを止められる者もまた、海賊の中にはフレイしかいなかった。


 自然と、二人は打ち合っていた。


「海賊より海賊らしいな、マルティス」

「おかげさまでな」


 軽口をたたき合いながら、二人は打ち合う。

 命を懸けた戦いの中、二人の顔には笑みが広がる。


 二人が思い浮かべているのは、あの頃。


 パーティーを組み、野営地で。

 ギルドの鍛錬場で。


 剣を取り、同じものを見て。

 同じ方向を目指していた、あの頃のこと。


 もう二度と、返ってはこない、あの頃。

 それが今、ここに。

 この瞬間だけは、確かに。



 だが、それも唐突に、終わりを告げた。


 フレイはマルティスに集中し、マルティスはフレイに集中していた。

 その為、フレイが最初に感じたのは、背中の熱さ。

 次に感じたのは、頬に当たった、夜の甲板の冷たさだった。


「ダノン……」


 フレイが目を向けると、共に船に乗ってやってきた、副頭目、ダノンであった。


「頭にゃ、付き合いきれねえ。どの道、逃げ切れるわけも、ねえんだからな」


 ダノンは、フレイを騙し討ちにしたことについては言及せず、暗い顔で淡々と続けた。


「この通り、もう抵抗する気はねえ。頭を差し出す。降伏させてくれ」


 斧を放り投げ、ダノンは告げた。

 マルティスは、剣を構えたまま、黙っている。


 周囲の剣戟の音も止んでいた。


 Bランクとはいえ、マルティスは冒険者。

 討伐隊の責任者は、彼ではなかった。

 護衛に守られながら戦っていた、討伐隊の責任者は、静寂を破って告げる。


「海賊どもを海に放り投げろ。すぐさま追撃にかかる」

「なっ!」


 悪手であった。

 海賊はまだ、武装解除していない。


 海に放り投げる。そういわれては、命はないも同然。

 死力を尽くして戦うしかない。


 元々、一人たりとも生かしておくつもりなど、なかったということだ。


「くっそおおおお、やるしかねえってことかよ!」


 ダノンは、斧を拾おうと駆け寄った。

 しかし……マルティスの方が早かった。



 ザンッ



「ぐっ……ふぅ。『海賊殺し』め……」


 周りでも、戦いが再開する。


 マルティスは、静かに待っていた。

 フレイは、時間をかけて、立ち上がる。


 誰も、二人の邪魔をする者はいなかった。


「よぉ。待たせたな、『海賊殺し』さんよ」

「こい。海賊フレイ……」

「あたしの……目は……まだ、燃えているぜぇ!」


 剣を引きずりながら、マルティスに向けて進んでいく、フレイ。

 ふらつく身体で剣を持ち上げ、マルティスの顔を目掛けて突き込んだ。


 冒険者時代からの、フレイの得意技だった。


「フレイ。見事だった。お前の炎は、俺の中でいつまでも燃え続ける」


 マルティスの左頬に、大きな斬り傷を残し、フレイは倒れた。



 最後まで、二人の娘、フレイフレイについては何も語らないまま。

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