決別した日
フレイが連れ去られてから、2年の月日が流れた。
フレイは、子どもを産んでいた。
フレイフレイと名付けられた子どもが乳離れし、フレイは海賊の一員として、海賊船に乗っていた。
フレイが逃げ出すとは、誰も思っていなかった。
人質として、海賊島には、フレイフレイが残っていたからである。
フレイは、奪った。
人も、殺した。
フレイは、強かった。
さらに数年の時が流れ、何度目の襲撃か、数えきれないほどになった時。
その船には、マルティスが乗り込んでいた。
マルティスは、その後も冒険者を続けながら、特に船団護衛の依頼を選んで受け続け、フレイ奪還を目指していた。
そして、ついに今、巡り会えたということだった。
海賊の頭は、マルティスとの一騎打ちを、再び受けた。
今度は、勝てば船ごともらう。
負ければ、フレイを含め、手下はそれぞれの判断に任せる、ということになった。
結果は、マルティスの勝利に終わった。
激しい剣の応酬の果て、マルティスは片目を失い、頭はその命を失った。
手を差し伸べ、帰ろうと誘うマルティスに対し、フレイはその手を取ることはなかった。
娘がいたし、人も殺した。
もう、冒険者フレイに戻ることなど、できるわけがなかった。
フレイは、手を取る代わりに、剣を突きつけ、宣言をする。
「あたしは、海賊フレイ。これからも殺し、奪い続ける」
その日の襲撃は、これで幕引きだった。
海賊たちは頭を失い、新たな頭、フレイを得た。
一方、マルティスは。
片目を失い、冒険者フレイを永遠に失い。
頭を討ち取り、海賊を撃退した功績をもって、Bランクへの昇格と、『海賊殺し』の異名を得た。